未完 佐伯祐三の「巴里日記」 吉薗周蔵宛書簡 匠秀夫編・著 [落合莞爾]
武生市(現在の越前市)への佐伯祐三の絵画の寄贈に関する真贋事件のさなかである1995年4月に発刊された本です。なぜ”未完”かというと、著者である匠氏は、執筆中である前年の9月にがんで亡くなってしまったからです。つまり、”未完”であり匠氏の”遺稿”でもあるわけです。
この本は、30歳でパリで客死した佐伯祐三のパトロンとして陰で佐伯を支えていた吉薗周蔵氏を初めて世に出した本です。この後、吉薗周蔵氏の娘である明子氏の代理人として落合莞爾氏が登場することになりますが、それまでは、この匠氏が周蔵氏に関しては第一人者であったと言えます。
この本には、当時美術館の館長などの人事を決めていた、美術界のドンと言われていた河北倫明氏が序文を書いています。
そして、匠氏はこれまで語られてきた佐伯祐三像に関して疑問を呈しています。
最初の渡仏で佐伯がヴラマンクに「このアカデミック!」と罵倒されて、奮起したことはよく知られていますが、匠氏は、以下のような疑問を呈しています。
この本では、吉薗周蔵氏が佐伯祐三が渡仏する時に、何でも書くようにと渡した「巴里日記」と佐伯から周蔵氏への書簡が紹介されています。周蔵氏と佐伯との関係や周蔵氏関連の資料に関しては、その信憑性に疑問を持たれているようですが、下記の日記や書簡の筆跡を見ても、私には佐伯の字としか思えません。みなさんはどう思われるでしょうか?
佐伯から周蔵氏への書簡(画像は、紀州文化振興会のHPより)
①1923年消印不明 (P223 に掲載)
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/1-1.JPG
②1926年11月30日(P247 に掲載)
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/1-2.JPG
③1927年1月6日
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/16-11.JPG
④1927年1月6日
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/16-2.JPG
⑤1928年5月
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/29-1.JPG
⑥1928年5月
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/29-2.JPG
これらの書簡が偽造だというのであれば、現在認められている佐伯の書簡なども同様に疑惑を持ってみる必要があると思います。
この本で紹介されている佐伯の書簡を紹介します。
1926年2月2日東京消印(1925年12月24日 記)(P234掲載)
これは、佐伯米子が書いた「悲しみのパリ」に書かれている、「アルルのはね橋のところにまいりますと、あの白いはね橋が、青い空にくっきりと浮かび上がってみえました。あまりにも美しいその景色に、私達は、思わず草原にすわり、ゴッホの名画にのこされた、あのはね橋をスケッチいたしました。その私のスケッチが、その秋のサロン・ドートンヌで、初入選したのでございます。佐伯の<コルドヌリ>や<新聞屋>も同時に初入選いたしました。」(現代日本美術全集9 佐伯祐三 1972年)という米子の証言がもとになっているようです。
また、佐伯の渡仏の時の資金に関しては、いくつかの書簡に書かれています。
①1923年11月23日(神戸消印)(P222掲載)
この本が出されてから15年以上経っていますが、この辺りの調査は進んでいないようですね。
この本は、なかなか入手困難ですが、佐伯祐三に興味がある方には必読の書だと思います。
落合先生に関してはこちらもどうぞ。
・「吉薗周蔵手記」が暴く日本の極秘事項」 落合莞爾著 を読む
・落合秘史はここから始まった! 『天才画家「佐伯祐三」真贋事件の真実』 落合莞爾著 を読む
・「天皇とワンワールド」 京都皇統の解禁秘史 落合莞爾著 を読む
・「欧州王家となった南朝皇統」 落合莞爾著 を読む
・現皇室は南朝の末裔だ「南北朝こそ日本の機密」 落合莞爾著 を読む
・「日本教の聖者・西郷隆盛と天皇制社会主義」 - 版籍奉還から満鮮経略への道 落合莞爾著 を読む
・「明治天皇“すり替え”説の真相: 近代史最大の謎にして、最大の禁忌」 落合莞爾、斎藤充功著を読む
・孝明天皇、大室天皇の真実! 明治維新の極秘計画 ――落合秘史Ⅰ 落合莞爾著 を読む
・ユダヤとは何か? 落合先生の最新刊、 金融ワンワールド 落合莞爾著を読む
・甘粕正彦もユダヤ? 上原勇作の特務、吉薗周蔵の手記にみるユダヤ 落合莞爾著
・「と学会」の本としてどうなの? トンデモ ニセ天皇の世界 と学会 原田実著
・乾隆帝の秘宝と『奉天古陶磁図経』の研究 落合莞爾著 を読む
・マスコミの報道は疑ってかかれ! 「ドキュメント真贋」 落合莞爾著 を読む
