SSブログ

冷温停止は偽りか? 福島原発の真実 最高幹部の独白 今西憲之著を読む [震災・原発]


福島原発の真実 最高幹部の独白

ジャーナリストの今西憲之氏が、福島第一原発(フクイチ)の最高幹部から聞き出した現場の真実の声、今西氏が自らフクイチに乗り込み、自分の目で見た本当の現場の状況が書かれています。
マスコミを通じた政府や東電からの発表内容とはまったく異なる状況が書かれています。


まずは、1号機、3号機の爆発当時の生々しい描写から紹介します。
●1号機の爆発(3月12日)
「また、地震か」と声が上がった。だが、どうも様子が違う。六つの原子炉のうち最も免震重要棟に近いのが1号機だ。
「煙、白い煙だ」どこからか声が上がる。白煙で視界があまり利かない。
「爆発、爆発じゃないのか」「爆発したぞ」 フクイチ対策本部内は、戦場と化した。誰もが大声で叫んでいた。 現場に出ていた作業員たちが、全速力で走って免震重要棟に戻ってきた。恐怖で、みんなの顔が真っ青だ。そして叫んだ。 「原子炉に爆弾が投下されたんじゃないか」「瓦礫の雨だった」
免震重要棟内はもうパニック状態で、「帰らせてくれ」と言う作業員、社員も出てきた。会議室に200人、いや300人はいただろうか。作業員を集めて指示を出していく。

●3号機の爆発(3月14日)
フクイチにかかわった全員が、3号機に万が一のことがあれば、「もう終わり。ダメだ」ということは感覚的に理解していた。先ほども触れたように、3号機の燃料に含まれているプルトニウムは毒性が強い。半減期も2万4千年と飛び抜けて長い。周囲に飛び散れば、自分たちはもちろん、周囲への被害もひときわ深刻になる。(中略)
表現しようのない轟音だった。
しゃがみ込む人、机の下に思わず潜り込もうとする人、いすから転げ落ちそうになる人。地震とは違う。すさまじい揺れだ。前々日12日(午後3時36分)の1号機のときとも、まったく違った。その瞬間、今回こそは爆発だ、それも3号機だと確信した。3号機はMOX燃料で威力が大きい。プルトニウムが使われている。もうダメだと思った。
明確に「死」を覚悟した。(中略)
最低でも50キロ圏内は避難させているだろう。できれば、もっと広い範囲で対応したほうがいいのだが――1号機爆発の際にも言及したが、正直、そう思った。だが、このとき実際に避難指示が出ていたのはフクイチ20キロ圏内だったと後に聞いて、愕然とした
現場の状況が、本店や官邸にはまったく伝わっていなかったのだと悟った。
これを読むと政府の出した避難区域の設定は、事故現場で状況をよく把握している人たちの認識とは大きくずれていることが分かります。今回は、たまたまそれほどひどい被害にはなっていないようですが、今後同様なことが起きた場合には、「政府の出す避難区域の設定はかなり甘めである」ということを認識しておく必要がありますね。

そして、政府、東電が発表した「冷温停止状態」宣言に関しての記述です。政府や東電は事故が収束して安全な状態になったことを強調していますが、現場の目から見るとまったくそのような状況ではないことが分かります。
また、メディアに対しても現場の被害のひどい部分は見せないようにして真実を隠しているというのです。
フクイチは、”小康状態”に見える。
政府は2011年12月、原発の「冷温停止状態」を宣言し、「事故の収束」を強調した。しかし、いまも決して手放しで「安心」できる状態でないことは、最高幹部の証言を読めばわかるだろう。そして私たちは、彼の証言から、このフクイチ事故が、政府・官庁、東京電力を中心とした「原子力ムラ」の住人たちがタッグを組んで、国民の目から”真実”を隠し続けてきたことによる「人災」であることを知っている。(中略)
東京電力と政府がフクイチの現場取材を認めたのは、この原稿を執筆している時点では、2011年11月と2012年2月のたった2回である。特定の場所をバスでぐるりと回る内容で、まるで「団体ツアー」のようなものだ。その取材で公開された写真や映像を見て、がっかりした。私がフクイチに何度も行き、このポイントだと思った「絵になる場所」からの写真がない。うまく外している印象を持った。いまもって、生の本当の姿を見せたくないのか、事故を小さく見せたいのか。さすが、狡猾な東京電力だ。
私を”世界一危ない場所”に招いてくれたフクイチの最高幹部をはじめ、何人かのスタッフは、「生の本当の原発事故の姿を、見て、撮って、書いてください」と、私の希望の極力応じてくれた。

