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スティーブ・ジョブズは本当に神か? 成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈 成毛眞著 を読む [ビジネス]


成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈2011年にApple社の創業者であるスティーブ・ジョブズが亡くなりました。彼の亡くなった後、ジョブズに関する多く本が出され、彼のカリスマ性を讃えました。
特に2011年10月24日に発売されたジョブズの伝記「スティーブ・ジョブズ」は、Ⅰ、Ⅱ巻合わせて100万部を突破したと報道されています。
「日本からスティーブ・ジョブズは現れるか?」、「ジョブズを見習え!」というような主張が多い中で、ジョブズが倒すべき相手と名指ししていたマイクロソフトの日本法人の社長であった成毛眞氏が当事者からみたジョブズを書いています。
ジョブズは、本当に多くのメディアが謳ったような”神”なのか。事実、伝記には全編にわたって、読む人が全く理解不能な、不規則な動きで暴れまわる子どものようなジョブズの記録が描き出されているだけである。彼は本当に現代が求める神の姿なのであろうか?
そもそも、優秀な大人が多い日本人が、ジョブズのような子どもをもてはやすのが私には信じられない。日本は世界に誇れる、素晴らしい大人たちの国である。勤勉で、真面目で、和を重んじ、親切だ。そしてそれが、国民全体に美徳として共用されている。この素晴らしさが世界からどんな評価を得ているかは、ちょっと旅行してもらえば分かることだ。なぜこんな大人の国が、ジョブズという一人の子どもに夢中になったのか。

成毛氏は、ジョブズの本質を次の一文で的確に表現しています。
ジョブズが生涯を通して言ってきたことはたった一つ「ほら、こんな面白いものを作ったよ! みんな見て! いっしょに遊ぼうよ!」である。

成毛氏は、「ジョブズの伝説はフィクションである」と断言します。そして、創造的な人間になろうとしてジョブズの生き方を真似ようとしている人たちは、自ら創造性を放棄していることになると言います。
ジョブズの伝記を読む
⇒ 100万人の同じ考えの人たちの仲間に入る
⇒ 自分の競合を100万人増やしているだけ

①ジョブズはアイドルである。フィクションとしての自分を演じている。
②ジョブズのサクセスストーリーは、アップル製品を買わせるためのブランディング戦略である
⇒ ジョブズは「優れたセールスマン」である。
③ジョブズはビル・ゲイツ=マイクロソフトを敵だと喧伝したが、マイクロソフトは相手にもしていなかった
⇒ アップルは単なる業界の最下層のヒエラルキーに属するハードウエアメーカーである。
④ジョブズは天才ではない
⇒ 天才とは発想に飛躍があること。ジョブズは半歩先の未来を作っただけ。

③について説明すると、業界構造の中ヒエラルキーは以下のようなものだそうです。
(いちばん偉い)
1.ソフトウエアのOSを作っている製作者(マイクロソフトなど技術者やカンパニー)
2.OSを作るための言語などのツールの製作者
3.データベースやサーバープロダクト、ネットワークプロダクト製作者
4.一般ユーザーが使うアプリケーションを作っている製作者
5.ハードウエアメーカー(アップルなど)
(一番偉くない)

アップルの属するハードウエアメーカーには、DellやHPなどたくさんのメーカーがしのぎを削っており、アップルの代わりになるメーカーはたくさんありますが、OSを作っているマイクロソフトの代わりになるメーカーはいないということがそのヒエラルキーを決めていると言って良いと思います
そして、そのヒエラルキーの最下層であるアップルのジョブズが、最上層であるマイクロソフトのビル・ゲイツに噛みつき、敵対関係をユーザーに対してアピールしていたということになります。
このヒエラルキーは業界の客観的通念なので、格下のハードウエアベンダーである若かりし頃のジョブズがマイクロソフトを敵視してギャーギャー言ったところで、OSを作っている最上位に位置する最大手ソフトウエアメーカーのマイクロソフトからすれば「一対何を言っているんだろう?」という感じになって当然である。(中略)
「アップルはOSも作っているじゃないか」という話がでてくるが、そもそも自分たちの製品のためにしか作っていない時点でソフトウエアとして格が下がるし、今でこそきちんと動いているが、アップルⅡだのMachintosh SE/30 だのが出てきた70~80年代当時のMac OSはバグだらけでとてもビジネスでは使えない代物だった。
「使い用のないものを作って大声で騒ぎ立てて、何が楽しいんだろうね」といった具合で、それがさらに業界内でのシカト感を加速させていた。

