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原発再稼働「最後の条件」: 「福島第一」事故検証プロジェクト 最終報告書 大前研一著 を読む [震災・原発]


原発再稼働「最後の条件」: 「福島第一」事故検証プロジェクト 最終報告書
福島第一原発事故発生時の政府発表やマスコミの報道が信用できない時に心の支えとなったのがYouTubeで公開された大前研一氏の「大前研一ライブ」の番組でした。

大前氏はご存じのように東工大で原子核工学科で修士号を獲得後、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を獲得し、日立製作所で原子炉の設計に従事されたことがある専門家です。

本書は、あまりにも鈍重な国の動きにあきれた大前氏が、自ら働きかけて政府に提出したレポートを書籍化したものです。
大前氏は、事故から3カ月後の2011年6月に、細野原発相(当時は原発事故対応担当首相補佐官)に会って以下の提案を行い、「ぜひ、お願いしたい」との回答を得たそうです。
◆もし、再び福島第一原発のような過酷事故が起きたとしても、安全を確保できる方策を見つけなければならない。しかし、それは政府の事故調査・検証委員会にも、原子力安全・保安院のストレステストにも期待できない。
◆必要な情報源へのアクセスさえ仲介してもらえたら、納税者・一市民として中立的な立場からボランティアで事故原因を分析し、3カ月以内に再発防止策のセカンド・オピニオンをまとめる。
◆客観的な視点からまとめるので、その内容に関しては、国や電力事業者の期待するものになるかどうかわからない。

元原子炉の設計者である大前氏自身にとって一番ショッキングだったのが、「格納容器」の”安全神話”の崩壊だったとのことです。
エンジニアは常に”最悪の事態”を想定して原子炉を設計・製造してきました。その象徴が、重大事故や再臨界による暴走などが起きても放射性物質が外部に飛び散らないようにするための格納容器でした。(中略)
ところが、今回の事故では”最後の砦”だったはずの格納容器が、実はメルトダウン(炉心溶融)にはまったく弱いことがわかりました。(中略)このように福島の事故によって格納容器はメルトダウンに弱いということが、世界で初めてわかったのです

今回の福島第一原発の事故の一番の原因は、マスコミ等でも報道されているように地震や津波によって電源が消失し、原子炉の冷却ができなかったことです。大前氏のレポートでも、
・地震と津波によって、全交流電源が長期的に喪失
・交流・直流の同時電源喪失を想定していなかった
ことが大きな問題点としてあげられています。
そして、さらに恐ろしいことに福島第二原発、女川原発、東海第二原発も一歩間違えば大事故になっていたと大前氏は指摘しています。
「福島第二」では、4回線中3回線が停止しましたが、1回線だけ残った外部電源が救いとなりました。同様に「女川」では、5回線あった外部電源のうち4回線が停止しましたが、非常用ディーゼル発電機が自動起動して難を逃れました。また、「東海第二」も一時は全外部電源がすべて停止する事態が起きていましたが、津波が7mの防護堰(運よく補強していた)を越えることなく非常用発電機が稼働して事なきを得ました。

もし、女川や東海第二で福島第一と同じような水素爆発が起きていれば、仙台や東京を含む関東地方は大きな被害を受けていたでしょう。その時、仙台や首都圏の住民は、冷静に対応できたでしょうか?
本当に首の皮一枚でつながったと言う状況だったようです。

この本の補論として第7章で、「なぜ福島第一原発1号機だけが事故の進展が早かったのか?」ということに関して原因究明と予防策の考察を行っています。

【仮説1】1号機では地震による配管破断が起きていたのではないか?
【仮説2】1号機が「マークⅠ」という古い型式だったことが問題なのではないか?
【仮説3】1号機の冷却系が機能しなかった”本当の理由”は何か?
◆では1号機はどう対処していれば過酷事故を防げたのか?
◆2~4号機はこのような対策によって事故を回避できた可能性がある

最後に大前氏の興味深いコメントを紹介します。
今回の事故を検証してみると、「神様はなぜ福島第一原発のこんな”弱点” まで知っていたのか」と感嘆するぐらい、設計者が想定していなかった被害が次々と起きました。6系統もあった外部電源の全喪失、電源盤やバッテリーの故障・水没、さらに冷却源の喪失 ・・・ 人間たちの考え落としをすべて見抜いていたとしか思えないほど、地震と津波は”頼みの綱”を次々と断ち切っていきました。
何となくいろいろ考えてみると意味深なコメントです。
逆にいうと”神様”の計画通りだったとも読めますね。(大前氏の意図とは離れていると思いますが...笑 )

福島原発事故に関してもう一度考えさせられる本です。

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企業参謀ノート[入門編]考える技術訣別―大前研一の新・国家戦略論企業参謀 (講談社文庫)新版「知の衰退」からいかに脱出するか?―そうだ!僕はユニークな生き方をしよう!! (光文社知恵の森文庫)



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Simple

mo_co さん

Nice! ありがとうございます。
「らいおんみどりの日ようび」読んでみたくなりますね。
それにしても夏休みの宿題の準備、早いですね。
by Simple (2012-08-01 22:52) 

Simple

TBM さん

Nice! ありがとうございます。
オリンピックでの清武選手の活躍、すごいですね。
キープ力やパスの精度のレベルが他の選手と違いますね。
by Simple (2012-08-02 23:24) 

Simple

tsworking さん

Nice! ありがとうございます。
「遠隔一斉ヒーリング」ってあるんですね。
興味深いです。
by Simple (2012-08-04 17:36) 

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