東日本大震災の翌日12日に菅首相がフクイチの現場を視察し、怒鳴りまくって作業の邪魔をして帰っていったことに関しても書かれています。現場の認識としては、ベント作業を遂行中の緊急時に菅首相が来たことで、その対応に手が取られて現場の作業が停止したことが分かります。
会議室の扉が閉まった瞬間、”騒動”は勃発した。
「どうなっているんだ」 と菅首相の大きな声。
すごい剣幕で怒鳴り散らしている。作業をしていたメンバーが、みんなフリーズした。ベントが開始できないことに怒っているのが、首相の声からわかった。(中略)
この間、フクイチの状況は悪化していた。メモには、こうある。
カン 帰る とまる
「とまる」とは、菅首相がフクイチに来ている間、フクイチの幹部が現場の指揮をとれなかったため、作業の一部がストップしてしまったという意味だ。
その後、さまざまな検証があり、「作業はストップしていなかった」という声もある。しかし、現場にいた私は、普段はテレビでしか見る機会がない「一国の首相」の怒鳴り声にドキッとし、何度も手を止めた。多くのスタッフがそうだったはずだ。程度の差こそあれ、「作業が止まった」のは事実だ。

さらに、首相・東電本店から出された海水注水の中止指令に関する現場での対応に関する記載です。現場の状況を知らない上層部からの指令に対して現場は、怒りに震えながら、自らの判断で注水を続行したことが分かります。(55分後に海水注水再開の指示がでます)
この時注水を停止していたら更に状況は悪化していたと思われますので、命をかけて作業を続行した吉田所長以下、現場の判断には感謝するしかありません。
専門家に任せるべきことに対して余計な口出しをして邪魔をし、自分がやるべき瓦礫の処理、放射能の除染、避難民への対応などに対してはほとんど何もしなかった菅首相の罪は本当に大きいと思います。
本店からの指令を受け、フクイチ対策本部の室内は、怒りが頂点に達した。メモには、こうある。
おこる、こぶし
吉田所長の拳が震えていたのだ。
オレたちは命かけてやっているんだよ。なにが総理の判断だ
いまやらなきゃ、とんでもないことになるんだよ。わかっちゃいない
そんなことばかり、上ばかり見ているから、だから本店はダメなんだ

という幹部たちの怒声が、対策本部の部屋に響いた。(中略)
無理もない。そもそも、注水を中断するなどという選択肢はなかった。いま1号機は、海水でもいい。もう手段を選ばずに冷やすしかない。できなければメルトダウンも避けられない。放射性物質どころが、核物質そのものが外部に放出されることもあり得る。(中略)
現場の意思は一つだった。
『総理が了承していない』なんて言っている場合じゃない。こっちは生きるか死ぬかだ。なりふり構っていられない」現場は官邸ではない。フクイチなのだ。だが、「政府からの指令だ」と本店から言われれば、完全に無視するわけにはいかなかった。
(中略)
その後、吉田所長は怒りをぶつけるように、
最後に責任をとるのは、総理じゃない。所長のオレなんだ、オレだ」と怒鳴った。
実際に、当時現場で東電に対していろいろと指示を出していた菅首相はすでに首相をやめています。今後、福島原発でどのような事態が起ころうとも菅さんが自分で責任を取る事はないでしょうね。それを考えるとこの時の現場の吉田所長の判断は素晴らしかったと思います。

3.11以降も福島原発付近では、震度4、5の大きな地震が続いていたので心配していましたが、やはり被害のあった建屋は、現在でもかなり危ない状況のようです。最近、また地震が増えていますので、心配ですね。
本店は、「容器や建屋の耐震、耐久性に問題はない」と言っているが、たとえば、出入りのゼネコン業者に聞いても、
問題がないというのは、いますぐ倒壊することはないという程度の話だ」と答えが帰ってくる。
いま震度5~6級の地震が来れば、揺れ方によっては倒壊の危険性がないとはいえない。加えて日々、建屋・容器の痛みは着実に進行している。せめて、建屋上部にある使用済み燃料棒の燃料プールだけでも、早く移動させたい。

