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専門家の言うことを鵜呑みにするな! 専門家はウソをつく 勝間和代著 を読む [ビジネス]


専門家はウソをつく (小学館新書)専門家はウソをつく(小学館新書)


← 新書版とKindle版です。

最近はKindle本が多かった勝間和代さんの最新刊です。


この本のテーマは、「「専門家」を疑おう」ということです。
いろいろな事柄に関して、
専門家とはいえ、間違うことはある。
相手の言っていることの信頼性はどのくらいだろう
というクリティカルシンキングが重要だということです。要は、専門家と言えども、常に正しいことを言っているわけではないということですね。勝間さんは、何人かのコーチにゴルフのレッスンを受けていろいろと考えることがあったようですが、私も同じような経験をしたことがあります。

私はビヨン・ボルグ(ウィンブルドン5連覇)に憧れて1983年からテニスをやり始めました。(ウィークエンドプレーヤーですが) その当時は、ボルグの影響でトップスピンショットとバックハンドの両手打ちが流行っていましたので、私もそのプレースタイルを目指していました。しかし、どうやって打てば良いのかを教えてくれる本もスクールもほとんどありませんでした。(Webなど無い時代ですから...) なぜかと言うと、テニスのコーチ達が現役だった頃は、フラットショットとバックハンドは片手打ちのスライスショットが主流だったので、彼ら自身がトップスピンも両手打ちもやったことがないからです。そんなコーチ達が正しいショットの打ち方を教えられるわけがありません。
つまり、専門のコーチでも、よほど勉強家でなければ、自分がやったことが無いことは教えられないということだと思います。恐らく、現在の野球のコーチでもイチローの打法を教えられる人は数少ないと思います。

ということは、過去の自分の勉強や経験が生かせない分野は、専門家と言えども必死に勉強しなければ、正しいことを言えないということになります。つまり、勝間さんの指摘するように、経済や医療などリアルタイムで状況が変化するような分野は特にそのような傾向が強くなると思います。
バブル崩壊後のゼロ金利政策、デフレスパイラル、超円高などなど、日本の経済学者たちが過去に経験したことのない日本の経済状況に関して、どれだけ正しい指針やアドバイスをすることができるのでしょうか?
まずは、眉にツバを付けて話を聞くというのが正しい姿勢ということになります。

勝間さんのコメントを良く噛みしめて読みましょう。
しかし、そういった専門知識がメディアを通したり、書籍になった瞬間に
「真実」のように語られ、そして、それを信じてしまう人が多すぎること
すべての専門家が信用できるわけではないし、
また、信用できる専門家でもすべての発言が信用できるわけではない。
これも重要ですね。私たちはある分野で信用できる人の発言は、その他の分野の事に関しても信用してしまう傾向がありますよね。これも注意が必要です。

勝間さんが習ったゴルフのコーチの言葉です。うんちくのある言葉だと思います。
「登山を志して、高尾山に100回登る訓練をしても、
エベレストに登ることはできない」
テニスで言うと、「毎週草トーナメントに出場しても、ウィンブルドンで優勝することはできない」ということでしょうね。求められるスキルとレベルがまったく違うということだと思います。

勝間さんが考える「信頼性の高い専門家を見抜くための9か条は、
第1条 詳しくない分野は、複数の詳しい人、およびネットに必ず当ること
第2条 専門家の実績を「経歴」だけでなく「エビデンス」「信頼できる他者評価」で把握すること
第3条 専門家のアドバイスの裏をとる癖をつけること
第4条 過剰な自信を持っている「専門家」は警戒すること
第5条 自分の専門分野から、言われていることを類推する癖をつけること
第6条 PDCAサイクルをしっかり回している相手であり、過度に「根性論」「鍛練論」に終始しないか、気をつけること
第7条 相手の専門性に「市場性」があるかどうかを確かめること
第8条 どんな専門分野でも、少なくとも3人の専門家にアプローチせよ
第9条 誰を信じるかは、最後は自己責任、それが失敗しても、学びとすること

この中で一番共感したのが、第4条です。私の好きな美術品の世界は、故意に造った贋作も含めて真贋入り乱れた非常にアヤシイ世界で、ほとんど科学的な判断が難しい分野だと思います。(絵具や陶磁器の分析はできても、本人が亡くなってからその作品を作家本人が作ったことを証明することは、まずできません)
それにもかかわらず、「乾山がこんな作品を作るわけがない」とか「こんな画を佐伯祐三が描くわけがない」などと妙に自信をもって断定する人たちが多くいます。こんな発言を見ると「あんた、本人に会ったことあるのか?」とつっこみを入れたくなります。一番身近にいる妻や子供たちでさえ、自分の知らないことがあるのに、会ったことのない作家に関して確信を持てる客観的な証拠などあるはずがない、と私は考えます。
(実際には、ここまではある程度確からしいので真作としましょうという業界の合意に基づいて真贋の判断は決めていますが、それと本当の真贋はイコールではないという意味です)

とにかく、「専門家を疑え」というスタンスには大いに共感します。
多くの人に読んで欲しい一冊です。

このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1
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「有名人になる」ということ (ディスカヴァー携書)勝間和代のインディペンデントな生き方 実践ガイド (ディスカヴァー携書 022)勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法やせる! (光文社新書)決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルールまじめの罠 (光文社新書)断る力 (文春新書)

ソニーは再起できるのか? ソニー 失われた20年 内側から見た無能と希望 原田節雄著 を読む [ビジネス]

ソニー 失われた20年 内側から見た無能と希望
この本は、ソニーの凋落に関する本です。
以前、 このブログで立石 泰則氏の「さよなら!僕らのソニー 」を紹介しました。(http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2012-02-25) 立石氏は、外部から見たソニーを書いていますが、この本は社内から見たソニーの凋落に関して書いてものです。


著者の原田節雄氏は、1947年生まれ、1970年からソニーに勤務し、欧州の事業所に駐在し、帰国後、人事本部、商品戦略本部、法務・渉外部門、コーポレート・テクノロジー部門などに勤務し、技術渉外室統括室長などを勤め、2010年12月にソニーを退社したとのことです。主に国際標準の世界で活躍された方のようです。
この本で批判の対象となる出井元社長は、1937年生まれで1960年ソニー入社ですから、原田氏は出井氏の10年後輩に当たることになります。

さて、前年に4,566億円という膨大な赤字を出したソニーですが、4月から平井一夫氏が社長となって立て直しを図っています。その平井体制に関して、原田氏は徹底的に批判しています。原田氏がこの本を書いた理由を「はじめに」から引用してみます。
ソニーという会社を浄化し、復活への道を切り開くこと ― それはソニーで働く現社員とソニーを卒業した元社員、それにソニーを愛する株主の手でしか実現できないことです。腐敗、癒着、縁故の三語をソニーの経営から排除して、消費者に夢を与え続けてきたソニースピリットを再生させませんか

サルは、パイロットにはなれません。飛行機のコクピットの操縦席に、サルを座らせてはいけません。飛んでいる飛行機が落ちてしまいます。ペンは剣よりも強し、と言います。本書の意図するところが多数の読者に素直に理解され、それがソニー株式会社の自由闊達なる遺伝子の再生に役立つことを心から願います。(下線は引用者が付けました)
外からはクリーンなイメージのあるソニー社内には「腐敗、癒着、縁故」が経営にはびこっている、そして平井氏の今後の改革は...というように読めますね。多くの取締役の中から若い平井氏が選ばれましたが、その抜擢の理由が不明確(理由にならない)だと指摘します。
それでは、平井の大抜擢の表向きの理由を考えてみましょう。(中略)その理由として、液晶テレビ事業の構造改革案の策定を主導し、英ソニー・エリクソンの完全子会社を成功させたとしています。

しかし、結果が問われない、構造改革案の策定なら誰にでもできます。また、ソニー・エリクソンの完全子会社化には、ビジネスの見込みがないと判断して、エリクソン自体が手放そうとした携帯電話ビジネスをソニーが引き継いで、ソニーモバイルコミニュケーションズとして発足したものです。(中略)
2011年の平井の業績からして、2012年3月の取締役会の指名委員会では、その社長就任が否定されて当然のように思えます。しかし、平井は社長に指名されました。

それでは、なぜ平井氏が大抜擢されたかですが、これがこの本の一番のポイントなのですが、それはソニーを立て直すために最適な人物だからではないのです。
これら一連の動きから想像できる大抜擢の理由は、平井の若さを理由にストリンガー自身が、ソニーの要職に留まり高額の報酬を受け取り続けること、また英語で意志疎通できる日本人の平井に自分が不案内なソニーの主要事業の責任を丸投げすること、この二つです。

ただし、これはストリンガー氏だけが悪いのではなく、その前の社長である、出井伸之時代に作られた悪しき構造だとのことです。
ソニーの社長は、井深大-盛田昭夫-岩間和夫-大賀典雄-出井伸之-安藤国威-中鉢良治-ハワード・ストリンガー-平井一夫 と変遷しています。ここで、大賀氏までが「創業者社長の時代」であり、出井氏以降がいわゆる「サラリーマン社長の時代」と言われます。大賀氏から引き継いだ出井氏が社長になった後、さまざまな改革を行い、自分の地位を確実にするとともに、社長や役員たちの報酬額を増やしていったそうです。
社長時代と会長時代の出井伸之の報酬は、まったく公表されていません。節度を知る盛田に倣い、数千万円だといわれていた出井の前任者・大賀典雄の報酬に比べて、公表された課税額から推測してそれが5億円ぐらいだと噂されています。
この本に各社の役員報酬の平均が書かれていますので紹介します。平均でこの額ですからスゴイ額ですね。(2009年度)
ソニー 2億8,986万円
日産自動車 2億6,210万円
トヨタ 1億2,200万円
住友不動産 1億1,233万円
シャープ 9,570万円
三菱電機 8,795万円
ヤフー 6,300万円

私個人としては、社長や役員などは会社の経営責任を負っている訳ですから、儲かっている時は高い報酬をもらって当然だと思います。ただし、会社が赤字の時には報酬ゼロとは言いませんが、経営責任をとって大幅な減額があってしかるべきだと思います。しかし、日本の会社では会社が赤字でも1億円以上の高額な報酬を貰っている経営者が多いのが現状です。ソニーもそのような会社の一つのようです。

ただし、1995年に出井氏が大賀氏からソニーの社長の座を引き継いだ時、ソニーは2兆円にも及ぶ借金があったことは有名な話です。出井氏はその借金返済のために苦労したことは事実でしょう。しかし、この本を読むと出井氏が現在のソニーの凋落の一番の戦犯であることが分かります。
出井氏は、2003年のソニーショック後の2005年に退陣してストリンガーに後を引き継ぎますが、現在でもなおソニーのアドバイザリーボード議長の地位を確保しています。このように、出井氏以降は、自分が社長や会長を引退した後も、傀儡として影響力を行使できるような人材を社長に選んできたということです。
つまり、仕事のできる有能な人たちではなく、自分の言うことを聞くような人たちを周りにおいてきたとのことです。これでは、今後もソニーの復活はありえないように思えます。
井深と盛田の時代が「ソニーの成長期」です。彼らは常に現場に顔を出しました。そうして彼ら自身が、仕事ができそうな人を見つけて、その仕事ができそうな人に仕事を任せて、仕事の結果を自分で確認していました。大賀の時代が「ソニーの停滞期」です。彼は仕事ができる人を徐々に自分の周囲から排除していきました。しかし、彼の周りには、井深や盛田が選んだ、仕事のできる人がたくさん働いていたのです。つまり、トップの大賀ではなくて、その下の人たちが仕事をしていました。
出井とストリンガーの時代が「ソニーの衰退期」です。彼らはほとんど現場に顔を出しませんでした。やがて彼らの周りから、井深や盛田が選んだ、仕事のできる人がいなくなりました。そうして、彼らの周りには、彼らが選んだ、仕事ができない人ばかりが集まるようになったのです。

本書は、原文が英語で書かれていたこともありかなり厳しい表現で書かれていますが、その奥には原田氏のソニーに対する深い愛情を感じます。ソニーに愛着を感じている私としても、何としても現状を打破して、栄光のソニーの復活を期待します。

