SSブログ

原発は地震で壊れるようにできている 武田邦彦著 雑誌Will 2011年5月号 を読む [震災・原発]

4月7日に東北地方に震度6の大きな余震がありました。
この地震で、ようやく通常の生活に戻りかけていた仙台もまた停電になったそうです。
一日も早い復興を願っています。

WiLL (ウィル) 2011年 05月号 [雑誌]
雑誌Willの5月号は東日本大震災の特集です。この中で武田教授の論文に興味を引かれました。
地震・津波で壊れる原発を作るべきではない」と言い続けてきた私にとっては、福島原発の事故は日本人の誇りを傷つける断腸の事件だった。
日本は原子力というエネルギーを十分に使える力があるのに、原子力の専門家は「安全な原子炉」を求める私の意見を「異端」とし、地震で壊れる原発を選択してきたのである。 (Will 2011年5 月号 P88)

武田邦彦教授は、中部大学教授でフジテレビの「ほんまでっか!?TV」で弁舌さわやかなコメントでおなじみだと思います。しかし、武田先生が有名になったのは、このブログでも紹介した「偽善エコロジー 「環境生活」が地球を破壊する」(http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2009-08-03-1)のように国をあげて取り組んでいた環境問題に対する提言でした。
  • レジ袋を使わないでエコバッグを買う方が石油をたくさん使う。
  • ゴミを分別することは、省エネにとっては犯罪のようなものだ。
  • ゴミを分別しても結局、一緒に燃やしている。
というようなショッキングな発言で有名になりました。水道橋博士、宮崎哲弥氏の「博士も知らないニッポンのウラ」という番組に武田教授は何回かゲストとして登場していますが、当時は水道橋博士をして「この人はTVに出しちゃいけない人だ!」と言わしめたほどの人です。(その後、社会の流れは武田先生の言う通りになっていったのですが...)
武田先生の信条は、「科学者は真実を伝えるべきで、政治や社会の都合で真実を捻じ曲げてはいけない」ということだそうです。

みなさんも原発に関する報道やコメンテイタ―達のいろいろなことに気を使ったはっきりしないコメントにかなりイライラしていると思います。 そんな中で 武田先生のように事実をはっきり言える人の存在は貴重だと思います。
平成18年5月19日、「原発の耐震基準」の審議が行われたそうです。ちょっと長いですが、重要な記載ですので引用します。
耐震設計指針を変更しなければならなかったのは、もともとそれまでの原発の耐震基準は不完全だったためで、原発訴訟のもとになっていた。しかし、現実には「地震で原発が壊れた」ということもなかったので、耐震指針の改定は「原発反対派対策」とたかをくくっている委員もいた。
そんな中で審議は進んだが、そこに示された「指針」は驚くべきものだった。
簡単に言うと、
  1. 原発の立地が決まると、地震の専門家が現地に赴いて「想定される最大地震」を割り出す。
  2. それに基づいて建築の専門家が原発の建屋の設計を行い、原発を建てる。
  3. このような手続きで進めるので、もし予想外に大きな地震が起こったら「想定外」になり、原発は壊れる。
  4. 原発が壊れると付近住民が被爆することとなり、「安全である」と言っていたことと反するので、「地震で原発が破壊する」ということを「残余のリスク」という言葉を使う。
というものだった。
私は思わず、審議の冒頭に次のように発言した(速記録より)。
「この耐震指針の目的は、原子力発電所の建物が壊れるのを防ぐのか、運転が安全に継続することを目的とするのか、それとも付近の住民や社会に影響を及ぼすことを防ぐのか?」
考えてみれば、実にバカらしい質問だ。地震がきて原発が壊れず運転が継続できれば、付近の住民にも被害が及ばないことになる。
しかし、指針は巧みに書いてあるが、実は地震の専門家が間違って最大震度を推定したら、原子炉は壊れる。また、地震の揺れだけに興味がある学者が推定したら、津波は忘れているだろう
したがって、指針は「住民の安全は地震の専門家の知識と運命共同体」という内容のものだったからだ。(中略)
つまり、指針は「地震・津波で付近住民が被害を受けないように原発を建てろ」と言っているのではなく、「予想震度に合わせて作れ」というだけだから簡単だ。
そして、官僚にとっては、
  1. 地震の専門家が最大震度を推定し、
  2. 建築の専門家が設計し、
  3. 電力会社が運転する。
だから、官僚の責任は問われない。仮に地震の専門家が推定した震度よりも大きな地震や予想しない津波が起きれば、「想定外だ」といえば良いし、地震学者が間違ったらそちらのセイにすればよい。
つまり、最終的に「住民が被曝するかどうか?」ということを問題にしなければ、責任逃れの体制が完璧にできている指針だった。
しかし、現実には地震の予想は常に外れている。だから、この指針は実質的に「関係者の責任逃れはできるが、付近住民は被曝する」というものだったのだ。
もう一歩踏み込んで言うと、現在の地震・津波学のレベルを考えると地震の専門家が推定した地震・津波の大きさをもとに設計された原子炉は、「地震・津波で壊れる原発」ということになる
この指針は私の抵抗空しく、部会をとおり、平成18年に正式に指針として成立した。 (Will 2011年5 月号 P88~89)
今回の事故で、「予想外の」とか「想定外」の地震というような発言が多いのですが、今回の地震での原発地域での震度は「6」です。武田先生によるとこの10年で震度6以上の地震は日本国内で13回あったそうですので、今回の地震が想定外という理由は全くないことになります。また、上記の指針には地震の想定はありますが、津波に関する推定が入っていないことも恐ろしい話です。(地震の専門家が津波を当然想定していることを期待したいですが...)