さて、いよいよ今西氏が実際にフクイチに入って、東電が隠している被害状況に関して記載した内容です。3号機、4号機ともに一般に公開されている状況以上に破壊がひどい状況だということです。
●4号機の状況
hukuiti4.JPGと、その瞬間、いきなり目の前が開けた。 思わず息をのんだ。これはいったい、なんなのか。(中略)
迫るように視界に入ってきたのは、4号機だった。地震・津波と爆発で、建屋のコンクリート壁はゴツゴツとした岩の塊のように様変わりして散乱し、鉄骨がむしり取られたように飛び出している。巨大なコンクリート片が鉄筋に引っかかったまま、壁面にぶら下がっていた。
鉄骨のフレームが大きく陥没しているところがあった。その下には、薄い緑色で組まれた大きなフレームが見える。あの付近に燃料プールがあるという話ではなかったか。すぐに崩れてしまいそうに見えた。これまで見てきた新聞の写真やテレビの映像とは、これはまったく違う。圧倒的な迫力。震えが止まらず、体が固まってしまった。
東京電力や政府の公表してきた写真や動画はなんだったのか。だまされた。」ただ、呆然とするばかりだった。(中略)
原子炉建屋のコンクリート壁の厚さは2メートルはあるだろうか。それが、ボロボロになっていた。「飛行機が突っ込んでも大丈夫というほど頑丈に造ったのですが...。いまも風雨や余震で、汚染されたコンクリート片がポロポロと落ちてくるのです」

●3号機の状況
hukuiti3.JPGそして、排気筒の奥に目をやった。巨大な瓦礫の山が見えてきた――ように見えた。だが、それは瓦礫の山ではなかった。
「木端みじん」がふさわしい3号機
その”瓦礫の山”の正体は、紛れもなく「3号機」の朽ち果てた姿だった。
分厚いコンクリート壁は粉々になり、鉄骨は花がしおれたようにグニャグニャに曲がり、もはや原形をとどめていない。燃料プールのある5階以上が吹き飛ばされた原子炉建屋は、直前に見た4号機の高さには明らかに足りていない。
木端みじんという表現がぴったりだ。

3号機、4号機の原子炉建屋の状況に関しては、このブログでも紹介しましたように、5月13日の参議院予算委員会で、独立総合研究所の青山繁晴氏が参考人として証言しています。(http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2011-06-07
(証言の動画はこちらです)http://www.youtube.com/watch?v=_HGcSIdt6_8&feature=related

この時、青山氏も以下のように証言しています。
「津波の直撃を受けた海側の施設、これはタービン建屋を含めて、それはすさまじい破壊でありまして、私は多少軍事のことも触っておりますけれど通常兵器ではこのような破壊はおきないんじゃないか、場合によっては小型戦術核のような攻撃でなければここまでの破壊はないんじゃないか、というようなありさまでありました。」

今西氏が、瓦礫の山と表現し、青山氏が小型戦術核を使ったのではないかと証言した3号機の実情は、政府や東電からは発表されていません。しかし、GoogleやYoutubeを見るとその悲惨な状況を知ることができます。例えば、これを見て下さい。

数年前に子供のサッカーの応援で見に行ったJビレッジが、原発事故対応の前線基地になっているのは悲しいことです。

政府や東電が「冷温停止した」と宣言している福島原発は、現場の認識ではまだまだ危ない状況のようです。現場で命がけで必死で働いている方々には感謝するしかありません。
最近、また地震が増えていますので福島原発から目が離せない状況だと思います。

ブログランキングに参加しています。記事が気にいったらクリックをお願いします。人気ブログランキングへ

このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1

私は無実です 検察と闘った厚労省官僚村木厚子の445日内部告発―権力者に弓を引いた三人の男たち闇に消えた1100億円―巨大詐欺・大和都市管財事件国賠の闘い無法回収──「不良債権ビジネス」の底知れぬ深き闇

nice!(3)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 3

コメント 3

Simple

tsworking さん

Nice! ありがとうございます。
ポールウォーキング体験会、いよいよですね。
by Simple (2012-05-01 23:07) 

Simple

TBM さん

Nice! ありがとうございます。
「預言者ピッピ 2」面白そうですね。
by Simple (2012-05-03 08:52) 

Simple

mo_co さん

Nice! ありがとうございます。
ドラム式洗濯機に入るとどうなるんでしょうね?
私も体験したいです。
by Simple (2012-05-05 17:08) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。