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国際ビジネス勝利の方程式 「標準化」と「知財」が御社を救う (朝日新書)
世界市場を制覇する国際標準化戦略―二十一世紀のビジネススタンダードユビキタス時代に勝つソニー型ビジネスモデル (B&Tブックス)目からウロコの英語とタイプの常識

オリンパスはどこへ行く? サムライと愚か者暗闘 オリンパス事件 山口義正著を読む [ビジネス]

サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件
マスコミ的には昨年の10月に社長のウッドフォード氏が解任された事で注目を集めたオリンパスの巨額損失の穴埋めのための不可解な企業買収ですが、この事件を2年前から追い続けてきた山口義正氏の力作です。そして、英国人であるウッドフォード氏のジョンブル魂に火を付けたのが、この山口氏の記事だったのです。


始まりは、山口氏とオリンパスに勤める深町氏(仮名)との何気ない会話でした。
2009年8月
「ウチの会社、バカなことをやっているんだ・・・」
深町の言葉に何か意を決したような響きがある。後ろを歩いていた私は無言で「?」と、次を促した。
「売上高が二億~三億しかない会社を、三百億円近くも出して買ってんだ。今は売り上げも小さいけど、将来大きな利益を生むようになるからって。バカだろ?」(中略)
「いくらなんでも、そんな話はありえないだろ。何かよほどの成長分野を見つけて買ったんじゃないのか?」(中略)
「でもウチの本業とは関係ない会社なんだ。しかも営業赤字でさ」

この会話から始まったオリンパス事件に関して、この本に書かれている内容をまとめてみました。
2009年8月 オリンパスに勤める友人からオリンパスの不可解な会社買収(買収額は700億円で翌年に損失処理されている)の話を聞く。
2011年2月 友人の持っている資料をすべて渡される。資料はすべて重ねると電話帳一冊分の分量があった。
2011年4月 菊川社長が会長となり、英国人のマイケル・ウッドフォードが社長となる。
2011年6月中旬 山口氏、記事を書くべく雑誌を選定し、月刊誌のファクタを選ぶ。
2011年7月20日 オリンパスの記事を掲載したファクタ8月号が発売になるが、株価は前日比50円高で、記事に対しては無反応。山口氏は「週刊東洋経済」、「アエラ」に企画書を送るが、無視される。
2011年7月31日 山口氏、ウッドフォード社長にファクタ8月号の記事を英訳して見せる
2011年8月2日 ウッドフォード社長と菊川と財務担当の森久志副社長と三人でランチミーティング。ファクタの記事に関して質問をする。菊川は、「君は日本のことがわかっていない。何も心配はいらない。タブロイド誌独特のセンセーション好きなジャーナリズムだ。君は忙しい。この件について気にすることはない」とのコメント。
2011年9月20日 山口氏、ファクタ10月号で買収資金の流出先をテーマに第二弾を書く。
2011年9月29日 ウッドフォードと菊川・森の三者で会談。10月1日付けでウッドフォード氏が人事提案権のあるCEOをj引き継ぎ、菊川氏がCEOをはずれ、取締役会長のみとなることで合意した。
2011年10月11日 ウッドフォード、菊川に完全な退陣を求める書簡を送る。
2011年10月14日 臨時取締役会でウッドフォードが社長、CEOから解任される。「組織の意思決定プロセスを無視した独断専行的な経営判断で組織間の連携を損なった。」「日本の文化的風土に配慮を欠き社員からもこのままでは働けないとの声が上がった」と菊川会長のコメント。
2011年10月17日 ウッドフォードは、英国に帰国し、ファイナンシャル・タイムズやウォールストリート・ジャーナルの取材に応じ、英国の重大不正捜査局(SFO)にオリンパスの企業買収に不正な支出があったことを通報した。欧州ではオリンパス問題が加熱して各国、連日トップニュースとなる。
2011年10月20日 山口氏、現代ビジネスにオリンパス問題を執筆する。
2011年10月26日 社長兼会長の菊川が退陣し、菊川の子飼いの部下である高山修一が新社長となる。新宿京王プラザホテルで記者会見を開くが、ファクタは出席を断られた。
2011年10月30日 英ファイナンシャル・タイムズに野田首相のインタビューが掲載される。「今回の騒動はルールに従う市場経済国として日本の評価を貶める恐れがある」と懸念を表明。
2011年11月8日 格付投資情報センターがオリンパスの発行体格付をAからBBBプラスに引き下げる。12月14日に最もj低いBBBマイナスに格下げとなる。 週刊朝日に企業買収は投資の隠し損失を穴埋めすることが目的であると出し抜かれる。この日、高山新社長が過去の有価証券投資での損失隠しを認めた。

結局この事件は、バブル崩壊後に多大な損失を出したオリンパスが、それを取り戻すためにハイリスク・ハイリターン商品などに手を出し、2003年で1,177億円に上る損失を企業買収を隠れ蓑として補てんしていたというものです。
デジタルカメラの老舗として、医療用の内視鏡やICレコーダーなどで70%以上のシェアを誇るオリンパスが、どうして1,200億円程度の額(会社の規模に対して)でこんな不正を働いていたのでしょう。本業で頑張れば何とかできる額ではないのでしょうか?
状況は違うにしても、ソニーは大賀社長から出井社長に交代する時に1兆5,000億円にのぼる借金があったそうですが、マスコミ的には隠していたもののきちんと社外にも公開していました。

私はTVや新聞でのオリンパス報道でこの事件を知りましたが、社長であるウッドフォード氏が解任されたことを知り、何やらおかしな雰囲気を感じていました。この事件を2年も前から地道に調査を続け、最終的にはオリンパス問題を公開して認めさせた山口氏の執念というか意気込みには頭が下がります。

問題の一つはオリンパスの上層部が会社を私物化していたということのようです。菊川氏は10月26日に社長と会長を退任させられた後、1か月以上経っても社長室を占領していたそうです。また、コンプライアンスのTopに菊川氏がいて内部告発などがあった場合、自分の所に情報が集まるようになっていたそうです。(ほとんどの会社がコンプライアンスのTopは社長でしょうから、Topの不正を監視する別の仕組みが必要だということですね)
さらに、事件が報道された後も、資料毎に印の位置を変えたり、文面を微妙に変えるなどの工作を行って情報の流出経路を調べていたことも書かれています。

もう一つのポイントは、このオリンパス問題に対する大手マスコミの無反応です。山口氏が月刊氏のファクタから記事を出しましたが、他のマスコミは何の反応も無かったそうです。また、「週刊東洋経済」、「アエラ」に企画書を送ったそうですが、完全に無視されたそうです。
ウッドフォード氏が解任直後に「恐ろしかったのは、オリンパスの疑惑をファクタが報じた後も日本国内の主要なメディアは何も報じようとしなかったことだ」と述懐している。
一体これは何なのでしょうね? 現在のマスコミには、その重要な役割である政府や企業の不正を監視する、という機能はほとんどないと言っていいのでしょう。
東電の原発事故の時もそうだったですが、企業から多くの広告収入を得ているマスコミがお金をもらっている会社に対して不利になるような記事は書けないということなのでしょう。

最後に、英国人である元社長、CEOだったウッドフォード氏の言葉を最後に紹介します。
日本人はなぜサムライとイディオット(愚か者)がこうも極端に分かれてしまうのか
見の危険も顧みずに不正を追究しようとするサムライもいれば、遵法精神に欠け不正を働いたり、何の疑問も持たずにこれを幇助したりするイディオットもいる。

今回の事件に興味ある方にはお勧めの一冊です。

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解任 (ハヤカワ・ノンフィクション)オリンパスの闇と闘い続けて


なぜサムスンは強いのか? サムスン式 仕事の流儀 5年で一流社員になる ムン・ヒョンジ著を読む [ビジネス]


サムスン式 仕事の流儀 5年で一流社員になる
2012年3月期の決算で、パナソニック 7,721億円の赤字、ソニー 4,566億円の赤字、シャープ3,760億円の赤字と日本のトップ企業の業績の悪化には驚きました。
一方、韓国のサムスンは、2012年1~3月の4半期だけで、4,200億円の営業利益を稼ぎだし、スマートフォンもアップルを抜いてトップシェアとなりました。どの分野においてもトップシェアを目指し、それを実現できるサムスンの秘密はなんなのでしょうか?

それに対する回答がこの本にあるように思いました。
著者のムン・ヒョンジン氏は、30歳そこそこで2006年前後にサムスンSDIのグループ長として働いていたとのことです。
サムスンSDIは、グループ全体の系列社中でもで仕事の過酷さにおいては1,2を争い、殺気立っていた。チーム社員40人のうち、20人が入れ替わってしまうことまであった。理由はただ一つ。サムスンSDIの仕事のやり方に耐えられないからだ

しかし、この本にそれほど目新しいことが書かれている訳ではありません。
その内容は以下のようなもので、日本のTop企業で働いている優秀な社員であればみんなやっていることが書かれています。しかし、それをすべての社員に要求しているということがポイントなのだと思いました。
例えば、「出張報告書」は帰りの飛行機の中で書き終えろ、というのは日本企業でも優秀で意欲のある社員であればみんなやっていると思いますが、それを社内の常識としている日本企業は少ないように思います。また、残業に関しては、最近の日本企業は「効率よく仕事をして残業を減らしましょう」という「ゆとり教育」のような風潮が多いと思いますが、サムスンでは残業が多いのは当たり前、いやなら転職しろという徹底ぶりです。

考えてみれば分かることですが、同じ能力の社員がいた場合、定時で帰る社員と遅くまで残業している社員ではどちらが多くの仕事を「早く」こなすことができるでしょうか?
多くの残業をすると仕事の効率は落ちるかも知れませんが、その分だけ時間をかけてそれ以上の成果を出すことができるのは当然だと思います。知的で、クリエイティブな仕事には労働時間は関係ないと主張する方もいると思いますが、そのようなクリエイティブな仕事が自分の仕事の中でどの程度の割合を占めているでしょうか? その割合が非常に多ければ、この論理は成り立ちませんが、ほとんどの人はその割合はそれほど高くないはずです。
そして、家に帰っても常に仕事のことを考えていれば、それだけ問題に対する思考も深まるはずです。日本は労働時間が長いと批判している欧米でも本当のエリート社員は、自宅でも仕事をするようなハードワーカーが多いと聞いています。
最近の日本企業の凋落はこの辺りに原因があるという考え方は穿った見方でしょうか?
その意味で、バブル期までの昭和時代の日本のモーレツ社員が揃っているのがサムスンなのでは? と思いました。

まず、サムスンが一番重視している「仕事のスピードアップ」に関してです。
●時間を制する者が、成果と利益を制する
現在サムスンが見せている「最高の成果」には、他者よりもスピーディーに仕事を進めてきたという背景がある。
時間を制する者が成果を利益を制し、時間を先取りする会社がビジネスの勘所を押さえ、市場をリードすることができるのだ。サムスンでは仕事のスピードアップのために、退社前にその日の報告事項を整理して上司にメールで送る。夜、役員がメールを開き、考え判断する時間ができることで、業務は「進行中」の状態となる。
サムスンの報告のルールでもっとも重要な1つが、「即座に」というものだ。リアルタイムの報告には、状況を掌握する力がある。決裁を行う上司もやはり速いスピードで動く必要がある。
「出張報告書」は帰りの飛行機で書き終えろ!飛行機から降りたら報告書が読めるようにしておく。これがサムスンの常識だ。
●報告書は、自分の顔であり人格である
・優れた報告書に必要な三つの視点「過去―現在―未来」の視点のフレームを用いること。
・「解決策」のない報告をしてはならない。報告は、解決策のあるアクションでなければならない。
● サムスンは会議は多い
・会議は「仕事の設計図」である。
・議事録が作成されたら、必ず出席者にもう一度「公開」されるべき。会議終了と同時に議事録がメールで送信されるのがベストな方法
●サムスンは残業が多い
「残業」に対する立場と行動を決定せよ
・ 残業が多いのは会社がダイナミックに動いている証拠であもあり、あるいは停滞期を抜け出そうと全力を尽くしているときでもある。どうしても残業に耐えられないというのであれば、思いきって転職することも必要だ
●デスクの整理整頓を徹底する
・デスクの状態は、頭の中の状態と同じである。