吉薗周蔵氏に関しては、紀州文化振興会のHPをご覧ください。
http://www.kishu-bunka.org/saeki.html
http://www.kishu-bunka.org/saeki/saekiyuzo.htm
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このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1
この本は、30歳でパリで客死した佐伯祐三のパトロンとして陰で佐伯を支えていた吉薗周蔵氏を初めて世に出した本です。この後、吉薗周蔵氏の娘である明子氏の代理人として落合莞爾氏が登場することになりますが、それまでは、この匠氏が周蔵氏に関しては第一人者であったと言えます。
この本には、当時美術館の館長などの人事を決めていた、美術界のドンと言われていた河北倫明氏が序文を書いています。
論語の中に、次のような言葉があることをかねがね私は頭にとどめていた。すなわち「鳥の将に死なんとするときは、其の鳴くや哀し、人の将に死なんとするときは、其の言うや善し」。死を前にした鳥の鳴き声はかなしいし、また死に臨んだ人間のことばは真実なものだといったような意味であろうが、私はこの言葉の中に生命あるものが本来そなえた厳粛な真実が含まれることを感じないわけにはいかない。この序文から分かるように、河北氏はこれまで知られていなかった吉薗周蔵氏を知っており、匠氏のこの本に書かれていることは真実である、周蔵氏こそ佐伯祐三を陰で支えていた人物である、と述べているのです。
(中略) 最後に、率直な私見を許していただくならば、私は吉薗周蔵という人物こそ、佐伯芸術をこの世に存立させるための基盤を作った近代特異の精神科医の草分けであったといえるように思っている。
そして、匠氏はこれまで語られてきた佐伯祐三像に関して疑問を呈しています。
最初の渡仏で佐伯がヴラマンクに「このアカデミック!」と罵倒されて、奮起したことはよく知られていますが、匠氏は、以下のような疑問を呈しています。
その後の佐伯の作品の変貌を見てもこの衝撃の大きさを推しはかれるのではあるが、当日の佐伯自身はヴラマンクの怒りを理解できたのか、どうかということが残る。また、以前このブログでも書いた佐伯の活動資金に関することも匠氏は疑問を抱いています。
この本では、吉薗周蔵氏が佐伯祐三が渡仏する時に、何でも書くようにと渡した「巴里日記」と佐伯から周蔵氏への書簡が紹介されています。周蔵氏と佐伯との関係や周蔵氏関連の資料に関しては、その信憑性に疑問を持たれているようですが、下記の日記や書簡の筆跡を見ても、私には佐伯の字としか思えません。みなさんはどう思われるでしょうか?
佐伯から周蔵氏への書簡(画像は、紀州文化振興会のHPより)
①1923年消印不明 (P223 に掲載)
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/1-1.JPG
②1926年11月30日(P247 に掲載)
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/1-2.JPG
③1927年1月6日
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/16-11.JPG
④1927年1月6日
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/16-2.JPG
⑤1928年5月
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/29-1.JPG
⑥1928年5月
・http://www.kishu-bunka.org/saeki/syokan/29-2.JPG
これらの書簡が偽造だというのであれば、現在認められている佐伯の書簡なども同様に疑惑を持ってみる必要があると思います。
この本で紹介されている佐伯の書簡を紹介します。
1926年2月2日東京消印(1925年12月24日 記)(P234掲載)
里見サンが心配してはってブラマンクいふ画家ニ會ワセテくれはった。朝日晃の「佐伯祐三のパリ」の年表には「9月 第18回サロン・ドートンヌに初めて<コルドヌリ(靴屋)>と<煉瓦屋>が入選。米子も<アルルのはね橋>が入選」との記載があり定説化していますが、上の佐伯の書簡にはまるで逆のことが書かれています。
里見サンの先生です。この人にワシの画見てもらいました。
この先生をゑらいをこらせてしまいました。
ワシの画ハアカデミックゐふのやそふや。フォービズムゐふのが画なんやそふです。
米子ハンが心配してワシ以上ニベンキョウしよって里見サンと二人でよケい説明してくれますケど俺ニハワカラヘン
イシノゐわはる事思い出してワシは毎日ノッパラでねてました。
寒ふなってきて仕方ないさかいヤチの子守してました。
米子ハンが何枚も画いて実はワシが画いた小っこいもん一枚と三枚サ(ロ)ントートンヌの展覧会に出品したのです 全部入選してしまいました。
