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真樹先生が高森真士のペンネームで書いた「血と骨」 柳川次郎との交流 を読む [真樹日佐夫]

この本は、真樹先生が高森真士の名前で書いた書き下ろしの短編集です。

血と骨



この中で一番最後に書かれている、「余生」という短編が面白いです。これは小説というよりもノンフィクションと言った方が正しいと思います。大山館長とその昔「殺しの柳川」との異名を取った柳川次郎氏、そして真樹先生と兄の梶原一騎先生の関係を描いたものです。

同郷のよしみか、昔から義兄弟の契りを結んでいた大山館長と柳川氏ですが、真樹先生が漫画の原作の内容に関するトラブルで大阪の暴力団から呼び出しを受けた時に助けてもらったのが縁で柳川氏と知り合いとなります。そして、それが縁で柳川氏と梶原先生も親交が深まったそうです。

その当時、大山館長、梶原先生、真樹先生は義兄弟の契りを交わしていましたから、先生と梶原先生も柳川氏と”回り兄弟”の関係にだったそうです。
この本で興味深かった内容を引用します。

極真会館の関西の方の支部長の一人が最近事ある毎に大山に楯突き、それが柳川の知るところとなった。柳川は激昂し、大山には内緒でその支部長に反省を促すと明言した、というのである。 
反省を促すと言えば聞こえはいかにもソフトだが、かつて柳川軍団が北陸一帯の制覇に乗り出した際に土地の暴力団組長を攫って海岸の砂に首まで埋め、すれすれに車を走らせたって話を知ってるか。ほかならぬ大山のためとあらば、足を洗ったからってそれに近いくらいのことはやってのけるかもしれんぜ」(梶原先生:引用者注)

大山に楯突く支部長がいるのは確かで、その男は私よりいくつか年下だが、入門は少し早く、国内にあってはすでに古株といえた。つい先頃、極真会館近くのホテルで開かれた全国支部長会議の席上でも大山の神経を逆撫でするような言動に及び、大山が手許の灰皿を掴んで投げようとし辛くも踏みとどまるという一幕があったばかりだ。ただ、この場合に限って言えば、大山に対する気持ちがどうのというより、ほかの支部長の前でいい格好をして見せたい、すなわち目立ちたがりの性格につい歯止めが利かなくなってのことと、私には感じられたことである。(中略)

その支部長とはそれほど親しいわけではなかったが、なんとしても未然に防ぎとめなくては、と祈りに似た思いのうちに自分に言い聞かせずにいられなかった。(中略)

この支部長が次に上京するのを待って事の顛末を語って聞かせたが、彼は柳川の名が出ただけで瘧にかかったように震えだし、そこは極真会館の地下の更衣室だったが、立ってはいられず床に座り込む始末。殊更反省を促すまでもないように思えた

これを読んだ時、私には該当する支部長は芦原英幸氏しか思い浮かびませんでした。しかし、暴力団など恐れもしない芦原氏の数々の武勇伝と上記の柳川の名前を聞いただけで床に座り込む支部長のイメージが全く異なることと、真樹先生の「その支部長とはそれほど親しいわけではなかったが」という表現から、おそらく違う支部長なんだろうな~っと思っていました。

しかし、小島一志氏の「芦原英幸伝 わが父、その魂」の中に以下の記述を見つけました。

●動物的直感が鋭い人でしたから、ヤバいと思ったらもの凄く臆病になるんです
「大胆にして細心」という言葉がありますが、父の場合は何事もそうなんです。信じられないくらい大胆なことをするくせに、やたら繊細だったり臆病だったりする。動物的直感が鋭い人だったのはたしかですね。(中略)
とにかく父は慎重というか臆病というか、動物的というか・・・・。自分で納得できないものにはもの凄く臆病でした。自然現象には特に敏感でしたね。台風がくるなんていったら大騒ぎですよ。(中略) 「マスミー、大事だよ!」って母を呼んで一人でビビってるんです。
雷といえば、船の帰りだったのか、車に乗って走り出したら突然の雷雨に襲われたことがありました。父は運転どころじゃなくて、車を停めてビクビクしているんです。

それによく父はいっていました。ヤクザ、ヤクザとはいうけれど、その辺の地回りは別にしてホンマもんのヤクザは怖いって。ヤクザは暴力を商売道具にして凌いでいる人たちですから、いざとなったら組織で動きます。 「デカい組織を相手にしたら命なんていくつあっても足りんよ。単なるケンカじゃすまなくなるけん。相手がヤクザだと舐めとったら痛い目に遭う
そういうことも父は自分の経験からよく理解していました。「だから組織を相手にケンカはしちゃいかん」とよくいっていました。でも、ここでは詳しくいえませんが、父が極真会館を離れてから、一時期そんな敵も相手にしなくてはならなくなったんです。

これを読んで、真樹先生の本の記述と整合が取れたような気がします。考えてみれば、当時の大山館長に楯突く支部長が、真樹先生はさておき芦原氏以外にいるわけないですよね。さしもの芦原氏も柳川氏に対しては、動物的な感で危険を察知したのでしょうね。

後期の梶原先生の本には、柳川次郎氏がよく登場していましたが、この本を読むと大山館長抜きで、梶原先生と柳川氏が親しく交流していたことが分かります。

興味のある方はご一読を!
【追記】芦原氏と柳川氏については、こちらもご覧下さい。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2013-12-27

◆明日につなげる今日のアクション◆
武道家の武勇伝は安易に信用しない


それ以外の真樹先生の本です。
・時代が梶原先生を求めている! 「兄貴」 梶原一騎の夢の残骸
・真樹先生のすてごろ人生! すてごろ懺悔
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・真樹先生の大山館長への思いを書いた「大山倍達との日々」 
【お勧め】
・真樹日佐夫の百花繚乱交遊録
・ケンカ十段! 芦原英幸正伝 小島一志著 を読む その1
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大山倍達については、以下もご覧ください。
・ケンカ十段! 芦原英幸正伝 小島一志著 を読む その1
・極真会館はなぜ分裂したのか? 大山倍達の遺言 小島一志、塚本佳子著 を読む
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・ケンカ道 その”究極の秘技”を探る 篠原勝之著
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このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1


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ヘパリーゼ

真樹さんか~どうかな?ヤクザは引退したら力が無くなってしまうのと、基本的に金にならないようなことはやらないから、真樹さんの話も話半分で読んだほうが良いと思いますがね。当時の空手界では全国的に知られてた芦原英幸にヤクザが何かしたら、芦原英幸伝説崩壊と共に極真伝説の崩壊にもつながりますからね。芦原氏に縁切りされた腹いせで書いたぐらいで読んどいたほうが良いのでは。
by ヘパリーゼ (2010-12-13 21:55) 

Simple

ヘパリーゼ さん

コメントありがとうございます。レスが遅れて申し訳ありません。
確かにそのような考えもありますね。
本当のことは当事者にしか分からないので、各人の信じることを信じれば良いと思います。
by Simple (2010-12-28 19:04) 

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