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眼の力 夢の美術館―美を見抜く 戸田鍾之助著 を読む [美術]

この本は、月刊誌の『和樂』に2年間の連載した内容を単行本化したものです。筆者は、日本有数の目利きとして知られる大阪の道具商「谷松屋一玄庵」の戸田鍾之助父子で茶道具の名品を手にしながら、その素晴らしさ、目利きの心得について語り合ったものです。

眼の力 夢の美術館―美を見抜く








本書には、著者の鍾之助氏が選んだ「夢の美術館」として26点の名品が掲載されており、鍾之助氏がそれに関する解説をしています。これを見るだけでもこの本を買う価値は十分にあると思います。
・大井戸    喜佐衛門      ・御所丸   古田高麗
・古井戸    老僧         ・青井戸   柴田
・古井戸    六地蔵       ・染付香合  辻堂
・利休茶杓  天正二年春     ・遠州茶杓  くせ舞
・志野     卯花墻        ・志野     羽衣
・光悦赤茶碗 乙御前       ・光悦黒茶碗 雨雲
・粉引     三好         ・黄瀬戸香合 宝珠
・瀬戸黒    大原女       ・伯庵     土岐
・黄瀬戸    難波         ・織部茶碗  菊文
・黄伊羅保             ・薩摩     乃の宮
・伊賀花入  からたち       ・備前花入  太郎庵
・徳利     備前徳利      ・徳利     吹原粉引
・備前     緋襷水指      ・備前     矢筈耳付水指   

私は茶の湯の世界は縁遠く、これらの茶道具はほとんど見たことがないのですが、鍾之助氏の解説とともに写真を見ていると利休、遠州そして、これらの茶道具を使った当時の大名達の世界に触れたような気になります。
やはり名品は、見ているだけでその世界に引きずりこまれるような感覚になりますね。

戸田鍾之助氏の戸田商店は、明治時代の大数寄者で、最大の美術品蒐集家で あった藤田傳三郎(香雪)に出入りして蒐集に尽力したそうです。その膨大な蒐集品は、現在藤田美術館に収められています。

鍾之助氏と子息の博氏が古井戸「老僧 御茶椀」を見ながら見どころを語る場面も出てきます。この「老僧」は、古田織部が秀吉から拝領したと言われている名椀で水戸徳川家の入札で藤田家に収まったそうです。入札価格は大正時代の9万円だったそうですから、今の値段でいうと10億円くらいの価格になります。茶道具の世界でお金の話をするのは無粋かと思いますが、やはり我々庶民の関心はそこですから...。(笑)

茶の湯関連で言えば、昨年末、三井記念美術館で、茶人のまなざし「森川如春庵の世界」に行ってきました。森川如春庵という人は、名古屋の数寄者で、何と16歳にして光悦の「時雨」、さらに3年後の19歳の時にも同じ光悦作の「乙御前」を手に入れた希代の大茶人、目利きと言われた人です。この本にも森川如春庵の名前が何度か出てきます。
081004.jpg
実は戸田鍾之助氏の名前も、この展覧会の図録を読んで初めて知りました。そこでは鍾之助氏が森川如春庵から茶道具に関していろいろと学んだようなことが書かれていました。
私は茶碗が好きなので、光悦、志野、瀬戸黒などを良く見に行っていましたが、この本で大井戸や高麗茶碗、織部、粉引など、まだまだ知らない世界があるのだということを教えてもらいました。

茶道具に関心のある方は必見の本だと思います。

こちらがこの本の元になった本です。(ちょっと高い)
眼の力―美を見抜く









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