傷はぜったいに消毒するな 夏井睦著 を読む [健康]
これもショッキングな題名の本です。私もトンデモ本か?と思って読み始めました。
著者の夏井睦先生は、1957年秋田県生まれ、東北大学医学部卒業。日本形成外科学会認定医。石岡第一病院、傷の治療センター長とのことです。
先生は、最初は外科医として手術をしたりしていたそうです。外科の世界では、化膿を防ぐために、手術前、手術後など事あるごとに消毒をしていたそうです。ところが、「大便が付着するのに痔の治療では消毒をしない」、「大腸がんの手術で腹部の傷は消毒するが、排泄物が入っている大腸の吻合部は消毒しない」にも関わらず患者は化膿しないことに疑問を持ったそうで、それが「湿潤治療」のきっかけになったそうです。湿潤治療は、自分たちの体に備わっている傷の修復機能がうまく働くようにする療法で、
●傷が治るとは?
・毛穴が残っている場合
⇒毛穴の皮膚細胞が周りに広がる
・毛穴が残っていない場合
⇒肉芽という赤い細胞が傷口を覆い肉芽の表面に傷の周りの無傷の皮膚
細胞が移動してくる
そして、これが一番インパクトが大きいのですが、
●傷を消毒しない
・消毒液はばい菌を殺すが、人間の細胞膜たんぱく質も破壊する
・消毒液をつけると痛いのは、患部の細胞を破壊しているから
●傷を乾かさない
・カサブタはミイラ。カサブタができると治るは嘘
⇒カサブタは中に黴菌を閉じ込めて上から蓋をするようなもの
・皮膚の細胞を乾燥状態にしておくとすぐに死滅する
・傷のジュクジュクは最強の治療薬。(滲出液は細胞成長因子を含む)
つまり湿潤治療というのは、消毒液を使わずに(水などで洗う)最強の治療薬である滲出液をこぼさないように、水を通さない、空気を通さないもので覆ってしまうというものです。この覆うものは、家庭にある食品用のラップでOKだそうです。
たったこれだけのことで、「痛くなく」、「早く治る」というのですから、すごいです。ちょっとしたキズであれば、自分でもできそうですね。
夏井先生のHPに詳しく書かれていますので、興味のある方はぜひご覧になって下さい。http://www.wound-treatment.jp/
このように画期的な治療法である「湿潤治療」ですが、夏井先生は大学病院などの大病院ほどこのような新しい治療法への転換は難しいと書いています。これまで何十年も消毒液を使用して傷を乾かすようの治療をやってきた大病院が、自分たちのやってきた過去の療法を否定することは非常に難しいということです。これは言われてみるとその通りだと思います。私たちは、大学病院など大きな病院に行けば最新、最良の治療法を受けられると考えてしまいますが、実際にはこのような事情があるようですね。(大きな組織というのは往々にしてそのようなことがありますね)
この「湿潤療法」に限らず、自分たちが実際に病気や怪我で治療が必要になった場合には、いろいろな情報から「どの病院で」、「どのような治療をするか」を自分で判断することが必要ですね。
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