先日、たまたまサムスンの人たちと仕事をして 飲む機会があったので、この本を紹介しました。「出張報告書」は帰りの飛行機で書き終えろというのは本当か?と確認したところ、「本当だ」と言っていました。今回の出張報告も帰りの飛行機で書いたのでしょうね。

ちょっと面白いと思ったのが、以下の内容です。
ワイシャツの一番上のボタンを外してはならない
・個人イメージが企業イメージを左右する ⇒ かなり厳格なドレスコードを設けている
基本的にランニングは必ず着用。女性がブラウスの下にブラジャーを着けないのと変わらない。女性の場合もタイトすぎる服やミニスカート、派手なアクセサリーは避ける。
血も涙もないきつい上司がいたとしても、これは”ハード・トレーニング”なのだと受け止めよう
・上司への対応の鉄則 ⇒ こちらの望みどおりにしてくれる上司は、どこにもいない。

次も興味深い内容です。現在の日本の大企業で、そこまで社員に言う企業ははないと思います。
●社長のように忠誠を尽くして仕事をせよ
・社長のように仕事をするということは、「最高の仕事力」を身につけること。
・社長の気持ちになって仕事をすると仕事への態度そのものが明確に変わってくる。
サムスンですら、社員を判断するときもっとも高く買っているのが「忠誠心」なのだ
● 「いつでも辞表をだせばいい」と考える人を、会社が幹部に昇進させるわけがない
・仕事に対して責任感があるからそこ「率先垂範」を示すことができ、会社に対する責任感も証明してくれる。

ある知財関連の講習会で日本のTop企業の方が韓国企業の強さは、「徴兵制があるから」だと言っていましたが、一理あるかも知れません。Topが方針を立てて、Topが右と言えば文句を言わずに右に行くような風土は軍隊での訓練が一番だと思います。
いずれにしてもサムスンには、昭和の時代に日本企業が持っていたダイナミズムを感じるのは確かです。

大前研一氏は、日本企業は、欧米企業からは学ぶ姿勢はあるが、感情的な面から中国・韓国などのアジアの企業からは学ぼうとしないと書いています。現在、これだけサムスンに差を付けられた日本のメーカーには、学ぶべきところは学ぶという姿勢で奮起を期待したいところです。

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サムスンの決定はなぜ世界一速いのか (角川oneテーマ21)サムスンの戦略的マネジメント (PHPビジネス新書)サムスンの真実ソニー、パナソニックが束になってもかなわない サムスンの最強マネジメントおそるべし韓国企業 日本がサムスンに勝てない理由 (扶桑社新書)危機の経営 ~ サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション


AKBをプロデュース? 技術で勝る日本がなぜ事業で負けるのか 妹尾堅一郎著を読む [ビジネス]


技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由
少し前に出された妹尾先生の技術経営に関する有名な本です。

妹尾先生のプロフィールです。
慶応大学経済学部卒業 ⇒ 富士写真フイルム入社 ⇒ 産能大経営情報学部助教授 ⇒ 英国国立ランカスタ- 大学経営大学院博士課程満期退学(^^) ⇒ 慶應義塾大学助教授・知的資産センター副所長を経て、東京大学特任教授(知的資産経営総括寄付講座、東大イノベーションマネジメントスクール実施責任者)、一橋大学大学院MBAなどの客員教授を歴任されています。

私は10年ほど前に六本木ヒルズで行われた短期セミナーで教えを受け、それ以来、先生の活動には注目して見ていました。先生には「アキバをプロデュース」という本があったため、ちょっと前まで「AKB48」は妹尾先生がプロデュースしているのだと信じていました。(笑) いいえ、今でも秋元康氏を裏で操っているのは妹尾先生では? と疑っています。
それくらいやりそうだな、と思えるほど斬新な発想と行動力そして、業界人の雰囲気を持っています。(^^)

妹尾先生がこの本で言っていることを簡単にまとめてみましょう。
・日本の産業競争力は崩壊間近ではないか? ⇒ DRAM、LCD,DVDプレーヤーカーナビなど、当初日本がシェアの大部分を占めていた産業で、グローバル市場で大量普及が始まると日本のシェアは急激に落ちている。
・日本は科学技術大国だが、科学技術立国になっていない
①技術で勝っても事業で負ける。
②技術で勝って、知財権をとっても事業で負ける。
③技術で勝って、国際標準をとっても事業で負ける。
・生産性の向上だけで競争力を評価してはいけない。
①インプルーブだけでなくイノベーションが重要。
②従来モデルの磨きあげか、新規モデルへの移行か?
・日本企業は発展(Development)ではなく、成長(Growth)を目指している。
⇒ インプルーブはできるが、イノベーションは生まれない。
⇒ 海外メーカーにビジネスモデルを変えられて負け続けている。
そして、そんな一人負けの日本企業を置き去りにして業績を上げているのが、欧米の企業です。
妹尾先生は、その中でインテルに注目しています。
・なぜインテルだけ一人勝ちか?
⇒ インテルは2009年1~3月期で640億円の黒字。
①ルネサス、NECエレが2010年4月に合併するが、1,500億円の赤字。
②東芝は2009年3月で2,800億円の赤字。
③エルピーダも1,800億円の赤字。
④特許の数ではNEC、東芝それぞれ2,000件所有しているが、インテルは320件しか取っていない
ではどうしてインテルは一人勝ちできているのでしょうか?
・インテルは、PCを完成品主導から基幹部品(MPU)主導に変えることで主導権を握った。 (「インテルインサイド」モデル)
①MPUとOSが主役となりPCは脇役となった
・急所技術の開発による基幹部品化
⇒ 外部機能とつなぐPCIバスのブラックボックス化、 外部とのI/Fはプロトコルを国際規格化
⇒ 周辺、関連部品メーカーは標準規格による製品開発を実施
・基幹部品を組み込んだ「中間システム」の生産(基幹部品を中間部材を形成するレシピ付きで販売する)
⇒ マザーボードのノウハウを台湾メーカーに提供することで 安価な台湾メーカー製マザーボードが大量に出回る
・国際イノベーション協働によるディフュージョンの分業化
⇒ 部品から完成品までを自社だけで垂直統合していた企業が勝つのではなく、そのプロセスを分担した連合軍が勝つ構造
⇒ ディフュージョンプロセスは台湾メーカーなどに任せるが、ビジネスの要所は欧米諸国が押さえる
②インテグラル型製品だったPCをMPUを起点としてモジュラー型製品に変えた
⇒ 従来のインテグラル型の製品を最初から最後まで自前で開発する日本企業を打ち負かす「勝利の方程式」
⇒ 知らない間にビジネスモデルを変えられていた。
90年の前半、日本ではNECのPC98が圧倒的なシェア(ほとんど独占)を獲得していました。
でも、秋葉原のショップではより高性能な台湾製のIBMコンパチのPCが安く売られていました。Windows3.0の登場で日本語処理の問題もなくなったため、PC98である必要がなくなりNECのシェアはどんどん落ちていきました。
当時の私は、なぜ最新のテクノロジーであるPCが台湾製なのかわからなかったのですが、インテルの戦略通りだったのですね。このインテルの戦略のおかげで最新のCPUやハードディスク、メモリなどがモジュール化されたため、言葉は悪いですが「女子供でも」PCを簡単に自作できるようになりました。
ここには日本が得意な職人技の擦り合わせ技術が全く不要になったのです

そして先生は「技術がビジネスで勝つための必要かつ十分条件ではなくなった」例として、完成品主導型である「アップルアウトサイド」モデルを提唱しています。
確かに、アップルのipodを見ると、日本製の部品をたくさん使っていますし、使用している技術も既存の技術にすぎないと思えますよね。
でも、アップルは他のメーカーにはできないような「モノとサービスの連携、部品をつなぐインターフェースの技術には徹底的に知恵を絞る」ということをやったのです。

そして先生の主張するポイントです。
研究開発戦略、知財戦略、事業戦略の三位一体の経営戦略
⇒ 製品のアーキテクチャーの工夫と急所技術の見極め
⇒ どの技術を権利化してどこを秘匿するか、どこを標準化して仲間作りを行うか
⇒ 市場拡大と収益確保を同時に達成するためのビジネスモデルの構築

技術が秀でているのなら、それを活かす知恵を絞りなさい。技術が劣っているのなら、それをカバーする知恵を絞りなさい
・知財マネジメント=特許を取ることではない
⇒ あえて権利化しないでノウハウを秘匿することも重要
・特許出願=技術開示 ⇒ 中国、台湾、韓国などに技術が漏出
・国際標準の重要性を認識していない日本の経営者が多い
国際標準に関しては、確かに欧米の企業は主力メンバーをアサインしていますが、日本の企業は一部を除いて、どちらかと言えば、手の空いている人がアサインされていることが多い(多かった)と思います。

先生が良く出される言葉です。

三流の企業は製品を作り、二流の企業は技術を開発し、一流の企業は標準を作る

標準は、スポーツで言うと一番重要なルールです。サッカーで「手を使っても良い」というルールに変更すれば、全く違うスポーツになってしまいますよね。
これは欧米の人達は、昔から得意な分野です。F1でホンダが勝ち続ければ、自分たちが有利になるようにレギュレーションを変える。スキーのジャンプのV字で日本人が勝ち続けると自分たちが有利になるようにルールを変える。複合で荻原健司が勝ち続けると同じようにルールを変える。
ビジネスの世界でも80年代~90年代にかけて日本企業に負けていた欧米のメーカーたちは、日本の「ものづくり」技術には敵わないため、必死に戦略を練って自分たちが勝てるような国際標準を作り、ビジネスモデルを変えていったのです。

私たちは、そのようなことを昔からやり続けてきた人達とビジネスで戦っているのです。

私たちも真剣に長期的な視野で戦略的に戦うことが必須ですね。
そのためには、必読の書だと思います。

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アキバをプロデュース 再開発プロジェクト5年間の軌跡 (アスキー新書 035)考える力をつけるための「読む」技術―情報の解読と解釈知的情報の読み方社会と知的財産 (放送大学教材)グリッド時代 技術が起こすサービス革新

スティーブ・ジョブズは本当に神か? 成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈 成毛眞著 を読む [ビジネス]


成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈2011年にApple社の創業者であるスティーブ・ジョブズが亡くなりました。彼の亡くなった後、ジョブズに関する多く本が出され、彼のカリスマ性を讃えました。
特に2011年10月24日に発売されたジョブズの伝記「スティーブ・ジョブズ」は、Ⅰ、Ⅱ巻合わせて100万部を突破したと報道されています。
「日本からスティーブ・ジョブズは現れるか?」、「ジョブズを見習え!」というような主張が多い中で、ジョブズが倒すべき相手と名指ししていたマイクロソフトの日本法人の社長であった成毛眞氏が当事者からみたジョブズを書いています。
ジョブズは、本当に多くのメディアが謳ったような”神”なのか。事実、伝記には全編にわたって、読む人が全く理解不能な、不規則な動きで暴れまわる子どものようなジョブズの記録が描き出されているだけである。彼は本当に現代が求める神の姿なのであろうか?
そもそも、優秀な大人が多い日本人が、ジョブズのような子どもをもてはやすのが私には信じられない。日本は世界に誇れる、素晴らしい大人たちの国である。勤勉で、真面目で、和を重んじ、親切だ。そしてそれが、国民全体に美徳として共用されている。この素晴らしさが世界からどんな評価を得ているかは、ちょっと旅行してもらえば分かることだ。なぜこんな大人の国が、ジョブズという一人の子どもに夢中になったのか。

成毛氏は、ジョブズの本質を次の一文で的確に表現しています。
ジョブズが生涯を通して言ってきたことはたった一つ「ほら、こんな面白いものを作ったよ! みんな見て! いっしょに遊ぼうよ!」である。

成毛氏は、「ジョブズの伝説はフィクションである」と断言します。そして、創造的な人間になろうとしてジョブズの生き方を真似ようとしている人たちは、自ら創造性を放棄していることになると言います。
ジョブズの伝記を読む
⇒ 100万人の同じ考えの人たちの仲間に入る
⇒ 自分の競合を100万人増やしているだけ

