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赤いめがねがトレードマークの先生 御用学者と呼ばれて 澤田哲生著 を読む [震災・原発]

御用学者と呼ばれて (双葉新書)

東日本大震災、津波に続き、福島原発事故が発生した時に、いち早くTVに登場し、トレードマークの赤いめがねで有名になった澤田先生の本です。
澤田先生は、1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業。その後三菱総合研究所に入所。カールスルーエ研究所客員研究員としてドイツに渡る。現在は東京工業大学原子炉工学研究所助教。

私はよく知りませんでしたが、澤田先生はネット上で反原発の人たちから「また“赤めがね”がいいかげんなことをいっている」、「なんだあのチャラチャラしたヤツは」というような誹謗・中傷が飛び交っていたようです。私は、あの福島原発の緊張した状況で、事故の現状を冷静に、理路整然と解説する澤田先生にはかなり信頼感を持って見ていました。赤いめがねに関しても、ずいぶんと「オシャレ」な大学の先生だなと感じていましたので、人によって受け取り方は違うようです。ちなみに私の妻は、同じTVを見ていても澤田先生のことを「何か怪しくない?」と言っていました。(笑)

さて、TVやマスコミでなどでよく出てくる「御用学者」とは何なのでしょうね。
要するに御用学者とは、国家にある種の面倒を見てもらっている学者たちのことです。彼らはお金もあればポジションもある。たとえば原子力委員会やかつての原子力安全委員会、そして現在は原子力規制委員会の委員になっているような人たちが最高位の御用学者です。
残念ながら私はそこに一切関係していません。そもそも大学での職位も、教授、准教授の下の「助教」ですし。

澤田先生は、本物の御用学者から「国策に直接関与して、その見返りをもらっていないおまえがどうして御用学者と呼ばれるんだ?」と非難されているそうです。御用学者にも、ランク付けやプライドがあるんですね。

澤田先生が有名になったTVでの解説に関してですが、大震災の翌日、フジテレビから澤田先生にTVへの出演依頼がきました。
原発が危なそうなので、とりあえず至急局まで来てください!
翌朝6時すぎ、フジテレビから切迫した声の電話が入ったのです。ここから事態が急転回することになりました。(中略) といっても、まだそのときの私は、電車も動き出していないし、タクシーを使ってまで行くこともないな・・・・と、高を括って、ゆっくりと身支度を始めました。このときすでに原発の炉心の燃料が溶けていたと知るのは、その日の午後のことです。
私たちは、TVやマスコミの人たちは私たちよりも多くの情報を持っていると考えがちですが、今回の震災の報道を見て分かるように、実際にはそれほど多くの情報を持っているわけではありません。

今回の福島原発の事故の原因は、交流電源が喪失し、バックアップの非常用予備電源も津波で喪失して、原発を冷却できなくなったことが原因ですが、どうしてそのような事態を想定できなかったのか? というのが素朴な疑問だと思います。
全電源の喪失の可能性を、専門家なのに、なぜ疑わなかったのか?」とよく言われるのですが、正直なところ、想像できませんでした。特に地震後の早い時期に、発電所を襲った津波の規模やその影響の情報があまりなかったので、非常用ディーゼル発電機が水没しているという考えはなかったのです。(中略)
というのも、日本ではたとえ停電が起きても、それが長引かない。つまり、何か起きても、外部電源は早いうちに復旧する、そういうイメージを抱いていました。(中略) また、テレビ局に入った時点では、そういう情報もまだあまり伝わって来ていなかったと思います。それが3月11日にスタジオに入った頃の状況だったのです。(引用者注:実際のスタジオ入りは翌日の12日だと思われます)
この辺が最悪の状況を想定してそれに備える米国との違いだと思います。このような大きくて危険なシステムに関しては、最悪の最悪を想定して設計しなければこのような事が起きるのだと思います。日本の場合は、「原発は安全だから」そのような想定は不要、ということになっているようです。

そして、TVに出続けている澤田先生に、大学の当局から圧力がかかったそうです。
テレビ番組に出続けていた3月14日頃だったと思いますが、大学の研究所の上司から早々に「最終的にはあなた自身で判断すればいいが、基本的にテレビ番組への出演を自粛しましょう」といった意味合いの電話がありました。
現在進行形の事象にコメントすることの危うさ、つまり科学技術的に間違った発言をしてしまうことと、その後大学へ向けられる批判は、あなた自身の今後にとっても大学にとってもよろしくないという主旨だったと思います。
普通の教授だったら、そこで自粛するところでしょうが、澤田先生はTV に出続けることが重要だと考えたそうです。このように明確なポリシーを持っているところが素晴らしいですね。
私は批判は重々承知の上で、それでもテレビに出演するのは、原発や放射線に関する情報を提供するよい機会だと考えているからです。(中略) そういう現場から逃げるという発想は微塵もありませんでした。学術的な研究を積み重ね、その成果をだすことだけが学者のすることではありません。むしろ、いまこそ、私たち専門家が研究室から街にでて、様々な疑問に直接答えていかなければ、この事故そして原発への不安はどうにもならない。私はそう考えていたのです。
福島原発事故直後の情報のない不安な状況で、澤田先生などのコメントがどれほど私たちに安心感を与えてくれたか分かりません。このようなポリシーを持った先生が増えないと、「原子力村」などの日本の大学を中心としたムラ社会は無くならないと思います。

私のこのブログでも何回か書いた「4号機の使用済み燃料が非常に危険である」ことに関して、澤田先生は、最初から否定的だったそうです。丁度昨日、「ニュースステーション」で古館氏が4号機に行って中継をしていましたが、澤田先生もご自身で現地を見て、不安説を裏付ける状況はないと断定しています。
確かに4号機の建物は、建屋の天井が吹き飛んで、壁面も激しく壊れています。しかし、床や支柱はまったくといっていいほど損傷を受けていません。使用済み核燃料プールも傾きもなく、冷却水が確保できている状態がきちんと確認できたのです。水素爆発の激烈さと原子炉建屋の強固さの両方を目のあたりにしました。
多くの人が4号機の危機を指摘していたので、私もそれを信じていましたが、澤田先生が書いていることや昨日の「ニュースステーション」の映像を見た限りでは心配無いように思えてきました。このようにいろいろな情報を自分で集めて自分で判断することが重要ですね。

原発事故に関心がある方にはお勧めの一冊です。

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今思うとウソばっかりやったでしょ
by お名前(必須) (2022-08-08 08:28) 

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