このことしらすの氣が重ふて手紙かきませんでしたが 米子ハンがどんどん氣大きふしていってもふあきまへん (後略)
これは、佐伯米子が書いた「悲しみのパリ」に書かれている、「アルルのはね橋のところにまいりますと、あの白いはね橋が、青い空にくっきりと浮かび上がってみえました。あまりにも美しいその景色に、私達は、思わず草原にすわり、ゴッホの名画にのこされた、あのはね橋をスケッチいたしました。その私のスケッチが、その秋のサロン・ドートンヌで、初入選したのでございます。佐伯の<コルドヌリ>や<新聞屋>も同時に初入選いたしました。」(現代日本美術全集9 佐伯祐三 1972年)という米子の証言がもとになっているようです。
また、佐伯の渡仏の時の資金に関しては、いくつかの書簡に書かれています。
①1923年11月23日(神戸消印)(P222掲載)
ゐよゐよ明日29日神戸から發ちます 巴里に着くのがまちどをしくて甲板を走りたい気分です②1925年7月14日(東京消印)(P232掲載)
大阪を出る前に小包、手紙つきました 中のものには大変うれしく感謝するだけです
ほんとうにすんません こんな大金、巴里に十年ゐても困らんのとちゃうかと思います(中略)
実は友人が急に文無しになってしもうて行きたいが行かれずと なげいているので
兄が用意してくれた金を分けて三等で行くこと(に)したところでした
一等はぜいたくやと思いますから丁度よく三等で行きます
金は大事にして向こうで使ゐます
兄サンがエゲレスのセッツルメント視察を理由ニむかゐに来ました③1927~28年(推定)(P258掲載)
理由ハ金のいきつまりだと思います
三四ヶ月 ―― 日をかせぎますからたすけて下さい
金の事心パイナイこと電報か手紙下さい
金の事さゑ はっきりきまれば巴里にゐられます
はっきりした事いふて返事はやめにたのみます すんません
米子ハンが次々と思いをめぐらしてくれはって大分のって来てゐますが
出る金がよけいで困っています 千圓くらい送って下さい ほんますいません
この本が出されてから15年以上経っていますが、この辺りの調査は進んでいないようですね。
この本は、なかなか入手困難ですが、佐伯祐三に興味がある方には必読の書だと思います。
落合先生に関してはこちらもどうぞ。
・「吉薗周蔵手記」が暴く日本の極秘事項」 落合莞爾著 を読む
・落合秘史はここから始まった! 『天才画家「佐伯祐三」真贋事件の真実』 落合莞爾著 を読む
・「天皇とワンワールド」 京都皇統の解禁秘史 落合莞爾著 を読む
・「欧州王家となった南朝皇統」 落合莞爾著 を読む
・現皇室は南朝の末裔だ「南北朝こそ日本の機密」 落合莞爾著 を読む
・「日本教の聖者・西郷隆盛と天皇制社会主義」 - 版籍奉還から満鮮経略への道 落合莞爾著 を読む
・「明治天皇“すり替え”説の真相: 近代史最大の謎にして、最大の禁忌」 落合莞爾、斎藤充功著を読む
・孝明天皇、大室天皇の真実! 明治維新の極秘計画 ――落合秘史Ⅰ 落合莞爾著 を読む
・ユダヤとは何か? 落合先生の最新刊、 金融ワンワールド 落合莞爾著を読む
・甘粕正彦もユダヤ? 上原勇作の特務、吉薗周蔵の手記にみるユダヤ 落合莞爾著
・「と学会」の本としてどうなの? トンデモ ニセ天皇の世界 と学会 原田実著
・乾隆帝の秘宝と『奉天古陶磁図経』の研究 落合莞爾著 を読む
・マスコミの報道は疑ってかかれ! 「ドキュメント真贋」 落合莞爾著 を読む
吉薗周蔵氏に関しては、紀州文化振興会のHPをご覧ください。
http://www.kishu-bunka.org/saeki.html
http://www.kishu-bunka.org/saeki/saekiyuzo.htm
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このブログの目次です。
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17-1
TBM さん
Nice! ありがとうございます。
お気に入りのバンドがいるのは良いですね。
by Simple (2011-10-14 23:13)
tsworking さん
Nice! ありがとうございます。
福島の子供たちの甲状腺検査、気になりますよね。
先日、仙台に行った時に安達太良SAで再度放射線量を測定しましたが、パーキングの植え込みで、今だに1マイクロシーべルトありました。つまり、除染が全然進んでいないということです。
この国の対応の異常な遅さは、故意としか思えません。
by Simple (2011-10-14 23:20)
mo_co さん
Nice! ありがとうございます。
mo_co さんはMac使いでしたか...。
by Simple (2011-10-14 23:22)
zwei さん
Nice! ありがとうございます。
トッポにティラミス味なんてあるんですね。
by Simple (2011-10-15 21:17)