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真樹先生の大山館長への思いを書いた「大山倍達との日々」 真樹日佐夫著 を読む [真樹日佐夫]

20年前に書かれた真樹先生の名著です。

大山倍達との日々―GODHANDの光と影
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この本は、「現代カラテマガジン」に連載されていた真樹先生の「黒帯交友録」の大山倍達館長に関して書かれたものをまとめたものです。私はこの「黒帯交友録」を毎回楽しみにしていました。でもこの「黒帯交友録」に書かれていてこの本には掲載されなかった内容があります。その内容を書くつもりはありませんが、その内容を読んで、その昔マス・オーヤマ カラテスクールの広告に書いてあった、「ケンカ空手の後継者である真樹日佐夫師範」の意味がようやく分かったことは憶えています。

その当時は真樹日佐夫と言えば、マガジンに連載されていた「ワル」の原作者としてしか知らなかったため、「何故、真樹先生がスクールの師範なんだ?」とも疑問に思っていました。

さてその内容ですが、当時としてはかなり衝撃的な内容です。もともと兄である昭和の劇画王梶原一騎先生、大山館長と3人で義兄弟の関係を結んだほどですから、そのインサイダーな情報はかなりの衝撃です。特に第一章と第二章は思わず引き込まれてしまいます。

第一章 ホテル・グランドパレスの四人
この四人とは、大山館長、梶原一騎先生、真樹先生、大山茂師範です。
昭和54年に開催された第二回オープントーナメント全世界空手道選手権大会でのウィリーの反則劇の真相が書かれています。
「このままじゃ日本は勝てん。アメリカ勢に優勝を攫われる・・・」大山館長の苦悩の声が聞こえてきそうですが、三瓶-ウィリーの反則試合で私たち極真会館や大山館長を信奉していた人たちの気持ちはかなり醒めてしまったことは確かです。

第二章 料亭<千代新>にて
笹川良一氏が会長を務める全日本空手道連盟が極真会館を吸収合併すべく、何度も大山館長に話を持って来たそうです。
全空連「技術部長として貴君を遇する用意がある」
大山館長「大変光栄なお話ではありますが、辞退させていただきます。講道館と武徳会の二つがありました頃、日本柔道が一番レベルアップしたのと同じように、われわれ空手の世界に於いても、いくつかの流派が存続し競いあった方がプラスであろうと考えておりますもので・・・」
 
大山館長、カッコいいです。今でこそ、極真空手を始めとしたフルコンタクト空手はメジャーとなっていますが、「空手バカ一代」連載当時はまったく逆の状態でした。あのドンである笹川氏に堂々と自分の意見を言えるとは...。あの頃の大山館長には梶原先生、真樹先生ともに惚れ込んでいたのでしょうね。

そんな蜜月時代を過ごした真樹先生と大山館長が何故、離れてしまったのかも詳しく書かれています。赤字続きの月刊誌「現代カラテ」を大山館長に請われて引き取った真樹先生ですが、それが袂を分かつ原因の一つになったのは皮肉なことです。
真樹先生は、雑誌の存続を優先し私財を投じて刊行していましたが、その内容が真樹先生の宣伝色が強いと批判が出たことがゴタゴタの原因のようです。(当時購読していた私にとっては、とても面白い雑誌でしたが...。)
大山館長と真樹先生、梶原先生の3人での会合の様子です。

