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なぜサムスンは強いのか? サムスン式 仕事の流儀 5年で一流社員になる ムン・ヒョンジ著を読む [ビジネス]


サムスン式 仕事の流儀 5年で一流社員になる
2012年3月期の決算で、パナソニック 7,721億円の赤字、ソニー 4,566億円の赤字、シャープ3,760億円の赤字と日本のトップ企業の業績の悪化には驚きました。
一方、韓国のサムスンは、2012年1~3月の4半期だけで、4,200億円の営業利益を稼ぎだし、スマートフォンもアップルを抜いてトップシェアとなりました。どの分野においてもトップシェアを目指し、それを実現できるサムスンの秘密はなんなのでしょうか?

それに対する回答がこの本にあるように思いました。
著者のムン・ヒョンジン氏は、30歳そこそこで2006年前後にサムスンSDIのグループ長として働いていたとのことです。
サムスンSDIは、グループ全体の系列社中でもで仕事の過酷さにおいては1,2を争い、殺気立っていた。チーム社員40人のうち、20人が入れ替わってしまうことまであった。理由はただ一つ。サムスンSDIの仕事のやり方に耐えられないからだ

しかし、この本にそれほど目新しいことが書かれている訳ではありません。
その内容は以下のようなもので、日本のTop企業で働いている優秀な社員であればみんなやっていることが書かれています。しかし、それをすべての社員に要求しているということがポイントなのだと思いました。
例えば、「出張報告書」は帰りの飛行機の中で書き終えろ、というのは日本企業でも優秀で意欲のある社員であればみんなやっていると思いますが、それを社内の常識としている日本企業は少ないように思います。また、残業に関しては、最近の日本企業は「効率よく仕事をして残業を減らしましょう」という「ゆとり教育」のような風潮が多いと思いますが、サムスンでは残業が多いのは当たり前、いやなら転職しろという徹底ぶりです。

考えてみれば分かることですが、同じ能力の社員がいた場合、定時で帰る社員と遅くまで残業している社員ではどちらが多くの仕事を「早く」こなすことができるでしょうか?
多くの残業をすると仕事の効率は落ちるかも知れませんが、その分だけ時間をかけてそれ以上の成果を出すことができるのは当然だと思います。知的で、クリエイティブな仕事には労働時間は関係ないと主張する方もいると思いますが、そのようなクリエイティブな仕事が自分の仕事の中でどの程度の割合を占めているでしょうか? その割合が非常に多ければ、この論理は成り立ちませんが、ほとんどの人はその割合はそれほど高くないはずです。
そして、家に帰っても常に仕事のことを考えていれば、それだけ問題に対する思考も深まるはずです。日本は労働時間が長いと批判している欧米でも本当のエリート社員は、自宅でも仕事をするようなハードワーカーが多いと聞いています。
最近の日本企業の凋落はこの辺りに原因があるという考え方は穿った見方でしょうか?
その意味で、バブル期までの昭和時代の日本のモーレツ社員が揃っているのがサムスンなのでは? と思いました。

まず、サムスンが一番重視している「仕事のスピードアップ」に関してです。
●時間を制する者が、成果と利益を制する
現在サムスンが見せている「最高の成果」には、他者よりもスピーディーに仕事を進めてきたという背景がある。
時間を制する者が成果を利益を制し、時間を先取りする会社がビジネスの勘所を押さえ、市場をリードすることができるのだ。サムスンでは仕事のスピードアップのために、退社前にその日の報告事項を整理して上司にメールで送る。夜、役員がメールを開き、考え判断する時間ができることで、業務は「進行中」の状態となる。
サムスンの報告のルールでもっとも重要な1つが、「即座に」というものだ。リアルタイムの報告には、状況を掌握する力がある。決裁を行う上司もやはり速いスピードで動く必要がある。
「出張報告書」は帰りの飛行機で書き終えろ!飛行機から降りたら報告書が読めるようにしておく。これがサムスンの常識だ。
●報告書は、自分の顔であり人格である
・優れた報告書に必要な三つの視点「過去―現在―未来」の視点のフレームを用いること。
・「解決策」のない報告をしてはならない。報告は、解決策のあるアクションでなければならない。
● サムスンは会議は多い
・会議は「仕事の設計図」である。
・議事録が作成されたら、必ず出席者にもう一度「公開」されるべき。会議終了と同時に議事録がメールで送信されるのがベストな方法
●サムスンは残業が多い
「残業」に対する立場と行動を決定せよ
・ 残業が多いのは会社がダイナミックに動いている証拠であもあり、あるいは停滞期を抜け出そうと全力を尽くしているときでもある。どうしても残業に耐えられないというのであれば、思いきって転職することも必要だ
●デスクの整理整頓を徹底する
・デスクの状態は、頭の中の状態と同じである。

