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乾隆帝の秘宝と『奉天古陶磁図経』の研究 落合莞爾著 を読む [落合莞爾]

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落合先生の中国陶磁器の秘密に関する本です。
この本は定価15,000円と非常に高価ですが、そこに書かれている内容は中国陶磁を研究する人には非常に重要な内容が書かれており、是非一読して欲しい本です。

内容を簡単にまとめると、
・紀州徳川家に伝来していた中国陶磁器は、張作霖が奉天で所有していた乾隆帝の秘宝である。
・清朝皇帝は、本当の宝物は北京ではなく、清王朝の発祥の地である奉天に秘蔵していた。
・張作霖は、軍資金を得るためにその秘宝を大正の末頃に紀州徳川家に売却した。(現在の価値で約750億円)
・徳川家に入った陶磁器は、早い時期に流出し、デビッドコレクションや東京国立博物館など有名美術館に収まり名品と評価されている。
・陸軍中将上原勇作の特務であった吉薗周蔵が大正9年に奉天に行った時に作成した「奉天古陶磁図経」にそれらの陶磁器の大きさや特徴、実寸の絵柄が書かれていた。
・平成8年に落合先生が「奉天古陶磁図経」を入手して研究を重ね、図経に記載されている陶磁器がどこに所蔵されているものかを解説したものがこの本である。

zukan.JPG落合先生は、平成元年頃から地元和歌山の恩師である稲垣伯堂を通して、紀州徳川家所蔵の陶磁器(中国陶磁器、李朝など)を入手しました。平成2~3年にかけてそれらの陶磁器に関して図鑑を作成して刊行しました。(元、明の中国陶磁器、李朝に関して刊行) この図鑑を作成する過程で、落合先生は所蔵の中国陶磁器の専門家の意見を参考にしながら、自分で作成窯と時代の鑑定を行いました。

落合先生は平成4年10月に岸和田市の依頼で中国、李朝の陶磁器の展覧会を開催しましたが、朝日、読売新聞、毎日放送などによる贋作報道によって贋作事件に巻き込まれてしまいます。これに関しては、落合先生の「ドキュメント真贋」に詳しく書かれており、このブログでも紹介しました。(http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2011-01-02

その後、平成7年から落合先生は、佐伯祐三の真贋事件に吉薗明子氏の代理人として関わります。その過程で、明子氏の父である周蔵氏が書いた手記を入手します。その中には大正~昭和初期の軍部の動き、特に陸軍の中枢にいた上原勇作やその部下であった石光真臣・真清兄弟、甘粕正彦、藤田嗣治、貴志彌次郎などの動きが詳細に書かれていました。その内容は、現在落合先生が書かれている”疑史”シリーズのベースとなっています。

そして、その周蔵氏の手記の中に周蔵氏が大正9年に奉天で作成した張作霖所蔵の中国陶磁器に関する「奉天古陶磁図経」がありました。その図経には、先生が入手した中国陶磁器の名品の多くが記載されている他、陶磁器界で名品と言われているものが多く記載されていました。
この「奉天古陶磁図経」は、奉天に行って張作霖所有の陶磁器と当時満鉄で小森忍を中心に中国陶磁器の贋作造りを行っているのを見た周蔵氏が、のちのちこれらの中国 陶磁器の真贋問題が起こると予想し、真贋判定に使うために作成したものです。

しかし、その周蔵氏の思いとは逆に、周蔵氏の作成した文書は偽造されて小森忍が中心となり三重県の佐那具陶研で作成した中国古陶磁や乾山など茶道具の倣造品の売却に利用されることとなります。その売買には、陶磁業界の中心的な学者や業者が関わっていたことが日本の陶磁界の暗部として残っています。そして、それが昭和36、37年ごろに起こった、「永仁の壷事件」や「佐野乾山事件」につながるわけです。
「永仁の壷事件」では、贋作を作成した陶工、それを重要文化財に認定した文部技官、それを承知の上で売却していた業者が仲間となって行っていたことが事件になったものと考えられます。
また、落合先生の関わった「岸和田事件」や「佐野乾山事件」などは、これまで業界に流通していなかった「本物」を業界から排除するために新聞やTVなどのマスコミを利用して意図的に起こされた事件と言えると思います。

この本で興味を引くのは、吉薗周蔵氏が「佐野乾山事件」ともかかわりがあった点です。
昭和36年に始まった佐野乾山事件を知った周蔵は、「これは犯罪である」と憤慨し、独自に調査を始めた。佐野乾山事件には、佐那具窯関係者と佐藤進三が創立した日本陶磁協会が深く係わっていたことを知る周蔵は、毎日新聞に押しかけて抗議をしていたが、調査のために赴いた大阪の新橋の高級料亭付近で、黒塗りの自動車に圧迫され、土塀に押し付けられる不慮の交通事故に遭い、それが原因で腎臓を痛め、腎委縮の症状で昭和39年10月に他界した。
当時、異常とも思える毎日新聞の新発見の佐野乾山に対する贋作キャンペーン報道に対して、周蔵氏も憤慨していたことは心強い話です。しかし、周蔵氏がその事故に遭わずに生きていれば、おそらく佐野乾山事件も解決していたであろうことを考えると非常に残念です。

落合先生は自分で書かれた図鑑で特定した窯や時代鑑定がかなりの確率で「奉天古陶磁図経」の記載と合致することに驚きます。しかし、先生はさらに研究を重ね、所有の名品のいくつかは清朝康熙、擁正時代の御窯での倣造品であると判断しました。倣造品と言っても、皇帝が作らせた御窯の製品ですので、その多くがオリジナルよりもすぐれた名品であると判断しています。

この本では、現存の「奉天古陶磁図経」に書かれている一品、一品に現在知られている陶磁器を推定して書かれていますので、中国陶磁器に関して興味がある方には必読の書ですが、値段が高いのと装丁が普通の冊子である点が少々残念です。
内容に関しては、以下をご覧ください。
http://homepage2.nifty.com/hokusai/kishiwada/houtenkotoujizukyo.htm

奉天古陶磁の素晴らしい作品については、紀州文化振興会のHPをご覧ください。
http://www.kishu-bunka.org/toujishi.html

この本の購入に関しては、紀州文化振興会のHPをご覧ください。
http://www.kishu-bunka.org/

【佐野乾山に関しては、K's HomePageを参考にしています。(http://kaysan.net/sano/sanokenzan.htm)】

【落合先生の本に関してはこちらもどうぞ】
・「吉薗周蔵手記」が暴く日本の極秘事項」 落合莞爾著 を読む
・落合秘史はここから始まった! 『天才画家「佐伯祐三」真贋事件の真実』 落合莞爾著 を読む
・「天皇とワンワールド」 京都皇統の解禁秘史 落合莞爾著 を読む
・「欧州王家となった南朝皇統」 落合莞爾著 を読む
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・甘粕正彦もユダヤ? 上原勇作の特務、吉薗周蔵の手記にみるユダヤ 落合莞爾著
・「と学会」の本としてどうなの? トンデモ ニセ天皇の世界 と学会 原田実著
・乾隆帝の秘宝と『奉天古陶磁図経』の研究 落合莞爾著 を読む
・マスコミの報道は疑ってかかれ! 「ドキュメント真贋」 落合莞爾著 を読む

このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1
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