大山「あの手紙で真樹さんが考え直してくれれば、わざわざ私が口を出さなくてもすむと考えたからだ。親しい間柄なればこそ、こういう話は婉曲にいきたいと ――」
真樹「考え直せって、なにを?」
大山「独断で雑誌づくりをすることを、だ」
私(真樹)が編集そのものに携わっていたわけではなく編集人に一任していたのだが、予算と時間的制約かの関係で厭でも独走せざるを得ない状況にあることを、そこで私は情理を尽くして説明した。
大山「そんなに大変ならば、このへんで私に返還してはどうかね。」
真樹「そりゃ返さないではないけれどこんなかたちでの返還は、正直言って気がすすみませんね」
大山「というと?」
真樹「雑誌を出し続けることが大前提だと、そう肝に銘じて頑張ってきたんです。金の面でも一千万近くはつぎ込んだか・・・。義兄弟ということで引き受けたのだし、感謝してほしいなどと言うつもりはないにしても、あんな手紙を送りつけられて誤解されっ放しといのでは、いくらなんでも ――」
大山それは盗人にも三分の理というものだ
大山が嘯くように言いかぶせた。
一瞬、私は目が眩むのをおぼえた。白い火花が烈しく散る向こうに大山の顔を捉えつつ、

真樹「盗人呼ばわりはあんまりじゃないか!」
テーブルをどかそうとして起とうとした。
梶原が私の肩を素早く押さえた。強い力のうちにもなにかを語りかけている、そんな感じがした。


この会見は、気まずい空気のまま物別れになり、次の筑波山での合宿につながります。
この合宿の様子は「カラテマガジン」に写真つきで紹介されていましたので、私も知っていました。真樹先生、芦原英幸氏、東孝氏、添野義二氏などなどそうそうたる国内の支部長メンバーが大山館長のもと地獄の特訓をした、という紹介記事でした。
ところがこの合宿の目的は、その当時大山館長が気に食わないと思っていた芦原氏と真樹先生を懲らしめることであった、ということがこの本で明らかになっています。
延々3時間以上続く五本蹴りで、何人かの支部長が落伍する中、
「――ねぇ」
不意に左隣りの芦原が、動きを止めぬまま荒い息の下から私に呼びかけ、
「この稽古、俺かあんたのどっちかが倒れるまでは終わらないんだ。倒れちゃおうよ・・・」と小声で言った。

また、もと極真会館の評議員で糸山英太郎氏の盟友であった河合大介氏との会話では、真樹先生の大山館長に対する思いが述べられています。
河合「大山氏をどう思われます?」
真樹「どうって、それはまあ・・・」
河合「かつては非常に魅力的な人物であった――。違いますかな」
真樹「いや、同感だな」
私は深く頷いた。
(彼に初めて会った二十年の昔、並はずれたスケールの大きさにいたく魅了されたことは動かせない・・・) 自信とやさしさに充ちていた壮年の日の大山の姿が鮮明に脳裡に甦った。なぜか、胸を締めつけられるような寂寥感をおぼえずにはいられなかった。
真樹「人間は変容するということだろうか、月並みな言い方をするならば・・・」
私が言うと、今度は河合が深く頷き、
河合「まさしく」
と応じた表情がこよなく侘しげであった。

不遇時代を含めて大山館長と苦楽をともにした真樹先生だからこそ書けた本だと思います



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それ以外の真樹先生の本です。
・時代が梶原先生を求めている! 「兄貴」 梶原一騎の夢の残骸
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・日本の空手界を変えた名著! 「空手バカ一代」を読みなおす 
・ケンカ道 その”究極の秘技”を探る 篠原勝之著
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このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1


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すてごろ懺悔―あばよ、青春


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コメント 2

RONRON

Simpleさん こんばんは^^
いや~めちゃめちゃ面白い内容ですね。
しかもSimpleさんの紹介内容がまた引き込まれます。

大山倍達さんと梶原一騎先生の関係は少し知っていましたが、
真樹先生という方が裏方として大活躍していたのですね~。
昭和世代はやはり何らかの格闘家にあこがれた世代なので、
この本も是非とも読ませて頂きます。
ちなみに私は、柔道を習ってました・・・

by RONRON (2010-03-20 22:09) 

Simple

いつもありがとうございます。
今回は、RONRONさんの趣味とはあわないだろうな~と
思って書きましたので、Niceを頂いてびっくりです。
昭和世代はみんな梶原ワールドに洗脳されてましたからね。(笑)
でもあの強烈な上昇志向というのは今の日本にも必要な気がします。

by Simple (2010-03-21 19:09) 

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