先日、たまたまサムスンの人たちと仕事をして 飲む機会があったので、この本を紹介しました。「出張報告書」は帰りの飛行機で書き終えろというのは本当か?と確認したところ、「本当だ」と言っていました。今回の出張報告も帰りの飛行機で書いたのでしょうね。

ちょっと面白いと思ったのが、以下の内容です。
ワイシャツの一番上のボタンを外してはならない
・個人イメージが企業イメージを左右する ⇒ かなり厳格なドレスコードを設けている
基本的にランニングは必ず着用。女性がブラウスの下にブラジャーを着けないのと変わらない。女性の場合もタイトすぎる服やミニスカート、派手なアクセサリーは避ける。
血も涙もないきつい上司がいたとしても、これは”ハード・トレーニング”なのだと受け止めよう
・上司への対応の鉄則 ⇒ こちらの望みどおりにしてくれる上司は、どこにもいない。

次も興味深い内容です。現在の日本の大企業で、そこまで社員に言う企業ははないと思います。
●社長のように忠誠を尽くして仕事をせよ
・社長のように仕事をするということは、「最高の仕事力」を身につけること。
・社長の気持ちになって仕事をすると仕事への態度そのものが明確に変わってくる。
サムスンですら、社員を判断するときもっとも高く買っているのが「忠誠心」なのだ
● 「いつでも辞表をだせばいい」と考える人を、会社が幹部に昇進させるわけがない
・仕事に対して責任感があるからそこ「率先垂範」を示すことができ、会社に対する責任感も証明してくれる。

ある知財関連の講習会で日本のTop企業の方が韓国企業の強さは、「徴兵制があるから」だと言っていましたが、一理あるかも知れません。Topが方針を立てて、Topが右と言えば文句を言わずに右に行くような風土は軍隊での訓練が一番だと思います。
いずれにしてもサムスンには、昭和の時代に日本企業が持っていたダイナミズムを感じるのは確かです。

大前研一氏は、日本企業は、欧米企業からは学ぶ姿勢はあるが、感情的な面から中国・韓国などのアジアの企業からは学ぼうとしないと書いています。現在、これだけサムスンに差を付けられた日本のメーカーには、学ぶべきところは学ぶという姿勢で奮起を期待したいところです。

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このブログの目次です。
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Simple

こっちゃん さん

Nice! ありがとうございます。
「おもしろくても理科」面白そうですね。
by Simple (2012-05-12 20:54) 

Simple

marumaru さん

Nice! ありがとうございます。
辻口パティシエのスイーツ、食べてみたいです!
by Simple (2012-05-12 21:01) 

Simple

mo_co さん

Nice! ありがとうございます。
ピタゴラスイッチのダウンロード、パケットが気になりますね。
by Simple (2012-05-12 21:07) 

こっちゃん

こんにちは。
いつも読ませていただいて思うのですが、私と違ってためになる本が多いですね。
少しは見習わなくては。
またお邪魔します。
by こっちゃん (2012-05-13 15:41) 

Simple

こっちゃん さん

お褒め頂きありがとうございます。
私は本を読むのが好きで、いろいろと読んでいますが結構ハズレも多いですね。これからもみなさんが興味を持ちそうな本を紹介したいと思います。
by Simple (2012-05-13 18:18) 

Simple

TBM さん

Nice! ありがとうございます。
清武選手もブンデスリーガですか!
頑張って欲しいですね。
by Simple (2012-05-17 23:21) 

Simple

mino さん

Nice! ありがとうございます。
日本はなぜソフト作りに弱いのか、興味深いですね。
日本もゲームやアニメの分野は強いので、分野によるような気がします。
by Simple (2012-05-19 19:37) 

Simple

tsworking さん

Nice! ありがとうございます。
本当に車は幸せの翼であり、凶器にもなりえますね。
私も運転には気をつけます。
by Simple (2012-05-25 22:08) 

安斎功栄

所詮パクり企業ですよ。
by 安斎功栄 (2013-08-30 17:17) 

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