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凄過ぎる山との戦い 垂直の記憶 山野井泰史著 を読む [クライミング]


垂直の記憶―岩と雪の7章垂直の記憶 (ヤマケイ文庫) ← Kindle版です。

世界的に有名なクライマーである山野井泰史氏の本です。
山野井氏は以前紹介した、平山ユージ氏などとともに、アメリカのヨセミテでフリークライミングを行っていましたが、その後、アルパイン・クライミング(山の頂上を目指す)の道に進みました。特に、20代後半からはヒマラヤの高峰にチャレンジしてきました。

この本は、その12年間に18回挑戦したヒマラヤ高峰へのチャレンジについて書かれたものです。
通常、ヒマラヤの8,000m級の登山ではチームを組んで行いますが、山野井氏の特徴は、フリークライミングで培ったクライミング技術を駆使して単独、あるいは奥さんの妙子さんとの2人で新ルートの開拓を行うことです。山野井氏も最初はグループで登っていたようですが、自分が登れると思っていても単独行動できないことに違和感を感じたようです。キャンプ中のテント内での場所取りの問題、食事や飲み物を回し飲みする場合の思惑など、極限状況の中では相当なストレスが溜まるようです。
しかも、山野井氏は8,000m級の山を登る時でも酸素ボンベを使用したことはないとのことです。

この本で、1992年10月のメラ・ピーク西壁への挑戦を諦めた時の記述で気になったのが、無線での妙子さんとの会話です。
「あと一時間で安全地帯に入れる。雪も降ってきて、ルートも分からなくなるが、多分、大丈夫だ」
「じゃあ私、途中まで迎えに行くから」
「ダメだよ。途中に冷たい川があるんだ。指を失ったばかりじゃないか」
「大丈夫。迎えにいくよ」
え? 指を失ったばかりって...
早速、ウィキペディアで調べてみると、
1991年10月7日、ベルニナ山岳会隊の石坂工と共に、ヒマラヤのマカルーに無酸素登頂に成功するも、下山中に嵐に巻き込まれたため、8100m地点で二日間の露営を余儀なくされる。石坂隊員が凍死。山野井は命は助かったが、重度の凍傷によって、手の指を第二関節から先の10本全てと、足の指8本の切断の重傷を負う。(ウィキペディア 山野井妙子)
手足の指を失っても翌年に山野井氏と一緒にヒマラヤに行っている。
山野井さんの奥さん、凄過ぎる!

そして、この本の最後に2002年10月のギャチュン・カン(7,952m)北壁への挑戦が書かれています。この時も奥さんと一緒に挑戦しています。山野井氏は登頂に成功しましたが、その帰りにマイナス40℃雪嵐の中で妙子さんと雪崩に巻き込まれてしまいます。何とか二人とも命は助かりましたが、7,200mの高度で酸素不足、栄養失調、疲労が重なり、二人ともほとんど視力が無くなった状態で何とか無事帰還しました。この時の描写は読んでいて息が苦しくなるような緊張感が伝わってきます。
二人は、下山の途中で岩にぶら下がってビバーグせざるを得なくなります。
凍傷になった手で、苦労しながら妙子は一人、作業をしつづけた。両足をぶら下げながらロープに座るころ、妙子も目が見えなくなった。
ものの数分で腰から下は完全にしびれ始め、そのうち感覚を失った。寝袋にも入れず、ヒマラヤの寒気は体を凍りつかせた。足の指を切るかもしれない。手の指も切るかもしれない。それでも明日には平らな氷河に戻れる。それだけが希望だった。

六日間の吹雪と寒さとの闘いの末、生還した二人ですが、その後凍傷のために泰史さんは手足の指10本を切断、妙子さんは両指10本をすべて付け根から失うことになりました。このような肉体的なダメージを受けた二人はどのような人生を歩んだのだろう...という思いが頭に浮かびましたが、お二人ともその後も、山を登り続けているようです。何と凄い夫婦だと思いました。


本当に山が好きなんですね。これだけ打ちこめるものがあるとは本当に素晴らしいと思います。
しかし、妙子さんのボルダリングには驚きました。指を失ってあれだけできるというのは凄いと思います。
あと、本当に仲の良い素晴らしい夫婦だと思いました。羨ましいです。(笑)

クライミングに興味がある人には是非読んで欲しい本です。

クライミングに関しては、こちらもどうぞ。
・ユージ ザ・クライマー―世界最強のクライマー平山ユージのライフストーリー
・K2の東壁に挑む 「孤高の人」 坂本眞一著 を読む

このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1
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