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「わが師 大山倍達」 高木薫著 を読む [格闘技]


わが師大山倍達―1200万人への道
大山館長に関する本です。

これは、真樹先生の「大山倍達との日々」が出された後、しばらくしてから出版されたもので、明らかに真樹先生の本に対抗するために出された本です。著者は、北海道支部長であった故高木薫先生です。

私は、北海道の地方支部に通っていましたので、高木先生の孫弟子ということになります。直接指導を受けたことは数えるほどですが、北海道大会がある時には札幌まで手伝いに出かけました。
その当時、高木先生は、千葉真一さん、真田広之さんと交友があり、大会の時にはよく来られていました。私が大会の受付をやっていた時、大柄な髭を蓄えた男が「千葉です!」とやって来た時は驚きました。ちょうど映画「戦国自衛隊」の撮影の時期だったらしく、そのままの服装だったと記憶しています。

高木先生は、城西大学で極真空手を始め、本部道場にも通うようになりました。大学の先輩に添野義二氏、後輩に三浦美幸氏がいます。昭和45年に大山館長に言われて支部を作るために北海道に渡ります。当時は、「空手バカ一代」の連載が始める前で、国内支部も黒崎健時氏の成増道場、真壁忠氏の秋田支部、芦原英幸氏の四国支部、添野義二氏の埼玉支部しかなかった頃です。

さて、なぜその高木先生がこのような本を書くことになったのでしょうか?
おそらく、真樹先生の本( 「大山倍達との日々」)が出たことで、ウィリーの片八百長の話や大山館長の武勇伝に関する疑惑など、体面を非常に気にする大山館長にはかなりショックだったのだと思います。そして、当時北海道支部長でありながら、なぜか館長の秘書のようなことをやっていた高木先生に、この本に対抗するような本を出すように強い(逆らえない)依頼(指示)があったのだと思います。

この本は、「第一章 大山倍達・神の手の軌跡」、「第二章 歴史は語る ―― 極真会館秘話」 と前半は、大山館長の伝説に関して書かれており、第三章 に高木先生の極真会館での修行、北海道での道場立ちあげの苦労などに関して書かれています。そして、「第四章 極真を去っていった同志たち」、「第五章 梶原一騎氏と真樹日佐夫氏」と続きます。
前半部は真樹先生の本で明らかになった、大山館長関連の神話の疑惑に関して、それを払拭するために書かれたような内容で、まあそれほど面白い内容ではありません。(^^)
後半部は、高木先生の修行時代から北海道支部を立ち上げるまでの苦労や、芦原氏、添野氏など極真会去った人たちとの思い出が書かれており、とても興味深い内容です。その中で、私が面白いと思った内容を紹介します。

1)芦原英幸氏、添野義二氏の件
高木先生が、大学時代に四国の芦原氏の道場で合宿をやった時の話です。
八幡浜に着いた私を芦原先輩は歓迎してくれた。酒の好きな私をもてなしてくれ、空手談義に花を咲かせながら先輩も私もだいぶいい心持ちになってきた。しかし、酒の強い私ではあったが、その夜はあまり深酒するわけにはいかなかった。明日の朝、東京から遅れてくる添野氏を八幡浜の駅まで迎えに行かなければならなかったからである。いい加減、酔いが回ってきたところで私は芦原先輩に言った。
「先輩、そろそろ寝ましょうよ。明日は、添野先輩を迎えに行かなきゃなりませんし・・・」
すると、
「いいよ、いいよ、あんなの放っときゃ一人で来るから」
と芦原氏。私もついついその気になり、深夜まで先輩に相手をする羽目になってしまった。そしてとうとう、添野先輩を迎えに行くことも忘れて、深酒をし朝方まで寝込んでしまったのである。
この時の合宿には、山崎照朝先輩も合流していた。
翌朝、合宿の電話のベルがけたたましく鳴った。私は、「しまった・・・」と思った。私宛の電話と聞いて受話器を取ると、案の定、添野”先輩”からであった。
「誰一人いないとはけしからん。高木、お前、今すぐに迎えに来い!」
私は慌てた。「放っときゃいい」と言っていた芦原先輩も慌て、山崎先輩も慌てた。城西大学の全員数十名をつれて、私たち三人は八幡浜駅へと急いだ。
私はこれを読んで、「芦原さんは、添野さんより先輩なのに、どうしてそんなに気を使っているんだろう」、「添野さんも先輩を呼びつけるとはどうなの?」と素直に思ったものでした。
しかし、この本は、真樹先生や芦原氏、添野氏など極真会を去った人たちをさりげなく貶めるのが目的の本であると思われますので、このまま素直に受け取るべきではないでしょう。少なくとも、「一日でも早く入門したら”先輩”」であり、上下関係の厳しい極真会で、上に書いたような芦原さんと添野さんの対応には、信じられないほどの違和感があります、とだけ書いておきます。