その他にも気になる記述が満載です。
・テレビに出る原子力の専門家は、「地震の専門家が予測を少し間違えれば、原発は破壊されるように設計されている」ということを知っているのだが、絶対に口に出さない。
・原発が破壊されて放射線を持つ物質が漏れたときに、どのような状態で住民が被爆するのかということは、ソ連のチェルノブイリの例があり、すでに十分に分かっている。原発から放射線物質が漏れると、それは気体(ガス)かミスト(微粒子)なので風にのって運ばれる。だから、風向きで避難する範囲が決まる。半径10キロとか20キロとかが問題ではない。
・放射線は光(ガンマ線)、電子(ベータ線)だから、四方八方にまっすぐに飛ぶ。だから距離が離れれば弱くなる。しかし、原発の事故で怖いのは、放射線そのものではなく放射性物質のほうで、セシウム、ヨウ素のような「物質」である。こちらは「物質」だから風に乗って飛ぶ。北風なら東京の方に、南風なら仙台が汚染されるということだ。 (Will 2011年5 月号 P92~94)

この辺りの放射性物質に関する情報は、真実を伝えて欲しいですね。
そして、さらに気になるのは、TVや新聞に登場する保安院の方々です。
・福島原発の事故が起こった後、テレビに登場した経産省の原子力安全・保安院の人の顔と 発言の様子を見て、唖然とした人が多かった。まず、「なんで謝らないの?」ということだ。原発の安全の責任を負っているのだから、原発が事故を起こせば、もっとも深く頭を下げなければならないのは保安院である。(中略)それにもかかわらず、テレビに出てきた保安院の人は「俺の責任じゃない。東電はケシカラン!」と言わんばかりだった。事故が起きて責任を取らないのなら、普段から指導などするなと言いたい。 (Will 2011年5 月号 P92~94)

確かに、TVで発言する保安院の人を見ていると当事者としての自覚があるのか?と思ってしまいますね。武田先生がおっしゃるように普段は威張りくさって東電などを指導しているのであれば、全責任をとって欲しいものです。また、気になるのは東電の社長が福島県民や計画停電を行う対象地域の人達に謝罪やお願いをしていないことです。出てくるのは副社長などで、正直言って「東電には社長はいないのか?」と思っていました。先日まで体調不良で入院していたそうですが、そのような人が責任のある立場にあって、この困難な時期を乗り越えられるのでしょうか?