①ジョブズはアイドルである。フィクションとしての自分を演じている。
②ジョブズのサクセスストーリーは、アップル製品を買わせるためのブランディング戦略である
⇒ ジョブズは「優れたセールスマン」である。
③ジョブズはビル・ゲイツ=マイクロソフトを敵だと喧伝したが、マイクロソフトは相手にもしていなかった
⇒ アップルは単なる業界の最下層のヒエラルキーに属するハードウエアメーカーである。
④ジョブズは天才ではない
⇒ 天才とは発想に飛躍があること。ジョブズは半歩先の未来を作っただけ。

③について説明すると、業界構造の中ヒエラルキーは以下のようなものだそうです。
(いちばん偉い)
1.ソフトウエアのOSを作っている製作者(マイクロソフトなど技術者やカンパニー)
2.OSを作るための言語などのツールの製作者
3.データベースやサーバープロダクト、ネットワークプロダクト製作者
4.一般ユーザーが使うアプリケーションを作っている製作者
5.ハードウエアメーカー(アップルなど)
(一番偉くない)

アップルの属するハードウエアメーカーには、DellやHPなどたくさんのメーカーがしのぎを削っており、アップルの代わりになるメーカーはたくさんありますが、OSを作っているマイクロソフトの代わりになるメーカーはいないということがそのヒエラルキーを決めていると言って良いと思います
そして、そのヒエラルキーの最下層であるアップルのジョブズが、最上層であるマイクロソフトのビル・ゲイツに噛みつき、敵対関係をユーザーに対してアピールしていたということになります。
このヒエラルキーは業界の客観的通念なので、格下のハードウエアベンダーである若かりし頃のジョブズがマイクロソフトを敵視してギャーギャー言ったところで、OSを作っている最上位に位置する最大手ソフトウエアメーカーのマイクロソフトからすれば「一対何を言っているんだろう?」という感じになって当然である。(中略)
「アップルはOSも作っているじゃないか」という話がでてくるが、そもそも自分たちの製品のためにしか作っていない時点でソフトウエアとして格が下がるし、今でこそきちんと動いているが、アップルⅡだのMachintosh SE/30 だのが出てきた70~80年代当時のMac OSはバグだらけでとてもビジネスでは使えない代物だった。
「使い用のないものを作って大声で騒ぎ立てて、何が楽しいんだろうね」といった具合で、それがさらに業界内でのシカト感を加速させていた。

そして、みなさんご存じのWindowsはMacのパクりである! というジョブズの主張に関してです。
しかし、知っている人は知っていますが、Macにしてもゼロックスのパロアルト研究所でアラン・ケイが中心となって1973年に開発したAltoというマシンのGUIをパクってマッキントッシュができたのです。今、私たちがPCを使う時にマウスを使ってアイコンをクリックすることですべての操作ができるのも、このアラン・ケイのおかげなのです。MS DOSをいじっていたような人は実感として分かると思いますが、GUIがない時代は直接コマンドをキーボードで入力してマシンを動かすことしかできませんでした。
さらにジョブズは「WindowsはMacのパクりである」として訴訟を起こしました。ビル・ゲイツを始めとしてマイクロソフトの社員は緊張して対戦モードに入ったかと思いきや、
ビルから平社員まで全社一致で「正気か!?」と思い、さらに「本気でバカなんじゃないのか?」と噴き出していたのだ。
もとネタが同じOSを作っている会社同士が戦うのである。どう考えても時間のムダだ。一応「マジっすか?」という旨はアップル側に伝えたというが、反応なし。やる気満々である
ところが、この訴訟は、証言にたったアラン・ケイの一言で一瞬にして終わったそうです。(笑)
バカ言ってんじゃない。お前らが作る10年も前に私はGUIを作って出している。だけど私はこれを未来のために公開情報にしているわけだから、どんどん使って進歩させてくれればいい。こんなバカげた裁判起こすんじゃない。」
完封負けである。ジョブズは起訴を取り下げ、マイクロソフト社内は爆笑に包まれた。本当にこちらが恥ずかしくなるような裁判であった。

確かにジョブズ関連の本を読むと、契約があるにもかかわらず一方的にその変更を迫ったり、必要な経費の支払いを拒否して罵声を浴びせかける、など通常のビジネスでは考えられないことがたくさん書かれています。結果的にAppleが大成功を成し遂げたのでポジティブに受け取られるかも知れませんが、失敗していたら「とんでもないヤツ!」という評価になっていたように思います。

この本はマイクロソフトにいた成毛氏だからこそ書けた内容が満載です。
ジョブズにあやかってたくさんの本が出され、ジョブズ礼讃の記事が踊っている今こそ読んで欲しい一冊です。
ジョブズ信者、Mac信者およびそれらに洗脳されている人たちには必読の書と言えます。


【蛇足】
私は1997年ころアップル社と共同でとある製品を開発していました。アップル本社に出張の直前に、アップルのCEOがギル・アメリオからスティーブ・ジョブズに変わったという報道がされました。この仕事はどうなるのか?と思いつつサンノゼに旅立ちました。
当時一緒に仕事をしていたアップルのメンバーは、中国系、韓国系の人が多かったですが、彼らから「ジョブズは気に入らないとすぐにfire 解雇 する」、「気に入らないビジネスはすぐに中止する」などの話を聞いていましたが、懸念の通り私たちのビジネスは中止となってしまいました。
発売されていれば、少なからず業界にインパクトを与えられたと思いますので、今でも本当に残念です。「ジョブズめ、覚えていろ!」 と思いました。本当に。(^^)
サンタクララかクパティーノだったか忘れましたが、本社にも行きましたが、これが会社?と本当にビックリしました。米国のTVドラマによく出てくる大学キャンパスのように解放的で本当に素晴らしい環境でした。こんな環境で仕事をしたいものだと切に思ったものでした。
アップルストアでApple Tシャツやロゴ入りボールペンなど会社へのお土産を沢山買い物できたのが、この出張の一番の収穫でした。(笑)

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大人げない大人になれ!日本人の9割に英語はいらない就活に「日経」はいらない成毛眞の超訳・君主論 (メディアファクトリー新書)本は10冊同時に読め!―本を読まない人はサルである!生き方に差がつく「超並列」読書術 (知的生きかた文庫)実践! 多読術  本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)図解 仕事力が身につく必読の「古典」50冊

ソニースピリットはどこに行った? さよなら! 僕のソニー 立石泰則 著 を読む [ビジネス]


さよなら!僕らのソニー (文春新書)今では平気で製品の安売りをして、他社と同じような製品を出しているソニーですが、私たちの世代は、少なからず「ソニー神話」、「ソニー信仰」の影響を受けています。
ちょっと高くて値下げしないけど、性能やデザインがいいソニー製品、秋葉原でも買えないソニー製品をあこがれを持って見ていました。

しかし、今のソニーにはそのようなブランド力はないようです。なぜそうなってしまったのか、ということを著者の視線から書いたのが、この本です。
ソニーに関しては、これ以前にも本社の経営企画部からの視点で書かれた、竹内 慎司氏の「ソニー本社六階」やVAIOの開発現場の視点で書かれた宮崎琢磨氏の「技術空洞」などが書かれていますが、今回紹介する立石氏の本はあくまでも外からみたソニーが書かれています。

ソニー本社六階
私たちはソニーの製品を見て「ソニースピリット」を感じていましたが、その「ソニースピリット」に関して元副社長だった大曾根氏は、次のように語ります。
あえて言うなら、私は『ソニースピリットは、井深さんの無理難題の産物だ』と言いたい。だって、井深さんに無理難題を強いられながら、必死になってやっと完成させて発売したら、お客さんは『まさにソニースピリットを体現したような商品だ』なんて言うでしょう。
創業者の井深氏、盛田氏がいなくなった現在、そのソニースピリットはあるのでしょうか?

技術空洞 Lost Technical Capabilities (光文社ペーパーバックス)
Apple社の故スティーブ・ジョブズは、ipodやiphoneの製品開発に深くかかわり、とても無理と思えるような短い開発期間で開発をさせ、「電源SWはいらない」、「ユーザーに3回以上ボタンを押させるな」など設計者に対して細かい要求を出していました。そして、どうしてもできないという設計者に対しては、
状況は分かった、でも僕のためにもう一度トライしてくれないか」と言って、実現させてきたと言われています。このようにAppleの製品には細部にこだわるジョブズの精神が込められていると言ってよいでしょう。これはソニー信者でもあったジョブズがすでにソニーにはなくなってしまった「ソニースピリット」を継承していたように思えます。

さて、ソニーと言えば「ウォークマン」ですが、その開発にも物語があります。
創業者の盛田昭夫氏が役員会でウォークマンの商品化を発表したとき、ほとんどの役員が「テープレコーダー(録音機)は売れても、テーププレーヤー(再生専用機)は売れません」と言って猛反対している。(中略)
ウォークマンのアイデアは、もともと井深大氏が海外出張のさい、飛行機の中でステレオ音楽を聴きたいとソニーの技術陣に求めたことから生まれたものだ。(中略)
案の定、ウォークマンの広告宣伝を担当する社員は二人しかおらず、広告宣伝費も与えられなかった。(中略)その河野氏は、当時を振り返り、盛田氏が問わず語りに話した言葉がいまも忘れられないという。
河野君、マーケット・クリエーション(市場を作ること)というのは、マーケット・エデュケーション(市場を教育すること)のことなんだ
現在のソニーにはこのような考えが継承されているのでしょうか?

私は約25年前、まだまだ「ソニースピリット」のある製品を出していたソニーの某工場に3カ月ほどかよったことがあります。(ソニー社員ではありません)「ソニー信仰」を持っていた私ですが、技術者の目で見ると当時でさえ、最先端の技術開発をやっていた訳ではないと感じていました。例えば、当時の技術トレンドとして映像信号処理技術がアナログからデジタルに切り替わる時期でしたが、その技術に対して積極的に取り組んでいたのは、ソニーではなく松下電器(パナソニック)の方で、先を越されていた印象がありました。
しかし、デザイン、小型化技術や製品としての完成度や魅力はソニーの製品の方が圧倒的にありました。私は、ソニーの工場に行ってその理由が分かったような気がします。とにかく、工場にいる技術者のレベルが高いのです。回路の設計などは本社や工場の設計者が行っていますが、工場ではその技術者たちが設計図を書き直したり、回路基板を書きなおして生産効率があがるような工夫を行っていました。当時のソニー製品の完成度の高さは、このような強い「現場力」にあったのだと痛感しました。

しかし、このように強かったソニーの工場の現場力は、大賀時代の後に続く、出井時代、ストリンガー時代となり、どんどん無くなっていったように思います。自社の独自技術の開発や製造を軽視し、ネットやコンテンツを重視してきたソニーに復活の道はあるのでしょうか?
2月2日に次期社長兼CEOへの就任が発表された平井氏は、テレビ事業の立て直しを表明していますが、今の状況を打開できるのでしょうか?
この本を読むと、ソニーがなぜ今のようになってしまったのかが見えてきます。この本に書かれていることがすべて正しいとは言えないと思いますが、少なくともソニーに関して興味ある人には必ず読んで欲しいと思う本です。また、上にあげた「ソニー本社6F」、「技術空洞」もお勧めの本です。

ソニーは、井深大氏と盛田昭夫氏が昭和21年に創業した東京通信工業が母体です。そのさいに井深氏が書きあげた会社設立趣意書は有名です。
会社設立の目的
一、真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設(以下略)
とにかく、ソニーには井深氏のこの「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」の精神を忘れずに、私たちをワクワクさせるような製品を出して欲しいと思います。

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ソニー インサイド ストーリーフェリカの真実 ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由ヤマダ電機の暴走松下幸之助の昭和史 (ノンフィクション・シリーズ“人間”)覇者の誤算―日米コンピュータ戦争の40年 (講談社文庫)ソニー最後の異端―近藤哲二郎とA3研究所 (講談社文庫 た 64-4)ソニーと松下〈上〉企業カルチャーの創造 (講談社プラスアルファ文庫)


「犬の道」に入りこむな! イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」 安宅和人著 を読む [ビジネス]


イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

知的生産に関する本です。
著者は大前研一氏や勝間和代氏で有名なマッキンゼー出身の安宅和人氏です。



安宅氏は、以下のように変わった経歴の持ち主です。

大学院で脳神経の研究 ⇒ マッキンゼーで4年半年働く(マーケティングが専門)
⇒イェール大学で博士号を取得 ⇒ 9.11を機にマッキンゼーに復帰
⇒ヤフーに転職

大先輩である大前研一氏も日立製作所の原子炉の設計者からマッキンゼーに入っていますので、マッキンゼーという会社はそれまでのキャリアではなく、人間そのものを見るのかもしれませんね。

安宅氏は圧倒的に生産性の高い人は、ひとつのことをやるスピードが10倍、20倍速いわけではない、ということに気がつき、彼らは他の人と何が違うのか?
知的生産の本質って何だろう?

