SSブログ

ソニーは再起できるのか? ソニー 失われた20年 内側から見た無能と希望 原田節雄著 を読む [ビジネス]

ソニー 失われた20年 内側から見た無能と希望
この本は、ソニーの凋落に関する本です。
以前、 このブログで立石 泰則氏の「さよなら!僕らのソニー 」を紹介しました。(http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2012-02-25) 立石氏は、外部から見たソニーを書いていますが、この本は社内から見たソニーの凋落に関して書いてものです。


著者の原田節雄氏は、1947年生まれ、1970年からソニーに勤務し、欧州の事業所に駐在し、帰国後、人事本部、商品戦略本部、法務・渉外部門、コーポレート・テクノロジー部門などに勤務し、技術渉外室統括室長などを勤め、2010年12月にソニーを退社したとのことです。主に国際標準の世界で活躍された方のようです。
この本で批判の対象となる出井元社長は、1937年生まれで1960年ソニー入社ですから、原田氏は出井氏の10年後輩に当たることになります。

さて、前年に4,566億円という膨大な赤字を出したソニーですが、4月から平井一夫氏が社長となって立て直しを図っています。その平井体制に関して、原田氏は徹底的に批判しています。原田氏がこの本を書いた理由を「はじめに」から引用してみます。
ソニーという会社を浄化し、復活への道を切り開くこと ― それはソニーで働く現社員とソニーを卒業した元社員、それにソニーを愛する株主の手でしか実現できないことです。腐敗、癒着、縁故の三語をソニーの経営から排除して、消費者に夢を与え続けてきたソニースピリットを再生させませんか

サルは、パイロットにはなれません。飛行機のコクピットの操縦席に、サルを座らせてはいけません。飛んでいる飛行機が落ちてしまいます。ペンは剣よりも強し、と言います。本書の意図するところが多数の読者に素直に理解され、それがソニー株式会社の自由闊達なる遺伝子の再生に役立つことを心から願います。(下線は引用者が付けました)
外からはクリーンなイメージのあるソニー社内には「腐敗、癒着、縁故」が経営にはびこっている、そして平井氏の今後の改革は...というように読めますね。多くの取締役の中から若い平井氏が選ばれましたが、その抜擢の理由が不明確(理由にならない)だと指摘します。
それでは、平井の大抜擢の表向きの理由を考えてみましょう。(中略)その理由として、液晶テレビ事業の構造改革案の策定を主導し、英ソニー・エリクソンの完全子会社を成功させたとしています。

しかし、結果が問われない、構造改革案の策定なら誰にでもできます。また、ソニー・エリクソンの完全子会社化には、ビジネスの見込みがないと判断して、エリクソン自体が手放そうとした携帯電話ビジネスをソニーが引き継いで、ソニーモバイルコミニュケーションズとして発足したものです。(中略)
2011年の平井の業績からして、2012年3月の取締役会の指名委員会では、その社長就任が否定されて当然のように思えます。しかし、平井は社長に指名されました。

それでは、なぜ平井氏が大抜擢されたかですが、これがこの本の一番のポイントなのですが、それはソニーを立て直すために最適な人物だからではないのです。
これら一連の動きから想像できる大抜擢の理由は、平井の若さを理由にストリンガー自身が、ソニーの要職に留まり高額の報酬を受け取り続けること、また英語で意志疎通できる日本人の平井に自分が不案内なソニーの主要事業の責任を丸投げすること、この二つです。

ただし、これはストリンガー氏だけが悪いのではなく、その前の社長である、出井伸之時代に作られた悪しき構造だとのことです。
ソニーの社長は、井深大-盛田昭夫-岩間和夫-大賀典雄-出井伸之-安藤国威-中鉢良治-ハワード・ストリンガー-平井一夫 と変遷しています。ここで、大賀氏までが「創業者社長の時代」であり、出井氏以降がいわゆる「サラリーマン社長の時代」と言われます。大賀氏から引き継いだ出井氏が社長になった後、さまざまな改革を行い、自分の地位を確実にするとともに、社長や役員たちの報酬額を増やしていったそうです。
社長時代と会長時代の出井伸之の報酬は、まったく公表されていません。節度を知る盛田に倣い、数千万円だといわれていた出井の前任者・大賀典雄の報酬に比べて、公表された課税額から推測してそれが5億円ぐらいだと噂されています。
この本に各社の役員報酬の平均が書かれていますので紹介します。平均でこの額ですからスゴイ額ですね。(2009年度)
ソニー 2億8,986万円
日産自動車 2億6,210万円
トヨタ 1億2,200万円
住友不動産 1億1,233万円
シャープ 9,570万円
三菱電機 8,795万円
ヤフー 6,300万円

私個人としては、社長や役員などは会社の経営責任を負っている訳ですから、儲かっている時は高い報酬をもらって当然だと思います。ただし、会社が赤字の時には報酬ゼロとは言いませんが、経営責任をとって大幅な減額があってしかるべきだと思います。しかし、日本の会社では会社が赤字でも1億円以上の高額な報酬を貰っている経営者が多いのが現状です。ソニーもそのような会社の一つのようです。

ただし、1995年に出井氏が大賀氏からソニーの社長の座を引き継いだ時、ソニーは2兆円にも及ぶ借金があったことは有名な話です。出井氏はその借金返済のために苦労したことは事実でしょう。しかし、この本を読むと出井氏が現在のソニーの凋落の一番の戦犯であることが分かります。
出井氏は、2003年のソニーショック後の2005年に退陣してストリンガーに後を引き継ぎますが、現在でもなおソニーのアドバイザリーボード議長の地位を確保しています。このように、出井氏以降は、自分が社長や会長を引退した後も、傀儡として影響力を行使できるような人材を社長に選んできたということです。
つまり、仕事のできる有能な人たちではなく、自分の言うことを聞くような人たちを周りにおいてきたとのことです。これでは、今後もソニーの復活はありえないように思えます。
井深と盛田の時代が「ソニーの成長期」です。彼らは常に現場に顔を出しました。そうして彼ら自身が、仕事ができそうな人を見つけて、その仕事ができそうな人に仕事を任せて、仕事の結果を自分で確認していました。大賀の時代が「ソニーの停滞期」です。彼は仕事ができる人を徐々に自分の周囲から排除していきました。しかし、彼の周りには、井深や盛田が選んだ、仕事のできる人がたくさん働いていたのです。つまり、トップの大賀ではなくて、その下の人たちが仕事をしていました。
出井とストリンガーの時代が「ソニーの衰退期」です。彼らはほとんど現場に顔を出しませんでした。やがて彼らの周りから、井深や盛田が選んだ、仕事のできる人がいなくなりました。そうして、彼らの周りには、彼らが選んだ、仕事ができない人ばかりが集まるようになったのです。

本書は、原文が英語で書かれていたこともありかなり厳しい表現で書かれていますが、その奥には原田氏のソニーに対する深い愛情を感じます。ソニーに愛着を感じている私としても、何としても現状を打破して、栄光のソニーの復活を期待します。

ブログランキングに参加しています。記事が気にいったらクリックをお願いします。
人気ブログランキングへ

国際ビジネス勝利の方程式 「標準化」と「知財」が御社を救う (朝日新書)
世界市場を制覇する国際標準化戦略―二十一世紀のビジネススタンダードユビキタス時代に勝つソニー型ビジネスモデル (B&Tブックス)目からウロコの英語とタイプの常識

nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。