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笹川良一氏と大山館長の生き方について 悪名の棺 笹川良一伝 工藤美代子著 [格闘技]


悪名の棺―笹川良一伝
前回の笹川良一氏の本の評判が良かったので、書きたかったことを追加します。

笹川良一氏は空手界の主流であった伝統派空手の全日本空手道連盟(全空連)の会長を務めていました。私は、大学時代に全空連の大会で、空手着を着た笹川氏が20枚くらいの瓦をジャンプした正拳の一撃で割る試し割をTVで見ましたが、「あんな正拳で割れる訳ないだろ!」と怒りを覚えたことを覚えています。
笹川氏は空手の鍛練を積んだとは聞いていませんので、おそらく何らかの仕掛けが会ったのだと思います。

その当時、笹川氏から大山館長に対して全空連の傘下に入るように何度も要請があったようです。しかし、大山館長は頑として断り続けました。特に笹川良一氏に関しては、空手をやったことがない素人が会長職についていることに対して反発していました。
これについては梶原先生のマンガでよく書かれていたので、私もかなり洗脳され笹川氏に対して非常に嫌悪感を感じていました。
全空連側とは、私の知る限りでは都合三度、会合を持った。最初は築地スエヒロ、二回目が糸山英太郎の経営する新日本会館、そして最後が赤坂の料亭<千代新>でである。
最初と二度目、大山に請われて私も同席した。先方は江里口栄一専務理事、顧問である佐々木真太郎(糸山英太郎の実父)、糸山といった顔触れであったが、いずれの場合も物別れとなり、そして三度目、笹川良一全空連会長が直接大山に会って説得したいとのことで、会合の場として<千代新>を指定してきたのだった。
技術部長として貴君を遇する用意がある、といった話が江里口理事より持ち出され、大山の真対いに座を占める笹川全空連会長が重々しく頷いてみせた。(中略)このとき、大山が崩していた膝を揃えて座り直した。笹川会長をまっすぐに視て、やや高みから口を切った。
「大変光栄なお話ではありますが、辞退させていただきます。講道館と武徳会のふたつがありました頃、日本柔道が一番レベルアップしたのと同じように、われわれ空手の世界に於いても、いくつかの流派が存続し合った方がプラスであろうと考えておりますもので----」
一瞬、全空連会長の顔が朱をそそいだようにみえた。重苦しい沈黙が座を支配した。
この話はこれまでだ。お互い裃は脱ぎ捨てようではないか
笹川が破顔してみせ、それで大山もまた膝を崩した。ざっくばらんな話が交わされはじめたところへ綺麗どころが続々と入来し、みるみる活況を呈した。(「大山倍達との日々」真樹日佐夫)

私はこの記載を読んで、笹川良一氏の大山館長への対応に対して器の大きさを感じました。
この本には書いていませんが、この時全空連側は大山館長に対して1億円以上の現金を差し出したそうです。真樹先生は隣で「受け取っちまえよ、館長!」と心の中で叫んだそうですが、結局大山館長は辞退し、真樹先生は館長への畏敬の念を強くしたそうです。

また、もと極真会館の評議員で糸山英太郎氏の盟友であった河合大介氏との会話では、真樹先生の大山館長に対する思いが述べられています。
河合「大山氏をどう思われます?」
真樹「どうって、それはまあ・・・」
河合「かつては非常に魅力的な人物であった――。違いますかな」
真樹「いや、同感だな」
私は深く頷いた。
(彼に初めて会った二十年の昔、並はずれたスケールの大きさにいたく魅了されたことは動かせない・・・)自信とやさしさに充ちていた壮年の日の大山の姿が鮮明に脳裡に甦った。なぜか、胸を締めつけられるような寂寥感をおぼえずにはいられなかった。
真樹「人間は変容するということだろうか、月並みな言い方をするならば・・・」
私が言うと、今度は河合が深く頷き、
河合「まさしく」
と応じた表情がこよなく侘しげであった。(「大山倍達との日々」真樹日佐夫)