という問題意識持ち、考えて続け、「本当に優れた知的生産には共通の手法がある」という結論に達しました。

安宅氏は問います。「バリューのある仕事とは何か?

これは本質的で難しい問題ですね。
issue0.JPG安宅氏は、バリューは、「イシュー度」と「解の質」の2つの軸で成り立っており、それぞれが高い仕事がバリューの高い仕事だと述べます。
そしてバリューの高い仕事をするためのステップを考えます。
通常は「イシュー度」も「解の質」も低い左下から始まりますが、絶対やってはいけないのが、一心不乱に大量の仕事をして右上に行こうとする、左回りから右上に行こうとすることだそうです
安宅氏はこれを「犬の道」と呼んでいます。そして、この「犬の道」に入り込むと永遠に「バリューのある仕事」は生み出されないし、変化もおこすことができず、徒労感だけが残ります。
なぜ「けもの道」ではなく「犬の道」というのか分かりませんが、とにかく「イシュー度」の高い、本当の課題を見つけて、解の質を圧倒的に上げることが「バリューのある仕事」を行う正しい道だということです。
限られたリソース、マンパワーで結果を出すためには、きちんとした課題を選ぶのは必要なことです。考えると当たり前のことですが、実際にはなかなかそのようにできないのが実情です。

イシュー度:「問題かもしれない」と言われていることで本当に解決すべき問題は、2~3%しかない。その2~3%の問題をきちんと選択することが重要。
解の質 :当初の段階ではこれも2%くらいしか成果に結びつかない。
したがって、①と②がレベルの高い成果はこのかけ算で0.04~0.06%しか生まれない。

安宅氏は一般常識を捨てろ、と主張します。
・「問題を解く」より「問題を見極める」
・「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」
・「知れば知るほど知恵が湧く」より「知り過ぎるとバカになる」
・「1つのことを速くやる」より「やることを削る」
・「数字の桁数にこだわる」より「答えが出せるかにこだわる」


つまり「速読」や「仕事の効率化」などで仕事の処理スピードを上げるのではなく、まず「何をやるか」を最初に十分に考えて課題を明確にして、余計な仕事を止めることで時間を確保するということです。
確かにいくら仕事の処理スピードを上げても余計な仕事をしていたのではアウトプットに繋がらないことは明らかですね。

もう一つ重要なのが、「悩まない」、「悩む暇があれば考える」ということです。
悩む=答えが出ない、考える=答えが出る、であり答えの出ないことに時間を使わないということが重要です。

そして、良いイシューの3条件は、
①本質的な選択肢である
②深い仮説がある
③答えを出せる ⇒ 良いイシューは答えを出せなければならない


世の中に①と②を満たす課題はたくさんありますが、③のように答えを出せなければ良いイシューとは言えません。何か新しい手法が見つからなければ何十年取り組んでも解決できない課題は良いイシューとは言えない、ということです。

知的生産にかかわる方にはぜひ読んで欲しい一冊です。

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知的生産の技術 (岩波新書)仕事の成果が激変する 知的生産ワークアウト―あなたが逆転するための73のメニュープロの知的生産術 (PHPビジネス新書)達人に学ぶ「知的生産の技術」知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100頭がよくなる知的生産の技術「知的生産力」を上げる技術 (知的生きかた文庫)


速読なんて不要! 頭のいい人だけが知っているーお金を稼ぐ読書術ー33歳で3億円をつくったインプット・アウトプット法 午堂登記雄著 を読む [ビジネス]


ー頭のいい人だけが知っているーお金を稼ぐ読書術ー33歳で3億円をつくったインプット・アウトプット法ー米国公認会計士、33歳で3億円の資産を作った午堂氏の読書術に関する本です。氏は恐らく独学だと思われますが、読書法に関する主張のポイントが最近苫米地先生が書いているものと共通していて説得力があります。
お金を稼ぐ読書術 倍速版
(オーディオブックもお勧めです)

まず、午堂氏の経歴です。
僕はかつて、大学卒業後は就職もできずフリーターになり、はじめて就職した会計事務所でもわずか1年で追われるようにして辞めました。次に転職した流通の仕事で踏ん張り、やっとのことで外資戦略系コンサルティングファームに転職できました。ここまでは、よくある話かもしれません。
その後、本書で述べる本の読み方をするようになってからは、自分の価値観が大きく変わり、行動が変わりました。その結果、投資で資産3億円を築くまでになり、独立起業を果たし、出版までも実現し、僕の世界は激変したのです。

午堂氏は読書を通して学び投資を行い資産を築いたとのことです。しかも、氏が本格的に読書を始めたのは30歳になってからというかなりの遅咲きです。それにも関らず、1年たらずで資産3億円をかせいだとは素晴らしいですね。
私も本をよく読む方だとは思いますが、見習いたいですね。(^^)
午堂氏の読書に関する考え方は、次のように明確です。
僕は、読書とは、自分の人生を発展させるための、「自己投資」だと考えています。つまり投資というからには、リターンを期待した行為であり、そのリターンは何かというと、「お金を稼ぐ力」です。(中略)経済価値に変換できない読書は、他人に貢献できていないということであり、単なる趣味にすぎないと僕は考えているからです

午堂氏は「お金を稼ぐ」=「お客様に喜んでもらえることをする」と定義していますので、お金を稼げないということはお客に貢献できていないということ。つまりお金に変えられない読書は単なる自己満足だと書いています。
これは、身につまされます。自分を振り返ると確かに自己満足の世界で楽しんでいるだけですね。(‐‐;
そして、午堂氏は成功するためにはたくさん本を読む必要がある、そのためにビジネスマンは速読を身につけなければならないという風潮に反論をします。
「成功するためには、速読して、たくさん本を読まなきゃいけない」
・・・・ほんとう? (中略)
でも、気にすることはありません。速読できなくても、多読できなくても大丈夫です。なぜかというと、ちょっと考えてみてください。

なぜ本の数ほど成功者が出てこないのか?

世の中には、たくさんのビジネス自己啓発本、成功法則本、投資指南本があふれています。その中には、成功のためのエッセンス、お金持ちになるためのエッセンスがぎっしり詰まっています。つまり、「教材」は世の中に掃いて捨てるほどたくさんある。 ならば成功する人がもっと増えていいはず。しかし周りを見て、実際に成功している人はどれくらいいるでしょうか?

その通りですね。私の周りにもたくさん本を読んでいる人は多いですが、成功はしていないですね。(笑)
私もこれからは速読は必須だと思ってセミナーに通ったりしましたが、反省させられました。
これに関しては、苫米地先生も「速読は意味がない」と同じようなことをコメントしています。
最近、はやっている「目的」と「キーワード」を意識した速読法は、午堂氏もコンサルタント業務の時に利用するそうです。しかし、これは読書ではなく、たんなる「リサーチ作業」という「作業」でしかないと言います。その先にある「考える」という行為を行うことで付加価値が出せて、「実行」することで変革が起こせる、ということです。

「作業」をいくらたくさんやっても、物知りにはなれても、仕事の能力が高まるわけではない

「目的」と「キーワード」を意識した速読法に関しては、苫米地先生も「スコトーマ速読」だと言っています。つまり、「目的」と「キーワード」を意識しながら読むと、それ以外がスコトーマ(心理的盲点)になって見えなくなってしまうため、その方法で何十冊、何百冊読んでもそれ以外のことは得られないということです。

さて、先の「読書は投資」という午堂氏の主張ですが、「読書はお金だけではなく、自分自身をみがく、スキルを身につける、情報を得る」などのいろいろな目的があるのでは?
という疑問がわくと思いますが...
本書はビジネス書です。多忙なビジネスパーソンにとって、ビジネス書を読むということは、貴重なお金と時間を投下する行為ですから、いわゆる「投資」です。
だから、つねに「求めるリターンは何か?」を意識する必要があります。(中略)本書では、最終的に「稼ぎ力を高める」ために読もう、と提案しています。(中略)
仮に今、あなたが宝くじで100億円当たったとします。現金で100億円あれば、1年に1億円ずつ使っても、100年間は生きられる。金利1%の定期預金に預けていても、年間1億円の利息収入になります。(中略)つまり、年間2億円、月にして1500万円以上使ってもへっちゃらな状態ができるわけです。
想像してみてください。
そういう状態になって、メモ術や整理術などのビジネス書を読むでしょうか?
読む必要なんてないですよね。なぜなら、日々起こる問題のほとんどはお金で解決できるからです。

午堂氏は、本当にたとえ話がうまいと思います。上記の話もとても説得力がありますね。
私たちが、「自分自身をみがきたい」、「スキルを身につけたい」、「情報を得たい」と思う根底には、「仕事のスキルを上げたい」⇒「上司や同僚に認められたい」⇒「昇進したい」⇒「年収を上げたい」という思いがあると思います。
確かに、自分が100億円持っていれば、現在の仕事に関して自分のスキルを上げたいと思わないですよね。自分のスキルを上げるということは、結局は「良い従業員」になることです。それだったら、5億円ぐらい使って自分で会社を起こして、優秀な社員を雇えば良いだけです。また、自分で勉強して弁護士や同時通訳になるよりも、年収5000万円くらい出して専属の弁護士や通訳を雇えばいいだけの話になります。

速読が必要ないとなると、どうやって読書をすればよいのでしょうか...
たくさん本を読むことが大切なのではなく、「読んだ本の中から、どれだけ深く考え、どれだけたくさん実践したか」が最も重要です。
「読んでおもしろかった」「ためになった」「新しい情報があった」で満足してしまうと、学んだことを練習せずに、あるいは、ちょっとやっただけで、すぐ次の新しいことを学ぼうとします。これでは身に付くはずがありません。身に付いていないものは、他人に役に立てるはずもありません。それではお金はもらえないし、現実が変わるはずがありません。

午堂氏は、本を読むだけではだめだと言います。本を読んで、自分で考えて、実践してみる。それで自分の行動が変わると主張します。
読書時間:1に対して、考える時間:5、実践する時間:10 を目安にすべきだと書いています。
自分はどうかと振り返ると、読書時間:10に対して、考える時間:5、実践する時間:1 ですね。(笑)

なるほど、これではいくら読書しても、考え方も行動も自分の将来も変わるわけがありませんね。
特に私は、英語を上達しようと思って、たくさん本を読んでいますが、実際に使っている時間が...。これはサッカーやテニスの本をいくら速読して読んでも、練習時間が少なければ上達するわけがないことを考えればよくわかります。

その他にも、午堂氏が実践している細かい読書の方法がいろいろと書かれていて、非常に参考になる本です。

読書術に興味のある方には、お勧めの一冊です!

