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AKBをプロデュース? 技術で勝る日本がなぜ事業で負けるのか 妹尾堅一郎著を読む [ビジネス]


技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由
少し前に出された妹尾先生の技術経営に関する有名な本です。

妹尾先生のプロフィールです。
慶応大学経済学部卒業 ⇒ 富士写真フイルム入社 ⇒ 産能大経営情報学部助教授 ⇒ 英国国立ランカスタ- 大学経営大学院博士課程満期退学(^^) ⇒ 慶應義塾大学助教授・知的資産センター副所長を経て、東京大学特任教授(知的資産経営総括寄付講座、東大イノベーションマネジメントスクール実施責任者)、一橋大学大学院MBAなどの客員教授を歴任されています。

私は10年ほど前に六本木ヒルズで行われた短期セミナーで教えを受け、それ以来、先生の活動には注目して見ていました。先生には「アキバをプロデュース」という本があったため、ちょっと前まで「AKB48」は妹尾先生がプロデュースしているのだと信じていました。(笑) いいえ、今でも秋元康氏を裏で操っているのは妹尾先生では? と疑っています。
それくらいやりそうだな、と思えるほど斬新な発想と行動力そして、業界人の雰囲気を持っています。(^^)

妹尾先生がこの本で言っていることを簡単にまとめてみましょう。
・日本の産業競争力は崩壊間近ではないか? ⇒ DRAM、LCD,DVDプレーヤーカーナビなど、当初日本がシェアの大部分を占めていた産業で、グローバル市場で大量普及が始まると日本のシェアは急激に落ちている。
・日本は科学技術大国だが、科学技術立国になっていない
①技術で勝っても事業で負ける。
②技術で勝って、知財権をとっても事業で負ける。
③技術で勝って、国際標準をとっても事業で負ける。
・生産性の向上だけで競争力を評価してはいけない。
①インプルーブだけでなくイノベーションが重要。
②従来モデルの磨きあげか、新規モデルへの移行か?
・日本企業は発展(Development)ではなく、成長(Growth)を目指している。
⇒ インプルーブはできるが、イノベーションは生まれない。
⇒ 海外メーカーにビジネスモデルを変えられて負け続けている。
そして、そんな一人負けの日本企業を置き去りにして業績を上げているのが、欧米の企業です。
妹尾先生は、その中でインテルに注目しています。
・なぜインテルだけ一人勝ちか?
⇒ インテルは2009年1~3月期で640億円の黒字。
①ルネサス、NECエレが2010年4月に合併するが、1,500億円の赤字。
②東芝は2009年3月で2,800億円の赤字。
③エルピーダも1,800億円の赤字。
④特許の数ではNEC、東芝それぞれ2,000件所有しているが、インテルは320件しか取っていない
ではどうしてインテルは一人勝ちできているのでしょうか?
・インテルは、PCを完成品主導から基幹部品(MPU)主導に変えることで主導権を握った。 (「インテルインサイド」モデル)
①MPUとOSが主役となりPCは脇役となった
・急所技術の開発による基幹部品化
⇒ 外部機能とつなぐPCIバスのブラックボックス化、 外部とのI/Fはプロトコルを国際規格化
⇒ 周辺、関連部品メーカーは標準規格による製品開発を実施
・基幹部品を組み込んだ「中間システム」の生産(基幹部品を中間部材を形成するレシピ付きで販売する)
⇒ マザーボードのノウハウを台湾メーカーに提供することで 安価な台湾メーカー製マザーボードが大量に出回る
・国際イノベーション協働によるディフュージョンの分業化
⇒ 部品から完成品までを自社だけで垂直統合していた企業が勝つのではなく、そのプロセスを分担した連合軍が勝つ構造
⇒ ディフュージョンプロセスは台湾メーカーなどに任せるが、ビジネスの要所は欧米諸国が押さえる
②インテグラル型製品だったPCをMPUを起点としてモジュラー型製品に変えた
⇒ 従来のインテグラル型の製品を最初から最後まで自前で開発する日本企業を打ち負かす「勝利の方程式」
⇒ 知らない間にビジネスモデルを変えられていた。
90年の前半、日本ではNECのPC98が圧倒的なシェア(ほとんど独占)を獲得していました。
でも、秋葉原のショップではより高性能な台湾製のIBMコンパチのPCが安く売られていました。Windows3.0の登場で日本語処理の問題もなくなったため、PC98である必要がなくなりNECのシェアはどんどん落ちていきました。
当時の私は、なぜ最新のテクノロジーであるPCが台湾製なのかわからなかったのですが、インテルの戦略通りだったのですね。このインテルの戦略のおかげで最新のCPUやハードディスク、メモリなどがモジュール化されたため、言葉は悪いですが「女子供でも」PCを簡単に自作できるようになりました。
ここには日本が得意な職人技の擦り合わせ技術が全く不要になったのです