私は、今回の福島原発の事故で、残念ながら日本に原発を置いてはダメだと思いました。
その理由は、原子力発電の根本的な問題ですが、原発はすぐには止められないことです。停止するにしても廃炉にするにしても、核燃料は3~5年は冷却し続けなければなりません。また、事故で放射能が出ている状況で対応策がないことも致命的だと思います。今回のように高濃度の放射性水の処理も基本的には溜めておくことしかできませんし、大量の放射線の環境下で破損した装置を修理するのもたくさんの人を使って許容被曝量内の時間だけ作業を行う人海戦術しかありません。私は、恥ずかしながら、高濃度の放射線水の処理は、何か特殊な物質を入れると処理できると思っていましたし、作業者の放射線を防ぐ防護服のようなものが当然あると思っていました。(だって、月にだって行ける時代だもの...地球外の放射線量はすごいですから、宇宙服はそのような構造かと思っていました。)
それが無いということは、ブレーキの無い車に乗っているようなものです。私達が安全に高速道路を100Km/h以上で走れるのも、新幹線が300Km/hで走れるのも、きちんとブレーキがあって何かあったらすぐに止まれるからです。原発は、ブレーキがない自動車で高速道路を走るようなものだと思います。(認識に間違いがあればご指摘下さい)

また、民間会社である東電にこのような危険な原発を管理させていること自体無理だと思います。民間会社である以上、最終的には利潤の追求が目的になりますので、原発の耐震構造や津波対策もコスト的に大きな余裕を持たせることはできないでしょう。武田先生ご指摘のように、原発は「住民を被曝させないこと」を目標としているわけではありませんので、地震の専門家が震度6の地震は発生しない、と判断したら設計者が余裕を持って震度7までの耐震強度を持たせようとしても、上司から「お前はコスト意識がないのか!」と言われることは容易に想像できます。そして、今回のような危険な事故が起きた時に民間企業のTopは「お前は命をかけて福島原発を守れ!」と命令できないでしょうし、言われた方も困ると思います。今回のような国民に大きな被害を与えるような事故が起こる可能性のある施設は、やはり国が管理すべきだと思います。
東京に原発を! (集英社文庫)
そして、それを管理する保安院の人たちは東京など原発から遠い場所には住まないで、それぞれ原発のある地域に住むようにすれば、その安全性に対して当事者意識を持って原発の管理を行うのではないでしょうか? 「そんな安全基準で電力会社は住民を守れるのか!」なんて住民集会で言ったりね。(笑)
20年以上前に、広瀬隆氏の「東京に原発を!」という本が話題になりました。この本は、原発が本当に安全ならば電力を一番使用している東京に設置すべきだ、と主張している本です。今回の事故で広瀬氏の主張が正しかったことが証明されました。今回のような事故が、東京の湾岸などで発生していたとしたらどうなっていたでしょうか?みんな冷静に行動できたでしょうか?
想像するだけで恐ろしいことです。今回の事故で、関東の電気が福島から来ていることに驚いた人が多いかも知れませんが、福島の方々は、関東の人たちのために不安を抱えて生活しているのです。改めて福島県民の方々には感謝いたします。

最後に、今回は福島原発の事故は第一原発だけで発生しましたが、同じように津波が来ていた宮城県の女川原発や茨城県の東海原発、17日に震度6の地震が発生した静岡の浜岡原発などで福島と同じような事故が発生していたとしたら、今回福島でやったような集中的な放水やその他の作業をきちんとできたのでしょうか?
被曝覚悟で行う人海戦術を行う人数は足りるのでしょうか? 茨城県の東海原発で事故が起きた時に関東の人たちは冷静でいられるでしょうか?

今回の一連の地震で、あたかも原発のある地域を狙ったようなポイントに地震が発生することが分かりました。さらに言えば、地震ではなく、各地の原発を狙ったテロが発生することも考えられます。各地の原発が一斉に破壊された時に、日本はきちんと対応できるのでしょうか? テロに対して東電などの一民間企業が防衛できるのでしょうか?
今回の福島原発では4月1日に、警備中の第2原発に街宣車が警備を破って侵入し、10分間自由に走り回っています。
もしこれがテロだったとしたらと考えると本当に恐ろしくなります。