そして、みなさんご存じのWindowsはMacのパクりである! というジョブズの主張に関してです。
しかし、知っている人は知っていますが、Macにしてもゼロックスのパロアルト研究所でアラン・ケイが中心となって1973年に開発したAltoというマシンのGUIをパクってマッキントッシュができたのです。今、私たちがPCを使う時にマウスを使ってアイコンをクリックすることですべての操作ができるのも、このアラン・ケイのおかげなのです。MS DOSをいじっていたような人は実感として分かると思いますが、GUIがない時代は直接コマンドをキーボードで入力してマシンを動かすことしかできませんでした。
さらにジョブズは「WindowsはMacのパクりである」として訴訟を起こしました。ビル・ゲイツを始めとしてマイクロソフトの社員は緊張して対戦モードに入ったかと思いきや、
ビルから平社員まで全社一致で「正気か!?」と思い、さらに「本気でバカなんじゃないのか?」と噴き出していたのだ。
もとネタが同じOSを作っている会社同士が戦うのである。どう考えても時間のムダだ。一応「マジっすか?」という旨はアップル側に伝えたというが、反応なし。やる気満々である
ところが、この訴訟は、証言にたったアラン・ケイの一言で一瞬にして終わったそうです。(笑)
バカ言ってんじゃない。お前らが作る10年も前に私はGUIを作って出している。だけど私はこれを未来のために公開情報にしているわけだから、どんどん使って進歩させてくれればいい。こんなバカげた裁判起こすんじゃない。」
完封負けである。ジョブズは起訴を取り下げ、マイクロソフト社内は爆笑に包まれた。本当にこちらが恥ずかしくなるような裁判であった。

確かにジョブズ関連の本を読むと、契約があるにもかかわらず一方的にその変更を迫ったり、必要な経費の支払いを拒否して罵声を浴びせかける、など通常のビジネスでは考えられないことがたくさん書かれています。結果的にAppleが大成功を成し遂げたのでポジティブに受け取られるかも知れませんが、失敗していたら「とんでもないヤツ!」という評価になっていたように思います。

この本はマイクロソフトにいた成毛氏だからこそ書けた内容が満載です。
ジョブズにあやかってたくさんの本が出され、ジョブズ礼讃の記事が踊っている今こそ読んで欲しい一冊です。
ジョブズ信者、Mac信者およびそれらに洗脳されている人たちには必読の書と言えます。


【蛇足】
私は1997年ころアップル社と共同でとある製品を開発していました。アップル本社に出張の直前に、アップルのCEOがギル・アメリオからスティーブ・ジョブズに変わったという報道がされました。この仕事はどうなるのか?と思いつつサンノゼに旅立ちました。
当時一緒に仕事をしていたアップルのメンバーは、中国系、韓国系の人が多かったですが、彼らから「ジョブズは気に入らないとすぐにfire 解雇 する」、「気に入らないビジネスはすぐに中止する」などの話を聞いていましたが、懸念の通り私たちのビジネスは中止となってしまいました。
発売されていれば、少なからず業界にインパクトを与えられたと思いますので、今でも本当に残念です。「ジョブズめ、覚えていろ!」 と思いました。本当に。(^^)
サンタクララかクパティーノだったか忘れましたが、本社にも行きましたが、これが会社?と本当にビックリしました。米国のTVドラマによく出てくる大学キャンパスのように解放的で本当に素晴らしい環境でした。こんな環境で仕事をしたいものだと切に思ったものでした。
アップルストアでApple Tシャツやロゴ入りボールペンなど会社へのお土産を沢山買い物できたのが、この出張の一番の収穫でした。(笑)

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コメント 8

Simple

マチャ さん

Nice! ありがとうございます。
「菅原はにわ窯公園」、いいですね。
唐招提寺も歩いて行けるなんてうらやましいです!
by Simple (2012-03-19 23:06) 

Simple

月夜のうずのしゅげ さん

Nice! ありがとうございます。
「おじいさんの旅」、何となく昭和の香りがしますね。
by Simple (2012-03-19 23:11) 

Simple

mo_co さん

Nice! ありがとうございます。
「大往生したけりゃ医療とかかわるな」
私も買ってますが、まだ読めていません。
by Simple (2012-03-19 23:15) 

Simple

Loby さん

Nice! ありがとうございます。
ブラジルのファッションもいいですね。
確かにカラフルです。
by Simple (2012-03-19 23:21) 

tsworking

見方が変われば色々ですよね。
そして、中にいたからこそ分かる話もあるわけで。
あまりのリアルさに、アメリカ企業らしさと、ジョブズ氏のもう一面が透けてきたように思いました。

そして、Sample様の悲しさも。

by tsworking (2012-03-20 19:17) 

Simple

tsworking さん

Nice! & コメントありがとうございます。
ジョブズの話はAppleの社員からも聞きましたが、エレベーターの中でジョブズと一緒になり、受け答えが悪かったりするとエレベーターを降りる時にクビだ、と言われることがあったそうです。
ジョブズは、太陽と一緒で遠くから見ている分には明るくて温かいですが、近くに行くとその熱で焼かれてしまうと言われています。(笑)
私も彼のようにはなりたくはありませんね。
アップルの製品はすばらしいと思いますが。

by Simple (2012-03-20 23:09) 

Simple

ぺこんぎん さん

Nice! ありがとうございます。
株、頑張っていますね。
当たり前ですが、銘柄によって結構上がり、下がりがあるんですね。
by Simple (2012-03-20 23:18) 

Simple

TBM さん

Nice! ありがとうございます。
大阪ダービーはセレッソが勝ったんですね。
by Simple (2012-03-22 00:26) 

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