工藤氏の本では、笹川氏と児玉誉士夫との違いは、笹川氏は子供の頃から金持ちの環境で厳しく育ったのに対して、児玉は貧しい家に育ったため、金に対する根本的な考え方が違ったのではないかと書いています。
笹川氏の本を読んで、笹川氏がよく言っていた台詞が西郷隆盛の、「児孫のために美田を買わず」であったことに驚きました。皮肉にも大山館長も同じことを常々語っていました。そしてさらに「私が死んだあとに財産というものが残っていれば、私の墓につばをかけよ」とも語っていました。

若き日の大山館長は、笹川氏から提示された大金よりも自分の理念を優先しました。それは真樹先生をも感動させるような潔さでした。しかし、人は年月が経つと変わるのが常です。
笹川氏が毎年何千億円もの大金を自分や家族に残さずに死ぬまで福祉活動につぎ込んできたのに対して、大山館長はどうだったのでしょうか?

そう考えて、改めて笹川氏への畏敬の念を強くしました。

笹川氏に関しては、以下もご覧下さい。
・笹川良一は本当に悪人だったのか? 悪名の棺 笹川良一伝 工藤美代子 を読む

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大山倍達については、以下もご覧ください。
・大山倍達の偶像崩壊! 「添野義二 極真鎮魂歌: 大山倍達外伝」 小島一志著 を読む 
・大山倍達と民族運動 「大山倍達正伝」 小島一志、塚本佳子著 を読む その1
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・ケンカ十段! 芦原英幸正伝 小島一志著 を読む その1
・ケンカ十段! 芦原英幸正伝 小島一志著 を読む その2
・極真会館はなぜ分裂したのか? 大山倍達の遺言 小島一志、塚本佳子著 を読む
・笹川良一氏と大山館長の生き方について 悪名の棺 笹川良一伝
・日本の空手界を変えた名著! 「空手バカ一代」を読みなおす 
・ケンカ道 その”究極の秘技”を探る 篠原勝之著
・空手超バカ一代  石井和義著

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Simple

tsworking さん

Nice! ありがとうございます。
ポールウォーキング、効果があるんですね。
by Simple (2012-06-30 22:23) 

tsworking

今晩は

是非、ご一緒しましょう。
何時も実はねと言う情報ありがとうございます。
本当に真実はどうして隠されてしまうのでしょうか。
もう、隠されない時代にはなっていると思いますけどね。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
by tsworking (2012-06-30 22:52) 

Simple

tsworking さん

コメントありがとうございます。
みなさん3.11の大震災、福島原発事故などの報道を通して、大手マスコミは真実を報道しないことを学びました。
今回の消費税増税に関しても、なぜマスコミは民主党のマニュフェスト違反を大々的に報じないのでしょうか?(自分たちは報じているというでしょうが) なぜ増税する必要があるのか普通に考えれば分かりません。
TVは、どのCHを見てもお笑いタレントばかり、ニュースはCHを変えても同じ内容。本当にTVは洗脳の道具になっていますね!
by Simple (2012-07-01 01:07) 

Simple

mo_co さん

Nice! ありがとうございます。
ダブル参観日、しんどいでしょうね。
どちらか一つだけというのはできないですしね。
by Simple (2012-07-01 01:09) 

Simple

TBM さん

Nice! ありがとうございます。
レッズVsセレッソ戦、TVで見ていました。
レッズには勝って欲しい、清武選手には点を入れて欲しいというどっち付かずの応援をしていました。(笑)
清武選手の途中交代には?ですが、レッズは負けなくてよかったです。
会場にはモリシも来ていたいのですね。
by Simple (2012-07-01 01:13) 

Simple

mino さん

Nice! ありがとうございます。
お子さんの生誕100週日、おめでとうございます。
うちも長男はやった覚えばありますが、次男は...どうだっけ?。(笑)
by Simple (2012-07-01 19:37) 

清水

唐揚げ美味い
by 清水 (2022-12-17 10:20) 

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