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空手超バカ一代  石井和義著 を読む [格闘技]

K-1の創始者、正道会館の館長である石井和義氏の本です。タイトルの「空手超バカ一代」は、おそらく極真会館の大山倍達館長の一代記「空手バカ一代」(梶原一騎原作)からとったものでしょう。私は、この「空手バカ一代」やその他のいわゆる「梶原一騎ワールド」で育った人間なのでその目から見た感想を書きます。

空手超バカ一代 (Bunshun Paperbacks)
私が小学生の高学年の頃、少年マガジンで「空手バカ一代」の連載がはじまりました。当時は梶原一騎の最盛期で、「巨人の星」、「あしたのジョー」、「空手バカ一代」を読みたくて、毎週マガジンの発売日が楽しみにしていました。(「巨人の星」が「空手バカ一代」と連載時期が重なっていたかどうかは記憶が定かでないですが...)
その影響で、私も大学時代に極真空手の支部道場に通った経験もあり、「空手バカ一代」の準主役となった芦原英幸氏の大ファンでもありました。その頃は、ちょうどウィリーと猪木の世紀の一戦があり、その後芦原英幸氏、添野義二氏といった有名な師範達が次々に極真会館を去った激動の時期でした。

そのような経緯もあり、極真会館に関してはそこそこ詳しいと思っていましたが、芦原氏の弟子であった石井和義氏に関してはまったく知りませんでした。しかし、氏の率いた正道会館の佐竹氏、角田氏などが他流派のトーナメントに参加して優勝を飾って常勝軍団と呼ばれたり、「USA大山空手VS正道空手5対5マッチ」の企画、リングスへの参戦、K-1の立ち上げとあっという間にメジャーになっていったのは驚きを持って見ていました。

石井氏は芦原氏から22歳で大阪道場を任されます。資金援助も土台も何もないゼロの状態から大阪球場内の文化会館に道場を持ち、1日に500人もの人が稽古にくる恐らく(人数的には)日本一の大道場にまで育てあげました。この道場経営手腕には驚くべきものがあります。だからこそ、K-1をあれだけメジャーにできたのだと思います。
特に驚いたのは石井氏の指導方法で、自分で“ホメ殺し”と書いていますが、初心者に対して「わぁすごい!」、「強い突きだね!」などとホメまくって楽しいと感じさせるような指導を行っていたそうです。今は知りませんが、当時の空手道場では先輩の言うことは絶対であり、後輩に対して石井氏のやったような指導方法などあり得ない状況でした。

その盛況な道場の月々の収益(500万~800万円)を銀行に預けずに現金のまま芦原氏に渡していたそうです。それにも関らず、その当時石井氏が芦原氏からもらっていた月料は11万円!だったそうです。
私だったら、道場の収益を少しゴマカシて何とかうまくやろうと考えるのでしょうが、石井氏は収益には手を付けずに律儀に芦原氏に届けていたそうです。ここに石井氏の芦原氏への忠誠心を見ることができます。
しかし、これまでの貯金を使いつくした石井氏は27歳の時に芦原氏に昇給を懇願しました。その結果12万円!(笑)に昇給されたそうですが、結局それが芦原氏の石井氏に対する不信感を買ったため、退会することになったそうです。

この石井氏が送付した多額の資金によって芦原氏は極真会館本部道場より立派な四国の本部道場を建てることができたわけです。私は、当時真樹日佐夫氏が発行していたカラテマガジンの記事で芦原氏の四国道場が新築されたことを知りましたが、「芦原空手はそんなに儲かっているのか?」と少し不思議に思っていました。しかし、この石井氏の本でその疑問が氷解しました。

精神性が重視される武道の世界ですが、現実世界で暮らしていくには相応のお金が必要です。芦原氏が大山館長の下で職員をしていた頃の月給が7万だったそうです。そしてその芦原氏の職員の石井氏が11万円、石井氏の職員となったK-1の佐竹氏の給料が5万円(最終的には13万円になる)だったそうです。芦原氏にしても石井氏にしてもそれぞれ自分の給料に相当の不満を持っており、それが原因で師匠と険悪な状態になっているにも関らず自分がまた同じことをしているのは何故なのでしょうか?
特にこれだけ常識もあり頭の切れる石井氏が、それが原因で芦原氏と決別したにも関らず自分の職員である佐竹氏に同じことをしていたことは理解できません。

その石井氏も結局、脱税という罪で服役することになります。その石井氏は、大山館長と芦原氏に関して、
二人とも強さとセコさと商魂にかけては間違いなく空手史に残る
と表現しています。石井氏をしてそう言わしめた、お二方のすごさは想像するしかありません。
特に大山館長のほとんどの著書を読んで、「極真空手はソウル(魂)空手だ!」という一文に感銘を受けていた私にとってはかなりのショックでした。

ワトルズが説いたように、肉体、精神、魂の3つのバランスが取れていないで大金を手にするとそうなってしまうのかもしれませんね。
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