②真樹先生のお見合いの件
梶原先生は、大山館長と姻戚関係を結ぼうと考えていたように書かれています。
くわしい事情は私にも書けないが、また過去において梶原氏は、総裁のお嬢さんを真樹氏と結婚させ、総裁と姻戚関係を持つことによって「極真会館二代目館長・真樹日佐夫」、「三代目館長・梶原一騎長男」とういう構想を抱き、総裁に持ちかけたこともあったようだ。しかし、梶原氏からのこの話があってのち、大山総裁が真樹氏の”身辺”を調査してみると、「義理の息子に相応しからず・・・」という結論に達せざるを得ない行いが次々と出、この縁談(?)は結局、立ち消えになっていった。
これも、かなり真樹先生のことをひどく書いていますね。 以前書いた「大山倍達との日々」の内容で、あえて紹介しなかった件がこの件なのですが、高木先生がここまで書いているので、書いちゃいます。
「大山倍達との日々」は、月刊誌であるカラテマガジンに連載されていた内容がベースになっていますが、真樹先生が大山館長の三女とお見合いをした件に関しては、本の方には掲載されませんでした。真樹先生としては館長に対してかなり気を使ったのだと思います。
その当時、館長の娘さんはまだ18歳だったと記憶していますが、結局真樹先生には、当時付き合っていた女性がいたため先生の方から断わったそうです。先生は、奥さん以外に19歳年上の女性を亡くなるまで面倒をみていたことから分かるように、基本的に年上の女性が好みのようです。付き合うにしても20歳以上でなければ、とも思っていたようですので、可愛らしい館長の娘さんであっても断わらざるを得なかったのでしょうね。
真樹先生の小説には、主人公の通っている道場主の娘が主人公を思いつめた眼差しで見つめてくるような場面がよく出てきますが、おそらくこの当時の状況を反映しているのだと思います。
また、「マス大山カラテスクール」の広告に、真樹先生の紹介として、「大山倍達の後継者」との記載があり、その状況を知らなかった私としては、「真樹日佐夫って、『ワル』の原作者なのに、どうして?」と不思議に思っていました。

③梶原先生の漫画に高木先生登場の件
梶原先生の原作の劇画に高木先生が登場した事があります。
正直言って私としては、この両名(注:梶原先生と真樹先生)のことについてはあまり触れたくない。両氏に対し、嫌な思い出が一つあるからである。 『ボディーガード牙』というタイトルで、梶原氏がさる週刊誌に連載している時であった。主人公は大山倍達総裁をモデルにしたものであったが(仮名で)、そのなかに「北海道の高木」という人物が ”実名” で登場した。作品中に出てくる私「高木」は、「支部を七つも八つも持って商売だけうまい」とか「女性に色目を使っている」とか、何ともシマラナイ役であった。
これには、さすがに私も我慢ならなかった。実名で作品を書いているところから、梶原氏が大山総裁の義兄弟であることも忘れて、氏の事務所へ乗り込んでいった。そこには、弟の真樹氏もいた。両名は、
「やあ、やあ・・・」
と私を迎えたが、「何がやあやあだ・・・」と私。両名は震えていた。以後、その週刊誌の連載から、二週間にして私の名前は消えた。
この雑誌を私はリアルタイムで見ていました。その当時、北海道支部に通っていましたので、この本を本屋で立ち読みをした時は、ぶっ飛びました。(笑)
「北海道の高木って・・・」他にいないでしょ...
梶原先生の意図は分かりませんが、さすがにちょっと酷いな~と思いました。
まあ、高木先生が殴りこんで行ったとしてもケンカ好きな梶原先生と真樹先生の二人が喜ぶことはあっても、「震える」ことは絶対にないと思いますが...。
もしかすると、高木先生はこの件を大山館長に訴えたのかも知れませんね。

極真会館に関して興味がある方にはお勧めの一冊です。

それ以外の真樹先生の本です。
・時代が梶原先生を求めている! 「兄貴」 梶原一騎の夢の残骸
・真樹先生のすてごろ人生! すてごろ懺悔
・マッキーの最新作! 「哀しき空手王」
・真樹日佐夫の百花繚乱交遊録
・ケンカ十段! 芦原英幸正伝 小島一志著 を読む その1

大山倍達については、以下もご覧ください。
・大山倍達の偶像崩壊! 「添野義二 極真鎮魂歌: 大山倍達外伝」 小島一志著 を読む 
・大山倍達と力道山の伝説 「大山倍達正伝」 小島一志、塚本佳子著 を読む その2
・大山倍達と民族運動 「大山倍達正伝」 小島一志、塚本佳子著 を読む その1
・ケンカ十段! 芦原英幸正伝 小島一志著 を読む その1
・極真会館はなぜ分裂したのか? 大山倍達の遺言 小島一志、塚本佳子著 を読む
・笹川良一氏と大山館長の生き方について 悪名の棺 笹川良一伝
・日本の空手界を変えた名著! 「空手バカ一代」を読みなおす 
・ケンカ道 その”究極の秘技”を探る 篠原勝之著
・空手超バカ一代  石井和義著

このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1
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