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ケンカ十段! 芦原英幸正伝 小島一志著 を読む その2 [格闘技]


芦原英幸正伝

前回紹介した本ですが、芦原氏以外についても他にもいろいろと興味あることが書かれているので紹介します。

●柳川次郎との関連について
以前、このブログで柳川次郎と芦原氏に関連したことを書きました。(http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-25) ここで紹介した真樹先生の本では、柳川氏の名前を聞いただけで、震え上がる芦原氏が書かれていましたが、これもどうやら事実とは異なるようです。
柳川は本部時代から芦原に目を掛けていた。若い時代、関西の裏社会をたった一人で震撼させたという様々な伝説や武勇伝を有する人物だが、芦原の罪のない天衣無縫なやんちゃさに、柳川は若き日の自分を重ねていたのかもしれない。
「お前は私に似ているから・・・。だけど筋だけは外しちゃいけないよ」 そんな戒めの言葉を受けたと芦原は言った。(中略)この日まで少なくとも芦原と柳川は「大山先生より柳川先生が本当の師やった」と芦原が述懐するような関係にあったということだ。(下線は引用者が追加)
ここで書かれている柳川氏と芦原氏の関係を見ると、上記ブログで紹介した真樹先生の記述には違和感を感じます。この本に書かれているような関係であれば、柳川氏が気にいらないことがあれば、直接芦原氏を叱りつけることが自然だと思います。
実は、この真樹先生の「血と骨」という本ですが、以前から不審に思っていました。この本は短編集なのですが、空手や武道関連ではなく、普通の小説の中に「余生」という柳川氏と芦原氏のことを書いた短編が入っているのです。おそらく武道関係者は、誰も読まないような本です。ですので、読み直す度に違和感を感じ、「真樹先生は誰に向けてこの小説を書いているのだろう?」と常々思っていたのです。
この小島氏の「芦原英幸正伝」を読んで、この「余生」は真樹先生が「誰か」に、芦原氏を貶めるような文章を書いてくれと頼まれて仕方なく書いた短編ではないかと考えました。真樹先生としても気が進まないが、立場上断る訳にもいかないので、武道関係者が読まないような普通の小説の短編集に埋め込んだのではないでしょうか。(あくまでも私の推論です)

前回のブログで紹介した、支部長会議で芦原氏が大山館長に詰め寄った時に、柳川氏が芦原氏を諫めました。
「芦原、もうやめんか。如何なる場でも、如何なる時でも自分の師匠や親分に食ってかかるのは仁義に外れた行為や。師弟関係は親子も同然やないか。お前が今やっていることは、仁義に生きる世界なら万死に値する最低の行為なんや。場をわきまえんか」
一瞬我に返った芦原だが、もう止めることはできなかった。芦原は柳川に向かって「先生との縁もこれまでちゅうことですね。先生は館長の味方やもんね。ワシは今から先生のカタキになるちゅうことですわ。好きにしたらええ」と言い放つと、会場を後にした。

大山館長の右腕として、大山道場の時代から館長の元にいた黒崎健時氏のコメントです。
「弟子が師の悪口を言うのは許されないことで、私のように若い頃から仁義を重んじる世界にいた者にはよく分かっていることです。だがそんなことさえ綺麗ごとに思えるほど、私にとって大山は何一つ師らしいことをしていないんです。要は喧嘩ができない大法螺吹き。空手では私より強かったとしても、人間としてはあんなに外見と違って臆病な男はいませんね。右翼の世界、極道の世界、武道の世界など、『漢』を売りものにする世界では最低な人間です。」

●正道会館について
芦原氏が極真会を除名になった後、芦原氏の弟子だった石井和義氏が正道会館を立ち上げて、極真会館のコピー(パクリ)としか思えないスタイルで急激に勢力を伸ばしました。それに関して、雑誌「フルコンタクトカラテ」などの編集長だった山田英司氏が疑問を唱えます。
怖いよなぁ、あのケンカ十段を敵に回したクーデターだぜ。(中略) 大阪の梅田の近くでさ、ビルのなかだけどヘビーサンドバッグなんて十基も吊るしてあるし、だいぶ金がかかっているんじゃないかな。それに選手や指導員を引き抜くのに億単位の金が動いているとも聞いてるよ。だって、ついこの前できたと思ったらもう全国にたくさん支部があるんだぜ。(中略) そんな感じでカップヌードルのようにどんどん支部長作って芦原会館潰しに動いているってもっぱらの噂なんだ。

その後の正道会館の躍進は、みなさんご存じの通りだと思います。芦原氏を裏切り、極真会館とももろに対抗する組織でありながら、大きな妨害を受けることなく躍進した裏には大きな闇の力と巨額の金が動いていたというのが小島氏の見解です。

●芦原氏の病気に関して
芦原氏は、1988年に一番頼りにしていた愛弟子である二宮城光氏と決別します。そのことが芦原氏に与えたショックは大きかったようで、精神的にかなりのストレスが溜まっていたようです。また、その他にも会館の運営や子供の教育などストレスの原因は多かったようです。
1991年、芦原氏はALS(筋委縮性側索硬化症)を発病し1995年4月に死去します。この病気は、全身の筋肉が急激に衰えて行く病気で、原因は分かっておらず、現状では治療方法も対処療法しかないようです。自分の強さに絶対の自信を持っていた芦原氏の最後が、このような病気で終わるとは、何とも残酷な運命とした言いようがありません。一日一日落ちている自分の筋力を芦原氏はどのような気持ちで捉えていたのでしょうか?
本当に残酷なシナリオだと思います。

その他にも書ききれない内容が満載の一冊です。

大山倍達については、以下もご覧ください。
・大山倍達の偶像崩壊! 「添野義二 極真鎮魂歌: 大山倍達外伝」 小島一志著 を読む 
・大山倍達と力道山の伝説 「大山倍達正伝」 小島一志、塚本佳子著 を読む その2
・大山倍達と民族運動 「大山倍達正伝」 小島一志、塚本佳子著 を読む その1
・大山倍達の実像は? 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか 増田俊也著 を読む
・極真会館はなぜ分裂したのか? 大山倍達の遺言 小島一志、塚本佳子著 を読む
・笹川良一氏と大山館長の生き方について 悪名の棺 笹川良一伝
・日本の空手界を変えた名著! 「空手バカ一代」を読みなおす 
・ケンカ道 その”究極の秘技”を探る 篠原勝之著
・空手超バカ一代  石井和義著

このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1
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