午堂氏の他の本は、
・一生お金に困らない人生戦略 「お金の才能」
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33歳で資産3億円をつくった私の方法 お金の才能 脳を「見える化」する思考ノート お金がいままでの10倍速く貯まる法 30代で差をつける「人生戦略」ノート―最短・最速で結果を出す「頭と時間」の使い方


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一生お金に困らない人生戦略 「お金の才能」 午堂登記雄著 を読む [ビジネス]

最近、私がよく読んでいる米国公認会計士の午堂登記雄氏の著書です。

お金の才能
午堂氏は本人の書く所によると大学卒業後、会計会社に入社しますが、仕事ができなくて追われるように退社し、その後、コンビニエンスストアに入社し、働きながら米国公認会計士の資格を取得して独立起業し33歳で投資で3億円を稼ぐまでになったとのことです。
お金の才能 倍速版
(オーディオブックもお勧めです)

この本は、氏の経験によって得られたお金に関する知見を教えてくれます。その中には、一般に言われていることとは異なった主張も多く、とてもためになります。
たとえば、次の中で正しいのはどれでしょう?
「不況時は節約すべし」
「長期分散投資が確実」
「資産運用しないと老後は大変だ」
「初心者には投資信託が適している」
実はどれも間違っています。
その理由は本書で詳しく述べていますが、これらはどれも作られた常識でしかありません。

また、私たちがお金を貯めようとする時にまず考える、というかそれしか思いつかない「節約」に関してです。午堂氏は、節約することは簡単であるが、発想の貧困を招くと指摘します。
節約があなたの発想の貧困化を招く
節約志向の最大の問題点は、発想の貧困化を招くことです。
節約は簡単です。ただ単純にガマンして買わなければいいだけ。あるいは比較して、値段の安い方にスイッチすればいいだけ。(中略)
しかし、不況期に「いかに収入を増やすか」について真剣に取り組もうとする人は多くありません。なぜかというと、収入を増やすには、より深く考え、より徹底して行動しなければならないからです
これはとても面倒くさいことです。
確かに節約は創意工夫という側面もありますが、収入を増やすための創意工夫と比較したら、雲泥の差があります。(中略)
私たちは「株式会社ジブン」の代表取締役として、自分という商品の魅力と価値を、最大化する発想に切り変える必要があるのです。
これは、苫米地先生など多くの人が指摘していることですが、確かにその通りだと思います。リーマンショック後、多くの会社や家庭で商品の買い控え、出張、旅行を我慢しました。その結果どうなったでしょうか? 私たちは元気がなくなり、みみっちくなり、さらに各社の製造工場が生産を縮小し、航空会社などが大打撃を受けました。
経済は、お金の流れがなければ成り立ちません。どこかでお金が溜まり、滞ってしまうと経済が悪化してしまうことになるのです。私たちのすべきことは、節約ではなく「収入の増加」を考えることであるというのは、とても納得できます。

そして、私たち門外漢にとっては大ショックの話が続きます。
●儲かっていない人がアドバイスする不思議な世界
「投資コンサルタント」「ファイナンシャルプランナー」「経済評論家」「経済アナリスト」という人たちが、投資や資産運用の本を出し、セミナーを開催しています。
私もその一人です。
ここで問題なのは、貧乏なファイナンシャルプランナーや、自分で投資したことのない評論家が、不適切なアドバイスをすることです。(中略)
ゴルフをしたことのない人が「ゴルフ上達法」という本を書くことはありません。しかし、マネーの世界では、なぜか経験のない人や、投資で利益を出す技術のない人が、いろいろ解説しています
そして、誰もおかしいと思うことなく、そんな本が売れているという、摩訶不思議なことが起こっています。(中略)

ちなみに私はこれまでの著書でも書いている通り、家賃収入だけで暮らせる収入を得ています。その額は手取りにして年間約1200万円。
そして、株も、FXも、商品先物も、日経225先物もやっていますが、何千万円も勝ち、同時に何千万円も負けながら、差し引き平均して年間500万円程度の利益を上げています。
私の周りには、投資だけで生活しているプロとレーダーが何人かいます。リーマンショックさえも乗り切った凄腕のトレーダーもいましたが、その後の回復基調のマーケットでやられてしまい、それまでの利益を数日で飛ばしてしまったそうです。
本を何冊も出版している著名な投資家でさえ、10億円まで増やした資産が3カ月で3億に減ってしまったそうです。
私を含めて「短期間で儲かった」という人は大勢います。しかし「儲け続けている」とうい人にはほとんどお目にかかったことはありません。きっとそういう人もいるのでしょうが、相当のレアケースなのではないかと感じています。
評論家というものは、もともと自分のことは棚に上げて話をするものですが、それはスポーツとか世評などの分野だけにして欲しいものです。自分のなけなしのお金の投資に関して相談する相手がその資格がないというのは恐ろしい話です。
投資の世界はプロでも儲け続けるということは難しいようです。プロにも難しいことを素人にできる訳がありません。株で儲けたという話は、やはり「たまたま」ということのようです。

この本には以下のことが書かれています。お金に関して興味がある方には、お勧めの一冊です。
①お金を貯める才能
②情報を読み解きお金をコントロールする才能
③お金を上手に増やす才能
④お金をかしこく使う才能
⑤お金をたくさん稼ぐ才能


また、「お金儲けなんていやらしい」、「お金なんてきたない」と思っている人は、まずこのブログでも紹介しているW.D.ワトルズの本をお勧めします。
・幸せなお金持ちになる「確実な法則」 ウォレスD.ワトルズ 佐藤富雄監訳 は素晴らしい!(Ⅰ)
・幸せなお金持ちになる「確実な法則」 ウォレスD.ワトルズ 佐藤富雄監訳 は素晴らしい!(Ⅱ)

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『出稼げば大富豪』 クロイワ・ショウ 著を読む [ビジネス]

「大富豪」なんて、題名からしていかにもイガガワシイ本です。(笑)

出稼げば大富豪 (調子ぶっこきシリーズ)








オーディオブックは、こちらです。
出稼げば大富豪 倍速版

そう思いながら、本を開くと、
ガーン
ウオー
ドヒヤー

というように一文だけで1ページを使うような型破りな本です。ますますいかがわしい本です。(笑)
でもこの本、読んでみると内容がとても深いのです。

著者のクロイワ・ショウ氏は、1979年生まれ、近畿大工学部卒、奈良先端科学技術大博士課程在学中(当時)で、ベンチャー企業の社長です。クロイワ氏は、ビジネス書を読みまくって金になりそうなことは全てトライしたそうですが、前年の会社の売り上げは29万円(笑)だったそうです。その先行きに不安を感じていたクロイワ氏が出会ったのが、バリ島に住む中卒の大富豪、「兄貴」です。その大富豪に弟子入りした時の記録がこの本です。

この本とその続編の詳細に関しては、RONRONさんのブログに詳しいので、詳細をそちらをご覧になって下さい。
『出稼げば大富豪』 ~クロイワ・ショウ~

さて、この本で私が最も共感したのが、以下の株に関する内容です。
(以下、文字の大きさや色は原本を再現してみました)
兄貴は、椅子にドッカーンと腰をかけ、テレビを付けた。
番組は、NHKインターナショナル。
主婦のための株式投資入門講座みたいなコーナーが始まったところだった。
兄貴はタバコを吸いながら、それをボーっと眺めている。突然。
「アホや」
言い放った。
株式買う奴は全員アホや
しかし、兄貴、株式投資が近年大ブームですよ。
「あのなあ」
兄貴がグルリと振り向いた。
「おれに言わしたなら競馬と変わらんちゅうねん。馬券と一緒」
いや、でも、なんかいろんな理論があって、大儲けしている人もいるみたいですよ。
「たまたまや」
そう言って兄貴は、タバコの煙をプーっと空中に吹き上げた。
「ようするにな、結果を自分で采配できへんようなもんに金使うなちゅう話や。馬走り出したら、ジョッキー以外どうしようにもできへんやんけ。ジョッキー、たまたま下痢やったらどないすんの? ガハハハハハ・・・・」
兄貴は止まらない。
「他人の影響を過大に受ける。自分で結果を采配できない。証券会社にすらどうしようもできない。これって馬券と一緒ちゃうか?」
兄貴はまくしたてる。(中略)
「オールのないラフティングとおなじやがな」
で、でも、とぼくは食い下がる。ポートフォリオとか言って、複数の銘柄をうまくリスク分散すれば...
「それはなあ、おまえ。連勝複式の馬券と同じや。リスクヘッジに全然なってないで」

大きな声では言えませんが、私も株ではかなりの大損をしているので株に関しては思う事があります。私の場合、別に大儲けしようとしてベンチャー企業の株を買った訳ではなく日本の優良企業の3社の株を買った結果です。それでも、リーマンショックを含めて何度も株の暴落を経験して悲惨な思いをしました。
それにより、日本の優良企業の株は日本だけでなく海外の投資家が買っていますので、その企業の日々の新製品発表や企業の業績発表などよりも、US市場の株価の影響の方が圧倒的に大きいことも学びました。

考えてみると、株の仕組みは簡単です。「買い」が入れば株価は上がり、「売り」が入れば株価が下がる。それだけです。よく言われる株の大暴落ですが、みんなが「売り」に走るから株価が暴落するのです。ですから、その株を暴落する前に売ることができれば、高値で売り抜けることができて株価が暴落した後に、買い戻せば大儲けすることができるのです。私を含めて株を持っていた人は、リーマンショックで大暴落した株価を見て、「今、買っておけば大儲けだな~」と思っていたと思いますが、そういう人は資金はすでに株に投資しているので、買い足すことができないのです。(笑)
ま~あ、さすがにリーマンショックの時には、株価が本当に上がるのか?との疑問はありましたが...。

いずれにしても、株に関して確かなことは、「株価が暴落する前に高値で売り抜けている人たちが必ずいる」ということです。

株の世界は、世界的なトレーダーを含めたプロ集団と主婦など一般の人たちが同じ土俵で戦う稀有な市場です。どう考えても素人がプロに勝てる訳はありません。上記のような「株式投資入門講座」は、私の歪んだ視点から見ると株式市場に素人を送り込んで儲けようとしているとしか思えません。

そんな訳で、兄貴のいう株式買う奴は全員アホや には自戒を込めて共感します。(爆)

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出稼げば大富豪2 気づいた人は動きだした (調子ぶっこきシリーズ)


出稼げば大富豪 実践編 (調子ぶっこきシリーズ)


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論理的思考のバイブル 「ロジカル・シンキング」 論理的な思考と構成のスキル 照屋華子・岡田恵子著 を読む [ビジネス]

論理的な思考を鍛えたい、プレゼンの説得力を上げたいと思う人は多いと思います。そんな時の助けになるのがこの本で、マッキンゼー出身の照屋華子氏、岡田恵子氏という二人の女性が著書です。

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)








2001年初版で、私が買ったものは2009年11月に42版を重ねている大ベストセラーです。先日、会社で「ロジカル・シンキング」のセミナーを受けたのですが、その時の講師の方が、さらに勉強をするのであればこの本を使うのが良いと推薦していました。それくらいスゴイ本なのです。

第一章 相手に「伝える」ということで、の中でこう書きます。
すると、自分の言いたいこと、自分が重要だと考えていることを相手に理解してもらうためにはどうすればいいのだろうかと悩んでしまう。そして自分の言いたいことをうまくまとめるために、提案書や報告書を何度も書き直す、あるいは、言い回しやフォーマット、はたまたデザインや色使いなどに凝る、ということに走りがちだ。
実は、ここに相手に伝わらない最大の要因が潜んでいる。大事なことは「あなた」が言いたいことではない。「あなた」が大切だと思っていることでもない。それが、相手にとって、伝えられることが期待されている「メッセージ」になっているかどうかなのだ。
これは私も陥りがちな点だと思いました。自分の言いたいことをいかに伝えるかをメインで考え、相手の期待していることに関してはあまり考えたことがありませんでした。

そして、この本のメインは3章以降の、

MECE ― 話の重複・漏れ・ずれをなくす技術
So What?/Why So? ― 話の飛びをなくす技術

となります。MECEは、勝間和代氏の本で有名になりましたが、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive の頭文字をとったもので、ミーシーあるいはミッシーと読み、「漏れなく・ダブリなく」という意味です。何かを考える時に、適切な切り口で「漏れなく・ダブリなく」考える時の考え方です。
ビジネスの世界で良く言われる3C/4Cは、業界を市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)、チャネル(Channel)に分けて考えるもので、厳密な意味でのMECEではありませんが、一応全体を網羅したと考えようという約束事であるそうです。

そして、MECEに分けたデータを考察する時に使うのが、So What?/Why So? の考え方で、話の飛びをなくす重要な技術です。私も他の人の話を聞いていて、「現状は●●です。従って△△です。」という話を聞いて「?」と思うことがあります。なぜ●●から△△の結論が導かれるのかが見えないからです。
これを防ぐのが、So What?/Why So? です。●●という現状を見た時にSo What?(結局どういうことなのか?)と考えるのです。そして、So What?した時に出た答えである△△に対して、Why So?(なぜそのようなことが言えるのか?)と考えてみるのです。
そして、●●をSo What? した結果である△△をWhy So?と考えた時に、「●●だから」と言えることができれば、●●と△△に「話の飛びがない」と言えるわけです。

上記の全体をMECEに分けて、So What?/Why So? で論理構築するというのが、このロジカル・シンキングのポイントになります

このように、とてもためになる良い本なのですが、いくつか不満もあります。

【文体】
女性が著者の場合に多いのですが、「~だ」、「~である」という書き方が非常に気になります。どうして「です・ます」体の女性らしい文体で書かないのでしょうか? マッキンゼーの大先輩である、大前研一氏の本も「です・ます」体で書かれていますし、最近このような文体で書かれた本をあまり読んでいなかったため、私には変な気負いが感じられてしまいます。このような印象を受けるのは私だけなのでしょうか?

