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フリーソロ クライミング 死を恐れないアレックスオノルドは侍だ! [クライミング]

ALONE ON THE WALL アローン・オン・ザ・ウォール 単独登攀者、アレックス・オノルドの軌跡

以前、フリーソロで紹介した、アレックス・オノルド(Alex Honold)の本です。

「フリーソロ」というのは、通常のクライミングで使用する安全確保用のロープを使用しないクライミングです。クライミングシューズを履いて、チョークバックを腰に付けただけで登るシンプルなクライミングです。

ただし、手や足が滑ったり、腕がパンプしたりしてミスすると落ちます。オノルドが行っているクライミングは、数百mの高さでのクライミングですので、

落ちる = 死

を意味します。
実際に過去にフリーソロを行っていた人たちの多くの人たちが亡くなっています。

技術的な話だけでなく、足が攣ったり、眩暈がしただけでもアウトだと思います。私は、通常は4mくらいの高さのボルダリングしかしていません。(これでも一番上まで登ると結構怖いです 笑)
しかも、下には厚いスポンジのクッションがありますので、普通に落ちる分には、全然大丈夫です。自分が登れるグレードよりも2段階くらい低いグレードの課題であれば、落ちることはまず考えませんし、実際落ちません。しかし、その下のクッションが無くて、その下が100mの崖であったとしたらどうでしょうか? おそらく、怖くて手も足も動かなくなると思います。

つまり、通常では鼻歌を歌いながら難なく登れるグレードの課題でも「失敗したら死ぬ」という状況では、まったく違うレベルの課題に変わるという事です。実際に、クライミングの難易度ではオノルドよりも難しい課題を登るクライマーはたくさんいると思いますが、その人達がオノルドと同じようなフリーソロを出来るかと言うと別問題です。

この本で、私が一番知りたかったのは、「オノルドは死ぬのが怖くないのか?」ということです。
彼自身は、「恐怖心が無いわけではない」、「人と同じように恐怖心はある」と書いていますが、私が読んだ感じでは、やはり少し普通の人とレベルが違うようです。
ハーフドーム北西壁レギュラールートの高さ300m地点で、ぼくはまたもや袋小路に入っていた。(中略) 不安はまだ真の恐怖にまでは達していなかったが、ともすれば、そちらに気持ちをもっていかれそうになった。ぼくは意識を集中し、深く息を吸い込んで、取るべき道を整理した。
高さ300mのクライミング中に、登っているルートが分からなくなったら、通常はパニックに陥るはずですが、冷静に状況を判断しています。これが彼独自の能力だと思います。

私はオノルドの本を読んで、宮本武蔵の逸話を思い出しました。武蔵が剣の修行で重要な事は何かと問われた時に、普段であれば普通に歩く事ができる畳の縁を城の屋根くらいの高さであっても同様に歩けることだ、と言ったそうです。常に平常心を持つことが重要である、ということですね。
剣道の全国大会で優勝するような達人でも、真剣を持った相手と戦う時に同じような心理状態で戦えるかというと普通はできないと思います。(違っていたらすいません)
新撰組の近藤勇は道場ではそれほど強く無かったけれど、真剣を持った切り合いでは強かったと言われています。この辺りが胆力の違いという事でしょうか。

その意味で、オノルドは侍のマインドを持っているということになりますね。(^^)

2017年6月5日、そのオノルドが、とうとうエルキャピタンをフリーソロで登ることに成功したというニュースが流れてきました。東京タワー3本分よりも高い1,000mのエルキャピタンを4時間弱でフリーソロで登ったというのですから、これは驚くしかありません。

東京タワーに長~い梯子を垂直に立てて、その梯子を安全確保なしで、登る事を想像してみて下さい。かなりゾクゾクっとしますよね?(笑) オノルドが登ったのは、その3倍の高さですよ! しかも梯子のようにきちんと足を掛けたり、握れるようなものはほとんど無いのです。
アレックス・オノルド、エルキャピタン・Freeriderをフリーソロ

いつかはやるであろうと思われていた、アレックスオノルドによるエル・キャピタンのフリーソロがついに成された。ルートは誰もが予想した通りFreerider(5.12d)。サラテのヘッドウォール(5.13c)を迂回するラインだ。オノルドは6月3日 の 5時32分に取り付き、 3時間 56分後の 9時28分に完登している。 最難ピッチが、グレード的にはすでにソロで登っているCosmic Debris(5.13b)より低いとはいえ、1,000m強、37ピッチのフリーソロは驚愕以外のなにものでもない。もちろん世界初の快挙となる。
トミー・コールドウェルは「フリーソロにおける、月面着陸」と評価している。(後略)
CLIMIBING-net 2017年6月5日より

オノルドの凄さが一番分かるのは、以前紹介したこの動画ですね。これは、メキシコのエル・センドロ(5.12d)で約500mですから、エルキャピタンの半分くらいの高さです。

この動画の(045/1:35)から見て下さい。
まずは、左手を見て下さい。壁の割れ目に親指と人差し指を入れています。右手を見ると壁を押しているだけですから、オノルドを支えているのは、左手の二本の指だけです。しかも、右手で岩を掴んで左手を離す時の映像を見る限り簡単に外れているので、単に支えているだけのように見えます。足でしっかり支えているということなのでしょうが、見て分かるように足を支えるような明確な突起はありません。5.12というのはこれくらい難易度の高い課題であるということをご理解下さい。しかし、この高さで手や足をクロスさせるというのは、私の想像を超えたスゴイ事です。

さて、最後に本の中で面白いと思った内容の紹介です。

①なぜ、オノルドはフリーソロを始めたのか?
⇒ 通常のクライミングは、ロープを使って安全確保を行うペアと一緒に行いますが、オノルドにはそのペアがいなかった。ペアがいない場合、通常はその岩場にい来ている人にペアになってもらうように頼みますが、オノルドはシャイなので他の人に話しかけられなかったから一人で登るようになったそうです。(^^)

②ヨセミテなどのビッグウォールを登った後は、裸足で歩いて帰る
⇒ 壁を登る時は、クライミングシューズを使って登ります。しかし、クライミングシューズは足の裏との一体感を重視するため足の指を折り曲げて履くため非常にキツイサイズのものを使用します。そのため、通常はクライミングをしない時に脱がないと足が痛くなります。3、4時間履きっぱなしでビッグウォールを登った後、さらにクライミングシューズを履いて降りる事はできないという事でしょう。
それにしても、人のできない快挙を成し遂げた後に、裸足で山をテクテク降りるというのは、少し笑えますね。
「世界の果てまでイッテQ!」などのTV番組であれば、山頂まで登れば後はヘリコプターで下山です。しかし、実際の登山では登頂後に「下山する」という重要で地道な作業が必要なのです。

クライミングに興味がある方にはお勧めの一冊です。

このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1
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