素人の私が指摘するまでもなく、「あたり前だろ! 想定内のことだ!」というお叱りを受けることを強く願っています。

以上、素人の意見を書いてしまいました。間違いがありましたらご指摘を頂けると幸いです。

(追記)武田先生は、原子力の専門家ではないだろ? との疑問もあると思い以下を引用します。
私は長く原子力関係の仕事をしていたので、その間に「第一種放射線取扱主任者」の資格を持ち、業務をしていた。
別に自分がどうのこうのということではないが、「武田は素人だ」という人もいるが、皆さんに安心してもらうために、第一種放射線取扱主任者は「日本人を放射線から守る資格」としては最高のもので、オールマイティに業務を行えることを断っておきたい.
このブログにも第一種放射線取扱主任者の方から多くのアドバイスをもらっていた。たとえ大臣といえども、放射線からの防御という点では第一種放射線取扱主任者の命令を聞かなければならない、そういう資格なのだ。
・・・・・・・・・
放射線取扱主任者のもっとも重要な役割は法律にそって、日本人(もちろん日本にいる外国人を含む)を被曝から守ることである.
専門家というのは事態が変わったから、普段と違うことを言っては行けない。もし政治的な配慮で超法規的措置が必要なら、それは政府が非常事態宣言をして、超法規的措置を執るべきであり、専門家が自らの判断で法律に背くことをしてはいけないのである.
<武田先生の原発関連のブログ> ぜひご覧ください。
(特に妊婦の方や小さなお子さんをお持ちの方)
http://takedanet.com/cat11645548/

(動画はコチラ) 3/15日 緊急 福島原発について
http://www.youtube.com/watch?v=9XmqsGAJcqY&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=zNjJgiZnxV8&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=zNBE7DF7gjQ&feature=related

(追記2)
以下のURLに原発の安全性を求める福島県連絡会代表 早川篤雄氏が2005年5月に東電社長に対して、福島原発がチリ津波級の引き潮、高潮時に耐えられないため東電福島原発の抜本的対策を求める申し入れをしています。この中で、チリ津波級の津波が来た場合、冷却装置を喪失するときちんと書いてあります。
全く、どこが「想定外の地震、津波」なのでしょうか?
http://homepage2.nifty.com/gjc/j194.htm#j194-21

【地震・原発関連】
・原発は地震で壊れるようにできている 武田邦彦著 雑誌Will 2011年5月号 を読む
・東日本大震災の地震はオカシイ? 地震波形を見る!
・3.11同時多発人工地震テロ リチャード・コシミズ著 を読む
・原発や地震に関して気になること その2
・東京湾でも津波が発生か? 東京湾地震に関して
・原発や地震に関して気になること
・何かオカシイぞ! 東日本大震災前の建設関連株の動き
・子供たちを被爆させるな! 原正夫 郡山市長の英断に拍手! 
・放射能で首都圏消滅 古長谷 稔著 を読む
・東日本大震災は人工地震か?
・原発事故に関して ・・・ 武田邦彦先生のブログを参考にする

ブログランキングに参加しています。記事が気にいったらクリックをお願いします。。人気ブログランキングへ

このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1


nice!(5)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 5

コメント 6

mo_co

いつもありがとうございます。
真実を語ることが難しい世の中で武田先生もまた素晴らしいですね。
本当に素人でも不思議に思うことは、「想定内」であって欲しいです。
by mo_co (2011-04-10 09:39) 

Simple

mo_co さん

いつもNice! & コメントありがとうございます。
武田先生に関して(追記)をしました。武田先生のブログも参考にしてください。
過度に神経質になる必要はないと思いますが、事実を知って判断材料になればと思います。
by Simple (2011-04-10 11:15) 

TBM

もうずいぶん前になりますが、
広瀬隆氏の「危険な話」、そして「東京に原発を」は
読みましたね。
by TBM (2011-04-10 17:33) 

Simple

TBM さん

いつもNice! & コメントありがとうございます。
広瀬隆氏の本から20年近く、原発は進化していないようですね。
by Simple (2011-04-10 19:25) 

Simple

rezare さん

Nice! ありがとうございます。
養老先生の原発の話、興味深いですね。
by Simple (2011-04-11 21:28) 

Simple

ハマコウさん

Nice! ありがとうございます。
教育問題は難しいですね。
by Simple (2011-11-06 23:41) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。