そして先生は「技術がビジネスで勝つための必要かつ十分条件ではなくなった」例として、完成品主導型である「アップルアウトサイド」モデルを提唱しています。
確かに、アップルのipodを見ると、日本製の部品をたくさん使っていますし、使用している技術も既存の技術にすぎないと思えますよね。
でも、アップルは他のメーカーにはできないような「モノとサービスの連携、部品をつなぐインターフェースの技術には徹底的に知恵を絞る」ということをやったのです。

そして先生の主張するポイントです。
研究開発戦略、知財戦略、事業戦略の三位一体の経営戦略
⇒ 製品のアーキテクチャーの工夫と急所技術の見極め
⇒ どの技術を権利化してどこを秘匿するか、どこを標準化して仲間作りを行うか
⇒ 市場拡大と収益確保を同時に達成するためのビジネスモデルの構築

技術が秀でているのなら、それを活かす知恵を絞りなさい。技術が劣っているのなら、それをカバーする知恵を絞りなさい
・知財マネジメント=特許を取ることではない
⇒ あえて権利化しないでノウハウを秘匿することも重要
・特許出願=技術開示 ⇒ 中国、台湾、韓国などに技術が漏出
・国際標準の重要性を認識していない日本の経営者が多い
国際標準に関しては、確かに欧米の企業は主力メンバーをアサインしていますが、日本の企業は一部を除いて、どちらかと言えば、手の空いている人がアサインされていることが多い(多かった)と思います。

先生が良く出される言葉です。

三流の企業は製品を作り、二流の企業は技術を開発し、一流の企業は標準を作る

標準は、スポーツで言うと一番重要なルールです。サッカーで「手を使っても良い」というルールに変更すれば、全く違うスポーツになってしまいますよね。
これは欧米の人達は、昔から得意な分野です。F1でホンダが勝ち続ければ、自分たちが有利になるようにレギュレーションを変える。スキーのジャンプのV字で日本人が勝ち続けると自分たちが有利になるようにルールを変える。複合で荻原健司が勝ち続けると同じようにルールを変える。
ビジネスの世界でも80年代~90年代にかけて日本企業に負けていた欧米のメーカーたちは、日本の「ものづくり」技術には敵わないため、必死に戦略を練って自分たちが勝てるような国際標準を作り、ビジネスモデルを変えていったのです。

私たちは、そのようなことを昔からやり続けてきた人達とビジネスで戦っているのです。

私たちも真剣に長期的な視野で戦略的に戦うことが必須ですね。
そのためには、必読の書だと思います。

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このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1

アキバをプロデュース 再開発プロジェクト5年間の軌跡 (アスキー新書 035)考える力をつけるための「読む」技術―情報の解読と解釈知的情報の読み方社会と知的財産 (放送大学教材)グリッド時代 技術が起こすサービス革新

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コメント 6

Simple

TBM さん

Nice! ありがとうございます。
弓道はまったく分かりませんが、難しそうですね。
by Simple (2012-03-26 22:43) 

Simple

mo_co さん

Nice! ありがとうございます。
みなさんアウトレット好きですよね。
うちも入間、佐野、仙台...。
引き回しの刑ですね。(笑)
by Simple (2012-03-28 00:36) 

Simple

tsworking さん

Nice! ありがとうございます。
最近、本当に歩く人が多いですよね。
会社に出る6時くらいでも結構な人たちが歩いています。
人間は歩くことで脳が発達したとも言われますからね。
by Simple (2012-03-28 00:41) 

Simple

ゆきママ さん

Nice! ありがとうございます。
確かに最近の為替の変動は異常ですね。
まあ大震災の後に円高になったこと自体おかしいと思いますが。
でもこういう状況でも大きく儲けている人が必ずいるんですよね。
もちろん仕掛けた人ですが...。
by Simple (2012-03-28 23:06) 

Simple

マチャ さん

Nice! ありがとうございます。
吉田小江子さん素敵ですね。
ブレザー姿だとダイナマイト感が無くて知的ですね。(笑)
by Simple (2012-03-28 23:14) 

Simple

月夜のうずのしゅげ さん

Nice! ありがとうございます。
「にょしんらいはい」は、全部ひらがななんですね。
独特の雰囲気ですね。
by Simple (2012-03-29 23:32) 

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