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佐野乾山に関する名著 佐野乾山の見極め 渡辺達也著 を読む [尾形乾山]

mikiwame.jpg故渡邉達也氏の佐野乾山に関する隠れた名著です。
「隠れた」と書いた理由は、入手が非常に困難なのです。私自身も手に入ることができていませんので、友人から借りて読みました。

渡邉氏は1924年に壬生生まれの洋画家です。佐野乾山事件の時は壬生高校で教鞭を取っておられましたが、森川勇氏の依頼で佐野乾山に関わる事となりました。以来、40年に渡り佐野乾山を追ってきた筋金入りの在野の研究家です。

佐野で発見された手控えによると、乾山は佐野に滞在した元文三年に壬生の常楽寺で作陶を行ったと書かれています。渡邉氏は、壬生高校の生徒たちと一緒にその常楽寺跡を発掘調査したことでも有名です。

さて、この本ですが、一般的な佐野乾山の関する記載とは違い、40年に渡る佐野乾山事件の発端からその後までを統括して書かれており、佐野乾山を研究する上では必見の書と言えるでしょう。

佐野乾山事件と言えば、「日本最大の真贋事件」と書く人もおり、「国会でも議論された」などの形容詞が付くことが多い事件です。しかし、その国会で何を議論されたかについては、専門書を含めて書かれている本はほとんどありません。

私は、佐野乾山事件を調べていく中で、国会での議論した内容を読み、この事件の本質を知りました。この国会での議論が佐野乾山事件を「限りなく黒に近いグレー」などという、うやむやな状況においている原因でした。
それは、これから私の拙文を通読下されば、理解していただけるものと思うが、この新発見の佐野乾山で、直接に或いは間接にと不利な立場にある人は口を閉ざすか、贋作説を鼓吹するかであった。まして公的職務にある場合は、昭和37年10月29日の第41回国会衆議院文教委員会において、高津正道議員による佐野乾山問題に関しての質問に文部事務官清水康平氏(文化財保護委員会事務局長)が、国立博物館に国家公務員としての発言に注意したという一事で関係した学者は一切公言できなくなり、他の国公立大学の研究家も同様に佐野乾山問題については触れなくなった。したがって、これを期に贋作説者の一方通行となって、それらの極論者にいわせれば、贋作であったからこそ、真作説が唱えられなくなったのだ、と都合よく逆利用していたのが実情であった。

私の場合、自分で苦労してようやく本質が分かったと思ったすぐ後にこの本を読んだので、かなりショックでした。何だ、ここにちゃんと書いてあるじゃないか...と。
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佐野乾山発見当時、有力な真作派であったのは、東京国立博物館技官の林屋晴三、京都国立博物館工芸室長の藤岡了一、東大文学部助教授の山根有三などの人たち、つまり国家公務委員の人たちでした。そして、国会文教委員会で、当時の高津委員が、文部事務官清水康平氏を厳しく問い詰めたことにより、清水氏の意向に沿って、各国立の博物館や国立大学に佐野乾山に関する発言しないような圧力がかかったのです。その結果、真作派は、武蔵野美大助教授だった水尾比呂志以外はほとんど発言がなくなり、贋作派たちの言いたい放題になったのです。

もう一つの重要ポイントは、この本で落合先生の説を取り入れていることです。
私達真作説者にとって、真贋問題から37年を経た現在、まさに”晴天の霹靂”ともいうべきことなのだが、陶磁研究家落合莞爾氏の調査によって判明した事件を第十二章にも少し書いておいた。(中略)戦前(太平洋戦争)から陸軍特務機関員の画策によって、軍費調達のために中国陶磁器及び日本陶器(桃山・江戸時代)の倣陶(贋物)を、その当時の著名な学者や陶芸家を国策にそった協力という形で作陶に従事させたのである。(中略)もちろんこの中の誰かが乾山の作品を作ったことになり、それらの贋作は時の富豪や公私の美術館に売却され、ときには名品の折紙さえつけられて、公然と各展覧会などに出品されているとみられる。

このように、佐野乾山事件の裏には美術以外のいろいろな事柄が複雑に絡み合っていたと言えます。

佐野乾山に関して調べる方には必読の書です。

●乾山に関する記事です。
・琳派 尾形乾山の書を考える その2 乾山の字母について
・琳派 尾形乾山の書を考える その1
・陶工 尾形乾山は本当に素人か? 『「琳派」最速入門』を読む
・乾山ゆかりの地がおしゃれになっていた! (2017年)
・「乾山 見参! 着想のマエストロ」 を読む
・佐野乾山はホンモノだ! 岡本太郎の見た佐野乾山 美術手帖 1962年8月号 を読む
・「佐野乾山事件とバーナード・リーチ」 豊口真衣子著 を読む
・佐野乾山の新聞報道に関して(2015年)
・尾形乾山生誕350周年の展覧会(2013年)を振り返る
・美術品の科学鑑定って? 「X線分光分析」、「やきものの美と用―芸術と技術の狭間で」 加藤 誠軌著 を読む
・佐野乾山に関する名著 佐野乾山の見極め 渡辺達也著 を読む
・佐野乾山は美しい! 骨董のある風景 青柳瑞穂著 青柳 いずみこ 編 を読む
・乾山と言えば色絵陶器です! 「国際写真情報 」 を見る
・佐野乾山の真実! 尾形光琳二代目 乾山 細野耕三著 を読む
・藤田玲司と三田村館長が認めた「佐野乾山」、ギャラリーフェイク 006 「タブーの佐野乾山」 細野不二彦著 を読む
・「開運! 何でも鑑定団」の鑑定士の本「ニセモノ師たち」 中島誠之助著 を読む

【佐野乾山に関しては、K's HomePageを参考にしています。(http://kaysan.net/sano/sanokenzan.htm)】

このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1
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