【おやじギャグ】
自分のことしか考えていない人たちのことを、「自分しか見えない病」とか「にわか読心術症候群」と書くのはまだ許容範囲ですが、
さすがに”課長・視野狭窄”と異名をとるB課長だけのことはある。
B課長の次に口を開いたのは段違い平行棒の名手と揶揄されるC氏だ。
というのを読んで、ちょっと白けるのは私だけでしょうか? これがマッキンゼー流のユーモアなのかも知れませんが(?)、私にはお寒い「おやじギャグ」としか思えません。内容が良いだけに、もう少し何とかならなかったのか、と残念に思いました。

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ロジカル・ライティング (BEST SOLUTION―LOGICAL COMMUNICATION SKILL TRAINING)



トンデモ本の「もどき本」か? 団塊世代のボヤきの書か? 「ビジネス書大バカ事典」勢古浩爾 を読む [ビジネス]

最近売れているビジネス書に関して、「もどき本」であると主張する本です。

ビジネス書大バカ事典








私はこの著者を全く知らなかったのですが、結構売れているようですね。
著者は1947年生まれで、ずっと会社勤めをしていた方のようです。この本では、最近出されている石井裕之氏や苫米地先生勝間和代氏、神田正典氏、本田健氏、本田直之氏などをボロくそに書いています。この方は、34年間の会社生活の中でビジネス書をほとんど読んでこなかったそうです。そんな人がこのような本を書いてよいのかどうかが疑問に思いましたが...。

まず、最近出されている上記の著者の本を「もどき本」だと断定します。
私がこの本を読んだ感想を一言でいうと、「ビジネス書に関して、会社で定年間際の先輩やOBと飲みに行った時に聞かされるような話をまとめた本」というものです。私はこの本を「と学会」のトンデモ本に関する本の一種かと思って買いましたが、全然レベルが低くて読んでいてバカらしくなりました。と学会のトンデモ本では、綿密な調査をベースに説得力のある(反論すべき点も多いですが…)論理を展開していますが、この本は勢古氏の独断で論を進めているので、全然説得力がありません。

どの本も「成功」を保証しているという点で、すべて「もどき本」と断じるしかないのである。(中略) 水野俊哉は、「成功本を読んでいるのに、なぜみんな貧乏なのか?」と自問し、その答えとしてこの本を書いたという。(中略) おなじように「成功本」がインチキだからである。インチキ本を読んで、「成功」するわけがないのである。
この意見には反対です。私は、「成功本」を読んでいるのに成功しない理由は、本の内容に問題があるものもあるでしょうが、本を読んだ通りに実行しないことが一番の原因だと考えます。サッカーの本を読んでも、その本に書かれたように練習しなければうまくなるわけはありません。英語の上達本を読んでも、その通りに勉強しなければ英語がうまくなるわけはありません。勢古氏はなぜ一足飛びに、「成功本」がインチキだからである、と断定できるのでしょうか?

私はビジネス書「もどき」の鍵概念である「成功」というフレームをまったく認めていないからである。(中略) むろん「成功」はあってもいいし、たしかに「成功者」は世に存在している。しかし「成功」など、どうでもいいのである。(中略)それに「成功」など、普通の人間にとっては人生の中心的目標にはなりえないものである。
勢古氏はこのように書きながら、以下のようにも書きます。

わたしは、大金があればなあ、と思ったことは、ある。(中略) 人はやはりパンのみに生きるにはあらずで、金はあくまでも人生の従属物であろう。主人公ではない。(中略) よくよく金に見放された人生である。まあ、こっちから見放したのが先だったから、いまさら泣き言を言っても始まらない。(中略) 静かな環境のなかに住み、日に三度の食事ができて、年に数度の旅行と、月に数度のそこそこの外食ができ、煙草代とコーヒー代と本代に困らない程度なら、それで申し分なはない。
何のことはない、勢古氏もお金は欲しいようです。欲しいが、お金を欲しがるのはみっともないということだけのようです。この辺りの考えは、日本人に深く根付いている考えですから、団塊の世代の人たちにとっては仕方のないことなのかも知れません。実は私も以前はそのような考えを持っていました。しかし、このブログで紹介してウォレス・ワトルズの「The Sience of Getting Rich」を読んで考えが180度変わりました。

人の最高の幸せは、愛する人によいものを贈ることにあります。愛の最も自然な表現は、与えることです。 もし何も与えられるものをもっていないとしたら、配偶者として、親として、あるいは市民として、人間として、役割を果たすことができません
たとえ年収が1,000万円あったとしても1,500万円あったとしても、住宅のローンを抱えていれば、子供が私立高校や大学に行った時には、お金に苦労するものです。私は、上記のワトルズの言葉に衝撃を受けました。自分は愛する子供達や妻に対してきちんと与えるべきものを与えていたのか?
勢古氏は、煙草代、コーヒー代、本代など自分の事しか書いていませんが、愛する人たちにきちんと与えるべきものを与えているのでしょうか?

この本で紹介している苫米地先生やDr.佐藤などは決してお金が目的ではなく、自分の夢を実現するための手段として必要なお金を得ています。その辺りを勢古氏は全く理解できていないようです。

(追記)
この本に関してはすぐに「その2」も書こうと思っていましたが、あまりに「その1」の反響がないので書く意味を感じなくなってしまったので、追記でお茶を濁すことにします。(題名の「その1」は削除しました) みなさん、やはり本を見る目がありますね。(笑)

勢古氏は。「潜在意識」というものに関してかなり不審感を持っているようで、石井氏や苫米地先生の本を徹底的に批判しています。氏は、心理学や催眠術、コーチングなどの本を読んだことがないのでしょうか?
お二方を含めた成功本の批判をするのであれば、心理学や催眠術、コーチングに関する本を最低5冊ずつ読んでから批判して欲しいものです。いろいろと反論したいことはありますが、ここでは自分が知らないこと、できないことは間違っているという論法はおかしいとだけ批判しておきます。

最後にと学会の山本氏と武田邦彦教授の議論での武田氏のコメントを再掲して終わりとします。
二つの対立する意見がある時、自分と意見が違うからといって相手のことを『間違っている』というのは如何なものか

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英語は必須! サラリーマン「再起動」マニュアル 大前研一著 を読む [ビジネス]

大前研一氏のビジネスマン向けに書かれた本です。

サラリーマン「再起動」マニュアル
氏はマッキンゼー出身ですが、マッキンゼーは入社する時に「あなたが5年後に生き残っている可能性は20%ですよ」と通告して毎年20%ずつ人を削減していたそうです。つまり入社2年~4年後にマネージャーになれなかったら辞めなくてはならないということです。これはかなり厳しいですよね。日本の会社では考えられないことだと思います。
このような状況だったため、大前氏は、日立製作所での原子力発電関連の仕事からマッキンゼーに転職したというユニークな経歴ですが、「マッキンゼーに転職して数年間は死ぬほど働いた。家で食事ができたのは、土日を含めて2回しかない年もあった」という状況だったそうです。

●志のあるサラリーマンはきつい仕事を厭わない
・日本の30~40代の人口は約3500万人
 ⇒ その中で戦闘意欲のある人はせいぜい15万人
 ⇒ その他の多くの人は会社に入って10年過ぎからコーストダウン
   (電車の惰性走行)状態になる
●1985年からAG(After Gates)が始まり新大陸(デジタル時代)が勃興
・旧大陸(アナログ時代)と大きく異なる
 ⇒ エスカレーター式の昇進はありえない
・年功序列がなく生存能力により給与格差が100倍になる
 ⇒ 生存能力のないものは容赦なく淘汰される
・更地に設計図を描けることが重要
 ⇒ 孫正義はYahoo!が社員6人の時に100億円を投資した

そして大前氏は、日本のサラリーマンは「英語力が極めて貧弱なのが弱点」だと言います。日本の学校での英語学習は、「読むこと」、「書くこと」に重点を置いていますが、全く逆だと言います。まずは、「聞くこと」が重要であり、次は「話すこと」が重要だと言います。
氏は海外での1回の講演料が(5万ドル+渡航費+滞在費)だそうですが、氏に続くようなお金を取れる人がいないことを嘆いています。英語をそこそこ喋れる人はいるが、内容のあることを話せる人はほとんどいない状態だそうです。氏の講演の画像を見てください。

見事な英語ですよね。英語という国際語で、これだけ自分の主張をできる人は本当に少ないだろうな、と思います。

その他にこの本で主張されていることは、

・リスクテイクが必要
 ⇒ 旧人類は言い訳する(家族を食べさせる必要がある、家のローンがある…)
 ⇒ 「できる人」の共通点はHungryでRisk Taker+自分のやりたいことをやる
・中年から伸びるためには「総合力」が必要
 ⇒ 自分の仕事以外に興味を示さなかった人は苦労する
 ⇒ 一つの分野で10年やればその道の専門家になる
   ⇒ 11年目から何をやるかが重要
・35歳を過ぎたらプロデューサ能力が問われる
・「上にものをいう」、「付和雷同しない」のも重要な能力
・事業構想に必要なのは5年後のライススタイル像
 ⇒ 次世代DVDで揉めているが5年後には不要になる可能性あり
 ⇒ 携帯でチケット予約できない人に商品計画は無理
・Do More betterには限界がある
 ⇒ 現状の否定から始まる
・プレゼンは簡潔に最後は相手に意思決定させる
 ⇒ すぐに質問が3つ出てくるようなプレゼンをしなければならない
・現場感覚を磨くには定点観測が重要
 ⇒ 人だかりの理由は現場に行かなければ分からない

そして、ビジネスマンにとって最も重要なタイムマネージメントに関しても述べています。

・「時間がない」は禁句
・時間のリストラをする
 ①仕事の質・精度を落とす
 ②他人にDeligate=委譲する
 ③アウトソーシングする
・宵越しのe-mailを持たない
 ⇒ 自分で決裁が滞っているものをなくす
 ⇒ 滞る案件が自分のところに来ないように業務フローを変える
・まずは必須の案件をスケジュールに入れる

私も「宵越しのe-mailを持たない」は耳が痛いです。
連休明けから実行するようにします。(笑)

大前氏の他の本です。
・日本人はものを考えなくなったのではないか?
「知の衰退」からいかに脱出するか? 大前研一著


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考える技術
大前研一通信特別保存版PartIII  パスファインダー  <道なき道を切り拓く先駆者たれ!!>「知の衰退」からいかに脱出するか?最強国家ニッポンの設計図大前の頭脳 「産業突然死」時代を生き抜く知恵衝撃! EUパワー 世界最大「超国家」の誕生企業参謀 (講談社文庫)質問する力 (文春文庫)


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マネジメント革命 天外伺朗著 を読む [ビジネス]

天外伺朗氏のマネジメントに関する本です。

マネジメント革命 「燃える集団」を実現する「長老型」のススメ








天外氏は、元ソニーコンピューターサイエンス研究所の所長土井 利忠氏のペンネームです。氏はソニー時代、CDやAIBOなどの開発を手掛けていた技術者ですが、日本の企業をおかしくしたのは、アメリカから輸入した「成果主義」だと主張します。
●成果主義は会社をダメにする
 理性的、論理的、合理的な発想は時には物事をスムーズに進める妨げとなる
 ・成果は数値化が難しい
 ・人間関係がギスギスする
 ・事業部が目先の利益に走り部分最適に走る
 ・フローに入れない

ここでいう「フロー」とは、仕事に没頭している状態精神状態のこと心理学者のミハイ・チクセントミハイによって提唱されています。
●フロー状態
 ①行為の集中・没頭
 ②高揚感
 ③雑念がない
 ④時間感覚の喪失
 ⑤自分自身の喪失
 ⑥場を支配している
 ⑦周囲との調和感

ソニー時代の画期的な製品は、エンジニア達がフロー状態になって開発していたと言います。そして、フロー状態は偶然を呼び、不思議と運がよくなるとのことです。例えば、新製品開発に絶対必要な部品が偶然に開発されていた、などのようなことが起こっていたそうです。

氏は、日本の企業は成果主義ではなく、指示、命令をしない空気のような上司がいる「長老型マネジメント」が良いと主張します。天外氏はSONYの創業者の一人である、井深大氏をこの長老型マネジメントの理想的な姿だと言います。信頼感がある、合理性を超えた所に正解がある、Decisionは現場にまかせる、などがその重要なファクターだとのことです。
●すぐれた上司は1%以下しかいない
 ・ダメな上司をすぐれた部下がカバーする
 ・「マネジメントは部下より上位にあるべき」は錯覚
  ⇒ 部下をDecisionできる人間に育てることが重要
 ・「やり過ごし」、「尻ぬぐい」こそが日本企業の強さの秘密

ただし、天外氏はダメ上司をフォローしていたすぐれた部下もマネジメントになるとダメ上司になってしまう、とも言います。(笑)
現在の企業(特にSONYを意識しているのでしょうが)は、スーパーエンジニアが生き生きと仕事に没頭できる集団(燃える集団)になっていないことが、画期的な発明が生まれない原因だと述べています。

最近では、成果主義の弊害はいろいろな人が指摘していますが、この本が出た当時はかなり衝撃的な発言だとの印象を持ちました。マネジメントに興味があれば、ご一読をお勧めします。



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あなたの会社が90日で儲かる!―感情マーケティングでお客をつかむ 神田昌典著 を読む [ビジネス]

カリスマ起業家である神田昌典氏のマーケティングに関する本です。

あなたの会社が90日で儲かる!―感情マーケティングでお客をつかむ








最近は、勝間和代氏の本の影響で「フォトリーディング」が大きく注目されていますが、神田氏のメイン?であるマーケティングに関する本です。
この本では、 無駄に時間をかけず、売り上げを飛躍的に伸ばすマーケティング法に関して書いています。これまでマーケティングの従来の常識であった「お客様主体の営業」から、「営業側主体の営業」へ転換することを述べています。

ここで言う営業側主体の営業とは、商品を買う際にお客さんが自ら店を探し出し、買わせてくれと言わせる方法です。これを、神田氏はエモーショナル・マーケティングと呼んでいます。お客さんのエモーション(感情)を知り、相手の反応を誘発させることによってこれを可能にするというものです。

●集客は科学である
・感情に訴える
・客の感情はメカニカルに動く

そして、営業マンが陥りやすい点として、「素晴らしいプレゼン」はダメだと言います。営業マンが素晴らしい、カッコいい、隙のないプレゼンをすればするほど、お客さんは反発して定業を難しくする、ということです。
逆にできる営業マンほど自分からはしゃべらない、とのことです。そして、営業マンの仕事は相手に気に入られることではないということを戒めています。
また、まじめにやっていれば儲かるは間違いで、真面目であれば儲かる訳でもなく、商品の品質がよければ売れるものでもない、といいます。そして、価格は「絶対的な価値」と「お客が感じる価値」があり、お客さんは手に入り難いものは欲しくなるものだとのことです。

悪徳業者は、できるだけ高く売ろうとするし、正直者はできるだけ安く売ろうとします。この本で一番良い言葉だと思ったのが、

安売りはバカにやらせておけ
・割引きは最も安直でバカでもできる
必ずあなたの価格を下回るバカが出てくる

量販店などの安売り合戦を見ているとこの言葉が実感としてよく分かります。(もちろん、私たちお客にとってはありがたいことですが...)

●ビジネスの本質
①見込み客を効果的に集める
⇒ 広告宣伝では、商品を売ることではなく興味のある人を集めることを徹底する
②見込み客を成約して既存客にする
③既存客に繰り返し買ってもらい固定客にする

とても読みやすい本です。私のように営業に関係のない人でも得られるものが多い本だと思います。

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非常識な成功法則―お金と自由をもたらす8つの習慣全脳思考あなたの会社が90日で儲かる!―感情マーケティングでお客をつかむ60分間・企業ダントツ化プロジェクト 顧客感情をベースにした戦略構築法口コミ伝染病―お客がお客を連れてくる実践プログラム成功者の告白 (講談社プラスアルファ文庫)あなたの会社が90日で儲かる!(感情マーケティングでお客をつかむ) (Forest 2545 Shinsyo)もっとあなたの会社が90日で儲かる!―感情マーケティングでお客をトリコにする


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「加速力」で成功をつかめ 齋藤孝著 を読む [ビジネス]

 齋藤孝氏の「●●力」に関する本です。

「加速力」で成功をつかめ!

 

 

 

 

 

仕事で成功するためには、「加速力」が必要だと言います。齋藤氏は、昭和の時代は「加速力」があった時代だが、平成の時代は「加速力」のない「等速直線運動」の時代で、自動化した仕事をこなしているだけだと言います。
昭和の時代、日本は加速によって今日の地位を築きましたが、80年代後半からのバブル時代は、ニセの加速であったとのことです。齋藤氏の言う「加速」は、

・何か新しいことにチャレンジしてそれを身に付けていくプロセス
  ⇒ 自動化した仕事の量が増える ⇒ 快感になる
・メリハりが重要
  ⇒ どこで加速するかを考える
    ・自分の周りの「風」を感じる
    ・逆風の時に加速しても結果に結び付かない
      ⇒ 力を溜めておく(不遇時代にも手を抜かない)

確かにビジネス界などのトップになった人たちには必ず不遇の時代が存在します。しかも、それは普通の人であれば出世をあきらめてしまうような左遷なども珍しくありません。このような時にきちんと力を溜められるかどうかでその後の人生がきまるのでしょうね。

今の時代は、「競争=悪」の風潮があり、若者の加速力を奪っていると言います。他人より上に行こうとすれば人と違う努力が必要ですが、そういう若者が減っているようです。

自分の「加速力」を回りの人に感じさせるには、「仕事が速い」、「勢いがある」ことを見せる必要があります。そのためには、通常の1/3の納期で仕事をするなど、相手に自分の加速力を見せ、また、周囲から好かれることも重要だと述べています。
齋藤氏は、「芸能界は加速力の勢いを見せることで成り立っている」と言います。確かにTVを見ていても芸能人の勢いは感じられます。そのような勢いがなくなった人たちは消えて行ってしまうのでしょう。

仕事に関しては、仕事を覚える段階では報酬を求めない来た仕事は断らないどんな球でも打ちながら絶好球を待つ、ことが重要だといいます。最近は、「断る」ことの重要さが強調されていますが、これは充分に仕事をこなせる人たちへのアドバイスで、仕事をろくにできない人たちはまずは自分に投資することが重要だと思います。
まずは、仕事も量が重要で、量をこなすと質が付いてきます。齋藤氏は天才達の才能の源泉は量にある、量をこなすことで自動化できる部分を増やすことが重要と言います。

加速力をつけるためには、身が軽い方が良い
  ・考えても仕方のないことは考えない
  ・8割方よければOK!
  ・否定的なイメージを払拭する ⇒ ネガティブな情報はシャットアウト
  ・ポジティブなイメージを増幅する

自分の周りの流れを読んで、追い風を感じたら一気に加速するということが重要なんですね。

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なぜ「エライ人」は馬鹿になるのか? 伊東明著 を読む [ビジネス]

 心理学者の伊東明さんの本です。

なぜ「エライ人」は馬鹿になるのか?

 

 

 

 

 

 なぜ「エライ人」は馬鹿になるのか? とても気になるタイトルですよね?
自分の会社のエライ人を見ても、確かに...と思う方が沢山いるのではないでしょうか? 私の会社の社長も、ある部分では当てはまるかも、と思うことが多々あります。偏見かも知れませんが、新聞などのメディアに登場する大会社のトップはいまだにワンマンタイプが多いような気がします。
どうしてなのでしょうか?という問いに答えるのがこの本です。

●エライ人ほど人の話を聞かない
・話が長いと思われている
 ⇒ 自慢話をしてホメてもらいたい(本当は自信がない)
・攻撃的な聞き方をする ⇒ 否定的な反論をする
・傲慢な聞き方をする ⇒ 腕組、足を組む、笑顔を見せない、表情がない
・人の話を聞かない ⇒ 好印象をもたれない信頼されない 
 ⇒ 新しい情報が入ってこない

確かにエライ人は話が長い人が多いですね。自慢話をしてホメてもらいたい、人の話を聞かない、これがバカになる第一歩なのでしょうね。

●エライ人ほど
・他人を見下す
・人をほめない
・人の欠点ばかりが目につく
 ⇒ 
率直なフィードバックがなくなる

何でも正しいフィードバックが必要です。自分の行動に関しても客観的な目でみた評価がとても重要で、自分の行動がすべて正しいと思って行動することは、鏡を見ないでお化粧をするようなものだと私は思っています。
自分の周りに間違いを指摘してくれる人を置かなくなった時点で、エライ人の馬鹿への道が出来上がっていくのでしょうね。

そんな馬鹿にならないためには、

●常に自分を向上させる努力が必要
・地位が上がったからこそますます努力する
・地位にふさわしい人間になれるように努力する

これは重要ですよね。地位にふさわしい人間になれるように自らを向上させる。でも、エライ人にこう言っても、「当たり前だ。自分もそうしている」と断言するのでしょうね。(笑)

●権力に甘えたらダメ
家族のフィードバックが重要

会社でどんなに偉そうにいばっていても、家に帰ると奥さんに朝ゴミ出しをさせられたり、娘に反論されたり、馬鹿にされたりすることで「会社の権力の届かない世界」を実感して一人の社会人としての自覚を持つことが大切なのだと思います。

私の会社の社長も会社で会えば(ほとんど会いませんが)緊張し、指示にも従いますが、いつも心の中では「街で会えばタダのオッサンじゃないか!」と思っています。(笑)
そうです。 エラそうな社長も自分が会社を辞めた時点で「タダのオッサン」なのですよ

自分もそうならないように、常に率直なフィードバックを受けて、自分を向上させるようにしたいと思います。

 

 

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なぜ「できる人」は「できる人」を育てられないか? 吉田典生著 を読む [ビジネス]

人材育成に関する本です。

なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?








人材の育成は頭の痛い問題です。私たち世代が育ったようなスパルタ方式、先輩の技術を盗んで学べ方式では、今の30代~40代の世代は育てられません。特に若い世代の社員は、「それは習っていません」、「そんなやり方は聞いていません」と平気で言います。私たちの世代では、仕事のやり方や技術に関して「知らないことは恥」と思う文化があったと思いますが、今ではかなり希薄になっているように感じます。
この本は、いわゆる「できる人」がどうして「できる人」を育てられないのか?に関して書かれた本で、なかなか参考になることが書かれています。
まず、できる人は、普通の人と
・明確な目標を持っている。 
・目線、スピード、優先度が違う。
・ハードルが高いほど燃える。
という違いがあると言います。そして、さらに「できる人」は、
「できた」事実を認めてもらう ⇒ 達成感を持つ ⇒ 自己信頼が強化 ⇒ できる 
という成長のスパイラルで育ってきています。逆に「できない人」は、次のような特質があると言います。
・「目標」へのプロセスが分からない。
・嫌いな仕事をしている自分をイメージする。
・成長のスパイラルがない。 ⇒ モチベーションを持って進められない。
・「できる人」への依存体質がある。
・「明確な目標」が重荷になる ⇒ 目標のおかげで進めない。

そのため、「できない人」がなぜ自分と同じことができないのかを理解できません。ですから、「できる人」は「できない人」に仕事を任せられないため、組織がダメになっていきます。
自分がやった方が速い ⇒ 知識、ノウハウのブラックBOX化 ⇒ 組織の「見えない化」
これを著者は「できる人」のワンマンショー化と呼んでいます。これは素晴らしい表現ですね! この一文を読むだけでその情景が頭に浮かんできますね。(笑)
私自身も、なかなか部下に任せ切れない性格であるため、この記述にはドキっとしました。最近では、かなりの部分を部下に任せるようにしてはいますが、考え方を変えるのはなかなか難しいものですね。

ときどき読み返して反省をしています。

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